日本企業には3年間勤めていたアメリカ生まれのジューン・ラブジョイさん(30歳)は「日本でずっと活動し続けたい」と宣言する、大の日本好きセクシー女優です。
日本語の勉強のために来日し、大学卒業後に就職しましたが、そこはなんとブラック企業。うつ病になるほどブラック企業で苦しんだジューンさんが、なぜ異国の地でセクシー女優としてデビューしたのか、じっくり聞いてみました。
◆カリフォルニアの蕎麦屋でアルバイトをしながら日本語を勉強
――ジューンさんが来日したきっかけは?
ジューン・ラブジョイ(以下、ジューン):アメリカの大学に通っていたときに、日本語のスピーチコンテストで優勝したんです。その賞品として日本の大学に通えることになったので、日本に来ました。
――もともと日本の文化には興味があったんですか?
ジューン:はい。ポケモンや日本のアニメが大好きだったんですけど、そのときはまだ子どもだから、それが日本のものだと知らなくて。ドイツと日本のハーフの友達ができて、その子がきっかけで「ポケモンは日本のもの」と知ったんです。
そこから日本に興味が出て、大学生のときはカリフォルニアの蕎麦屋でアルバイトして、日本語を勉強し始めました。
――蕎麦屋ですか。店長は日本人?
ジューン:ボスは日本人で、英語がぜんぜんできない。アルバイトの女の子も日本人ばっかりで、みんな英語が話せないんです(笑)。だからすごく勉強になりました。大学じゃ教わらないような日本語も教えてもらえました、「賄い(まかない)」とか。
――大学の授業じゃ、「賄い」なんて言葉は出てきませんよね(笑)。大学は何年通ったんですか?
ジューン:アメリカで2年、日本で2年ですね。
◆お墓に入るまで日本にいるつもり
――日本で大学を卒業して、そのまま就職したそうですが、卒業時にアメリカに帰る選択肢はなかったんですか?
ジューン:一切ありませんでした。せっかく勉強したんだから、アメリカに帰るのもったいないなって。もともと日本に住むのが夢でしたし、もうお墓に入るまで日本にいるつもりです(笑)。
――でも、就職先がブラック企業だった、と。
ジューン:そうなんです。でも当時は私もあまりセクハラやパワハラについてよくわかっていなくて。
「会社に今まで海外の人がいなかったから、慣れてないのかな」「言葉の壁のせいかな」っていろんな原因を考えていたんですけど、単純にブラックでした(笑)。
◆朝7時から終電まで働いたことも
――どういった点でブラックでした?労働時間が長いとか?
ジューン:その会社は、子どもの頃からずっと愛していた作品を扱っている会社で、入社できたときには夜も眠れないほどうれしかったんです。
だからそこで働けると思ったら、労働時間が長いのは大丈夫でした。朝7時、8時から終電前までの勤務がずっと続く、なんてこともあったけど。
ツラかったのは、後輩の女の子がセクハラで困ったときに、私に相談してくれるんです。
だから「先輩に任せなさい!」って、上司に報告してセクハラについて把握してもらったのに、なにも変わらない状況が続いて。それで結局後輩が辞めてしまう、なんてことが続いたこと。それでけっこう鬱状態になっちゃいました。
◆セクハラよりもつらかったこと
――ジューンさん自体は、セクハラされませんでしたか?
ジューン:私はセクハラは大丈夫でした。自分で「何してるの、今、仕事中」とかその場で言っちゃうタイプなので。
セクハラより、会社で外国人ひとりで頑張っていて、企画がうまく進まないときに「ジューンさん、日本語があまりうまくないから」みたいに言われることが多くて。私が関係ない場合でも、そう言われることがあったのが辛かったです。
――仕事がうまくいかない責任を、ジューンさんに押し付けていたんですね。辞めて転職しようと思いませんでした?
ジューン:思いましたよ。でも同僚に話してみたら「ジューンちゃん、日本の会社って、どこもこんな感じかも……」って言われて。もう「Oh,No!」でした(笑)。
それで、もともと若い頃から興味を持っていたセクシー女優になろう、と考えたんです。
◆セクシー女優になればいろんな仕事に挑戦できる
――それで転職ではなく、セクシー女優としてデビューした、というのがちょっとスゴイ展開ですね。なぜセクシー女優を選んだんですか?
