限定公開( 9 )
2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博。開幕から37日目にあたる5月19日には、関係者を含む来場総数が400万人を超えた。
開催に合わせて、万博公式キャラクターの「ミャクミャク」や公式ロゴがあしらわれた公式ライセンス商品が多数発売され、意外なヒット商品も登場している。
その一つが、ミズノが販売するスニーカー「THE MIZUNO ENERZY (ザ ミズノエナジー) OSAKA EXPO2025」(以下、ミャクミャクスニーカー)(3万800円)だ。
アッパーが青、ソールが赤のミャクミャクカラーにモコモコしたソール、さらに目玉を付けてミャクミャクの顔周りを再現。一目で“ミャクミャクらしさ”が伝わり、かなり攻めたデザインだ。
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賛否両論があったものの、2025年2月に一般販売すると計画の2倍以上で推移し、4月初旬に在庫切れに。再販を望む声を受けて、ミズノのECサイトで予約を受け付けたところ、再び在庫切れになった(5月22日時点)。
ド派手なミャクミャクスニーカーの開発の狙いと反響をミズノ ライフ&ヘルスマーケティング部 課長の杉浦里佳氏に聞いた。
●インパクト重視の高機能シューズ
万博のブロンズパートナー(協賛企業や団体に与えられる称号)であるミズノは、シューズのほかにアパレルやゴルフアイテムなど、多数の万博公式ライセンス商品を販売している。全体的に、シンプルというよりミャクミャクを前面に押し出したデザインが目立つ。
中でもスニーカーにおけるミャクミャクの存在感はバツグンだ。万人受けする無難なデザインではなく、万博を思いきり楽しみたいというコアなファンに向けて開発したという。
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ミズノ史上最高の高反発ソール素材「ミズノエナジー」を使った凹凸感のあるソールが特徴で、ミャクミャクを忠実に再現したデザインだ。
ミャクミャクスニーカーのモデルとなったのは、ミズノエナジー搭載のコンセプトモデルとして、2020年に限定発売した「THE MIZUNO ENERZY(ザ・ミズノエナジー)(ランニング)」(2万7500円、完売)だ。
「ミズノエナジーは、『反発性』に関する知見を結集した新素材として2020年に誕生しました。当社最高の高反発素材であることを視覚的に伝える目的で、あえてインパクトのあるデザインを採用しました。時を経て万博商品を企画するにあたり、同商品がミャクミャクとマッチしそうだと社内から声があがったんです」
「これをミャクミャクカラーにして目玉を付けたらおもしろいよね」というアイデアが採用され、ド派手なミャクミャクスニーカーが完成したという。
「ミズノエナジーには、反発性ややわらかさが異なる3種類(ベーシック、軽量、高反発)があり、同製品には最上級のミズノエナジーコア(高反発)を使用しています。ランニング用とはうたっていないものの、同等の機能を備えています」
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●SNSで拡散され、予想以上の売れ行きに
ミャクミャクスニーカーは、万博開催の1年前となる2024年4月から、ミズノの公式ECサイトと万博オフィシャルストアで予約販売を開始。5月までの1カ月間に予約を受け付け、12月に商品を受け取れるスケジュールで販売したところ、計画の2倍以上の予約があったという。
「かなり攻めたデザインでしたし、まだ万博もそれほど盛り上っていない時期だったので少々不安がありましたが、予想を上回る勢いでした。発表したタイミングでSNS上で大きな話題になり、購買につながったのだと思います」
SNS上では「かわいい」「履きやすい」といったポジティブな声のほか、「気持ち悪い」「かわいくない」という声もあり、賛否両論だ。履き心地の満足度は高いようで、「足が浮いている感じ」「2日間歩き回っても全然平気」といった称賛の声が見られた。
さらに、2025年2月に一般販売すると、再び想定以上の反響があった。計画の約1.8倍で推移し、万博が開幕した4月中旬にちょうど売り切れた。
「万博熱が高まり始めた開幕直前のタイミングで再び同商品が話題にのぼり、メディアでも多く取り上げられました。購入者は20代から60代以上まで幅広く、万博会場以外でも時々履いている方を見かけますね」
早々に売り切れたため、再販の要望に応えて増産を決定。ミズノのECサイトで予約を受け付け、7月下旬からの順次発送としている。この予約も反響が良く、計画の約1.3倍で推移したため、5月下旬時点で在庫切れとなった。
2025年1月には、アパレル事業を展開するベイクルーズとコラボした「BAYCREW'S オリジナルカラー」のブラック(3万800円)も発売。こちらも売れ行きが好調で、5月下旬時点ですでに在庫切れになっている。
●「ポロシャツ」や「ゴルフグッズ」も人気
SNSやメディアではミャクミャクスニーカーの露出が目立つ一方で、それ以外のミズノの万博商品も好調だ。
「スニーカー以外のグッズも2024年4月から販売していて、万博の話題が盛り上がり始めた3月末ごろからグッと伸びています」
トータルコーディネートに取り入れやすい「システム総柄ポロシャツ」(2種類、8690円)は、いずれも品切れになる人気ぶりだ。
万博のオフィシャルオンラインストアでは、「ミャクミャク 日用品・雑貨」のジャンルで、ストレッチやトレーニングに使える「メディシンボール」(1万450円)がランキング1位を獲得した(5月21日時点)。お土産にもしやすい価格帯のゴルフ関連グッズも売れ行きが良いという。
「ミズノというと、アスリート向けの製品を扱っている印象が強いと思います。実際、スポーツ用品がメインですが、ワーク系やライフスタイル系の非スポーツ商品も伸びています。今回のミャクミャクスニーカーもまさにそうですが、スポーツ向けに開発したテクノロジーを日常向けに変換した高機能の靴なども展開しており、幅広い方に使っていただきたい思いがあります」
ミズノの2025年3月期決算を見ると、売上高2403億円(前期比4.6%増)、営業利益208億円(同20.2%増)となり、いずれも過去最高を記録した。
グローバルではフットボールとインドアスポーツが、国内ではワークビジネスが好調に推移し、適切な価格設定や在庫効率の向上により、売上総利益率(粗利益率)は前期比1.4ポイント増の41.0%となった。国内ではワークカテゴリーが従来計画を上回る成長率で伸びており、露出強化によりさらなる成長を目指している。
ミズノには119年間の事業で培われたブランド力があり、それが自社の競争優位となっている。ミャクミャクスニーカーのヒットを通じて、同社のユニークな一面も消費者に伝わったかもしれない。
(小林香織、フリーランスライター)
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