
そうした子どもの姿に、親自身がどう接すればよいのか悩んだり、つい感情的になってしまったりすることもあるかもしれません。
では、子どもが前向きに成長し、自分で考えて行動できるようになるために、親はどのような声かけをすればよいのでしょうか。また、親自身の悩みや感情にどう向き合えばよいのでしょうか。
書籍『子ども教育のプロが教える 自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』(庄子寛之 著)から一部を抜粋し、「褒め方」や「叱り方」といった表面的な対応だけでなく、子どもとの関係性を根本から見直し、親子のコミュニケーションをより良くするための「声かけ」のヒントをお伝えします。
子どもに感情的になってしまう親が気を付けておきたいこと
多くの親が抱える問題の一つに、「我が子がすぐ怒って泣いてしまい、言うことを聞かない」があります。
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私は若い頃、強く叱れる人がいい教師だと思っていました。
「4月のうちにどっちが上か、ちゃんと子どもたちに教育するの」
「なめられたらダメ」
「しつけをしっかりしていないクラスは、年度後半にうまくいかなくなる」
たくさんの先輩の助言をもとに、叱らなくてはいけないとプレッシャーを感じていたことを思い出します。
若い自分は、「厳しく接する」「あえて笑顔にならない」など、今とは全く逆の考え方でした。そして、「あれはすべきだ」「これくらいできるのは当たり前」と、子どもたちを追い込んでいました。今ではとても反省しています。
なってほしいのは、親や大人の言うことを素直に聞く子どもではなく、自分で考え、予測不能な世の中をワクワクしながら歩める子どもです。そのためには「べき」を捨てる必要があります。
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・小学生は、こうしなければダメ
勝手な思い込みが、自分たちをどんどん追い込み、行きにくい世の中をつくっています。親であるあなたは、親である前にひとりの人間です。もっと自由でいいのです。
子どもの問題行動を見ても、自分のせいにしないでください。ダメな親だと思っていると、子どもにも影響が出ます。
「お父さんやお母さんがいつも悩んでいるのは、自分のせいだ」と悩んでいい子に育つならいいのですが、そうはなりません。自分自身を責めて、問題行動を起こす子はたくさんいるのです。
子どもをコントロールしようとしない
まずは、親がゆとりをもちましょう。子どものことばかり考えず、自分の人生を楽しむために何をすべきか考えましょう。おいしいものを食べるでも、早く寝るでも、何か買うでも構いません。自分の人生を豊かにする大事な要素の一つに子育てがあるくらいの考えに変えるのです。最も簡単な方法は、声かけを変えることです。命令形の口調をなくすだけで、心のあり方が変わります。
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「お母さんは○○したいんだけれど、一緒にやる?」
とにかく子どもに強制せず、問いかけます。そして、提案を加えることです。あくまで主語は親である自分です。子どもが「やらない」と言ったときも受け入れる準備をしておきます。
イエスもOK、ノーもOK。子どもをコントロールしようとしない。子どもが伸びる秘訣は、このマインドにあるのです。
この考え方を踏まえ、子どもが自分で考え、判断できるようになるための具体的な声かけの方法を見ていきましょう。
「どう思う?」と問い返す
ただ子どもを見守るだけでは、自分で考え判断する子にはなりません。行動がうまくいってもいかなくても、親はその経験をいい経験に変える子になってほしいと願うものです。大切なのは、「○○しなさい」と極力言わないことです。「どう思う?」と疑問形で聞き、答えはできる限り言いません。スムーズに問い返しをすることで、自分で判断できるよう、背中を押します。
あるとき、夜更かしをやめない子に手を焼く親御さんがいました。
「うちの子は、毎晩夜更かしをしてしまい、朝起きるのが辛そうです。早く寝るように言っても、『あと少し』と言ってテレビやゲームを続けてしまいます。どうすれば、早く寝る習慣をつけられるのでしょうか?」
多くの親は、「○時に寝て、○時に起きなさい」「テレビとゲームは禁止!」と命令することで改善を促します。
ゲームやテレビは中毒性があるので、時と場合によっては、命令口調が必要なときもあります。ただ、命令すると、子どもが自分で考える機会を奪ってしまいます。ですから、命令を極力少なくするように意識することがとても大事です。
「早く寝なさい!」ではなく、「そもそも、なんで早く寝なきゃいけなかったんだっけ?」と問いかけます。
子どもは考えながら、「次の日の学校に行きたくなくなるから」「健康な生活ができなくなるから」など、真っ当な答えを出してきてくれます。
もし出てこなかったり、反発したりするようなら、「早く寝られるようにするためには、どうしたらいいと思う?」と問います。
「ゲームは20時までにやめる」「宿題は帰ってきたらすぐやるようにする」「起きる時間を決める」これらを、子どもが言うのを待ちます。
よくない声かけは、質問しているようで言わせるように仕向けるもの。子どもから学ぼうと聞く姿勢が大切です。言葉にすると同じでも、親の心の持ち方だけで大きな違いが生まれてくるのです。
(本記事は、『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』より一部抜粋、再編集したものです)
庄子寛之 プロフィール
ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 主席研究員。元公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学について学び、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。「先生の先生」として、ベネッセ教研の最新データを使いながら教育委員会や学校向けに研修を行ったり、保護者や一般向けに子育て講演を行ったりしている。(文:庄子 寛之)