23年の日本ダービーを制したタスティエーラ(撮影:下野雄規) 今年の日本ダービーの注目点の一つは、皐月賞馬のミュージアムマイル(牡3、栗東・高柳大輔厩舎)がD.レーン騎手との新コンビで挑むことだ。常識的にはプラス材料とはいえないが、レーン騎手は2年前に同じくテン乗りのタスティエーラで勝利した実績あり。そこで日本ダービー史に新たな1ページが刻まれたこの一戦を振り返りたい。
この年の日本ダービーは皐月賞を無敗で制したソールオリエンスの1強ムードだった。単勝オッズは1.8倍。2番人気は4.5倍で青葉賞覇者のスキルヴィング。以下、皐月賞3着のファントムシーフ、皐月賞2着のタスティエーラまでが10倍以内の支持を集めていた。
レースはパクスオトマニカの大逃げで幕を開けた。離れた2番手以下は超スロー。そんな中、絶好の4〜5番手を確保したのがタスティエーラだ。皐月賞で手綱をとった松山弘平騎手に替わって、レーン騎手は大一番でのテン乗りだったが、息ぴったりの走りを見せる。これをマークするようにソールオリエンス。ファントムシーフは中団で脚をためた。
迎えた直線、タスティエーラが早々と追い出され、残り200mで先頭に立つ。内で食い下がるのはホウオウビスケッツ。さらには最内からベラジオオペラ、外からソールオリエンスとハーツコンチェルトが追い上げてくる。最後は4着までがタイム差なしの大接戦となったが、タスティエーラがソールオリエンスの追い上げをクビ差凌いでゴール。ペースを読んだレーン騎手の好騎乗で、タスティエーラが世代の頂点に立ったのだった。
テン乗りでの日本ダービー制覇は54年のゴールデンウエーブの岩下密政元騎手以来、実に69年ぶり4人目。外国人騎手ではもちろん史上初の偉業だった。