22日、衆院本会議場で林芳正官房長官(右)と話す赤沢亮正経済再生担当相 トランプ米政権の関税措置を巡る日米交渉で、日本側が米国の造船業復活を支援するファンドを設置する計画を提案していることが28日、分かった。米政権は経済安全保障の観点から造船能力の増強を目指している。日本側には、この分野での協力を交渉カードとすることで米国側の譲歩を引き出す狙いがある。
参院議院運営委員会は28日の理事会で、交渉役の赤沢亮正経済再生担当相が29日から4日間の日程で訪米することを了承した。現地時間30日に4回目の閣僚級交渉を開く方向で調整している。3回目を都合で欠席したベセント米財務長官も参加し、日米が合意を探る見通しだ。
赤沢氏の6月3日から3日間のフランス訪問も了承された。経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会に出席する。赤沢氏は首相官邸で記者団に「米国との関税協議が機会として持てるのであれば、あらゆるものに優先させる」と述べ、訪仏中の交渉に意欲を示した。
造船分野では中国が世界で圧倒的なシェアを握っている。造船業が衰退した米国は安全保障に悪影響が及ぶ事態を懸念。造船業の再生を掲げ、日本などの同盟国に協力を呼び掛けている。
石破茂首相は25日、京都府舞鶴市で記者団に「米国が関心を持っているのは米軍艦を日本で修理できないかということだ」と指摘。「砕氷船は日本の技術に優位性がある。北極航路も含め砕氷船が一つのポイントになってくる」とも語り、協力に意欲を示していた。
交渉では米国内の修繕ドック整備への支援なども俎上(そじょう)に載る見通し。日本は6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせた日米首脳会談での合意も視野に交渉を加速させる考えだ。自動車の追加関税の扱いなどでは依然溝があり、造船分野の協力をてこに歩み寄れるかが焦点となる。