兵庫県新温泉町の約250万年前の地層から見つかったタテハチョウ科オニミスジ属の新種チョウ化石(上が背中側、下が腹側)(相場博明・慶応義塾名誉教諭提供) 兵庫県新温泉町の約250万年前の地層から1988年に発見され、長らく町内の「おもしろ昆虫化石館」に収蔵されていたチョウの化石が、タテハチョウ科オニミスジ属の新種に分類された。慶応義塾の元幼稚舎理科教諭(現名誉教諭)の相場博明さんらが23日までに、日本古生物学会の英文誌に発表した。
化石は頭部などが欠けているが、胸や腹、羽がよく保存されている。完全な形であれば両側の羽を広げた横幅が84ミリと推定され、相場さんは「今までに化石として見つかったチョウの中では(本来の大きさの比較で)世界最大だ」と話している。オニミスジ属は現代の日本には生息していないが、東南アジアの熱帯、亜熱帯に分布するという。
新温泉町は日本海側にあり、地元の兵庫県立浜坂高校教諭だった故・神谷喜芳さんが、山あいに露出していた280万〜220万年前の地層からタテハチョウ科とみられる化石を発見した。昨年から、相場さんと慶応義塾幼稚舎教諭の高橋唯さんがチョウの専門家の斎藤光太郎さんとともに詳しく調べ、羽を支える翅脈(しみゃく)などの特徴から新種と結論付けた。学名は「タコラ・カミタニイ」、和名は「カミタニオニミスジ」と名付けられた。
相場さんによると、体が軽く、柔らかいチョウ類は化石として残りにくく、過去に種が分類された化石は世界で43種しかない。日本からの新種化石の報告は、群馬県の約350万年前の地層から見つかり、相場さんらが2023年に発表したタテハチョウ科ミスジチョウ属の新種に続いて2例目だという。

兵庫県新温泉町で約250万年前の化石が見つかった新種チョウ(タテハチョウ科オニミスジ属)の復元想像図(左が全体、中央が前の羽、右が後ろの羽)(相場博明・慶応義塾名誉教諭提供)