ジューン:いろいろなインタビューなどを読んで、日本のセクシー女優は性病の心配をしなくて良い点、そして将来的にはテレビに出演したり、音楽活動をしたりと、さまざまなお仕事にチャレンジできそうな点から選びました。
アメリカでは、一度セクシー女優になったらテレビ出演は難しいです。もちろん日本でも、企業のブランディングとか、スポンサーの問題とか、なんでもできるわけじゃないのはわかっていますけど。
――でもセクシー女優のお仕事的に、いろいろな人の前で脱がなきゃいけませんが、その点で不安はなかったですか?
ジューン:そこは、特に気になりませんでした(笑)。
心配だったのは、出演したらそのあと、今までのような仕事ができなくなること。会社員になるのはもちろん、アルバイトもハードルが上がるだろうし、そこは「本当にいいの?」と思いました。
◆セクシー女優になったおかげで、会社を辞められた
――会社を辞めてから、セクシー女優として活動し始めたんですか?
ジューン:何回も辞めようとしていたんですけど、上司に引き留められ続けて辞められない状態で。
だから会社で働きながら面接回りとかして、デビューが決まって初めての撮影が終わって、次の日に「辞めます」って辞めました。キレイに辞められたわけじゃないですね。
――じゃあ、セクシー女優としての活動が始まってから、会社を辞めたんですね。
ジューン:そうです。セクシー女優になったおかげで、会社を辞められました(笑)。
◆アメリカの母親との関係性が変化
――日本でセクシー女優として活動することは、アメリカの家族には報告したんですか?
ジューン:お父さんとはもう、子どもの頃から連絡を取っていないんです。お母さんには、自分で伝えましたね。「これからこういうお仕事をするけど、あんまりビックリしないで」って。そうしたら「ジューンが自分自身で選んだなら、何も言わないよ。ただ気を付けてね」と言われました。
それまでお母さんとの関係も良かったわけじゃないけど、それがきっかけでアメリカに帰ったときにはお母さんが経営してるカフェの手伝いとかするようになりましたね。
でもお母さん、お客さんが来ると「私の娘は、有名なジャパニーズポルノスター!」って(笑)。わざわざお客さんにそんなこと言う必要ありますか(笑)。
――アメリカだと、セクシー女優デビューもあまり親に隠さないんですか?
ジューン:そんなことはないですよ。私の場合は、あとで「なんで隠してたの」みたいな話はしたくないから、最初に話しただけで。
でも隠して活動するのは、自分の心のためにもあまりオススメしません。もちろん、いろんな事情があるから、話せない子も責められないけど。
◆「前に進む」ことがセクシー女優デビューだっただけ
――ジューンさんの場合は、セクシー女優デビューはブラック企業も辞められて、お母さんとの関係も良くなって、と良いことが多かったわけですね。
ジューン:でも、全然オススメはしない。私のインタビューを読んだら「良いことばかり」みたいに見えて、女の子から「私もデビューしたいです」ってDMが届いたりするんです。
でも、そこじゃないんだよ、イヤなことがあったら腐るだけじゃなくて、前に進むのが大切だよ、と。それが私の場合は、セクシー女優デビューだったってだけ。
――セクシー女優になったから、ハッピーになったわけじゃない、と。
ジューン:そう、全然違います。ブラック企業を辞めて、自分が独立できるようにする、と決めたのがポイント。
だからこの記事を読んだ人も「ブラック企業を辞めて、私もセクシー女優になる」じゃなくて、ほかのことで生きる道を探した方がいいです。セクシー女優は今、大変。デビューするのは難しくないけど、うまくいくかは別問題ですからね。
<取材・文/蒼樹リュウスケ 写真/山川修一>
【蒼樹リュウスケ】
単純に「本が好きだから」との理由で出版社に入社。雑誌制作をメインに仕事を続け、なんとなくフリーライターとして独立。「なんか面白ければ、それで良し」をモットーに、興味を持ったことを取材して記事にしながら人生を楽しむタイプのおじさんライター