
アニメ『アンパンマン』の人気キャラ・おむすびまんの声優交代が、“超大御所バトンタッチ”と話題に。
おむすびまん役を約36年間担当した声優・京田尚子(90)が4月、高齢を理由に降板、後任に88歳の野沢雅子が起用されたのだ。レジェンドたちの交代劇にネットは《声優業界 80〜90歳で現役いるのがすごすぎる》と沸き立った─。
世界最高齢の声優は96歳
実際、声優は寿命が長い。“世界最高齢の声優”といわれたのは2020年に亡くなった久米明さん(享年96)で、亡くなる前年まで仕事を続けたという。また「ドラえもん」の初代声優を務めた大山のぶ代さんは享年90、のび太役や『ヤッターマン』のドロンジョ役を務めた小原乃梨子さんは享年88だった。
現役を例に挙げれば、前出の野沢は今年2月に毎日芸術賞特別賞を受賞し、贈呈式で「182歳まで(声優を)やる」と意欲を示すほど。
サザエさんの声を担当する加藤みどり(85)は50年以上のキャリアを持っている。また、ロバート・デ・ニーロやシルベスター・スタローンらハリウッドスターの吹き替えを担当してきた羽佐間道夫(91)は、久米さんの世界記録を塗り替えるかもしれないお達者ぶり。
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日本の声優が長寿で若いのはなぜか。『進撃の巨人』モーゼスの母役や情報番組『とくダネ!』のナレーションなどの代表作を持つ現役ベテラン声優・寺瀬今日子さん(66)にその理由を聞いた。
「まず、定年がないので、いくつになっても働ける! 80歳でも子どもの声が出せる人ばかりの世界で、大ベテランと若い新人がオーディションで役を取り合う。年上でもベテランでも忖度なしの実力勝負です。“ここまで売れたからもう安泰”ということがない、他にはない職業だと思います」
声優ならではの仕事
次に“常に人目につく仕事だから”という理由も。
「オーディションもそうですが、まず現場の緊張感、そして褒められ体験がある。役がもらえれば、前向きなエネルギーが出て自己肯定感がアップします。また自分が演じたものをテレビで見て振り返りの体験もできる。女優さんが世に出てどんどん美しくなっていくように、声優も社会と関わっていくことで、若さを保っていられるのかもしれません」(寺瀬さん、以下同)
ほかにも声優ならでは(?)の健康留意点が。
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「役から降ろされるので、風邪は絶対にひけない。コロナ前からマスクは必須でした。あと歯科医には定期的に通っています。入れ歯などになったらチャンスを失いかねないですから。台本を読んで発声したり表現したりで頭も使うので、認知症を発症する方も少ないと思います」
高齢者に多い誤飲、誤嚥の事故なども、口腔を鍛える声優には少なそうだ。
「まずこの仕事が大好きで、ずっと続けたいという人ばかり。それも私たちが若いまま長く仕事を続けられる秘訣なのかもしれませんね」
仕事愛がパワーの源かも。素人がまねできることは?
「声帯は筋肉のひとつなので発声練習を。声優は舞台や落語、シャンソンや長唄などで鍛える人も多いですが、カラオケで十分です。あえて高音や低音を出して音域を広げて、テンポのよさも意識してみて。日常では深い呼吸法や胸を開いた姿勢を保つことを心がけてください」
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取材・文/山部和歌子