
本当に不良品ならクレームも仕方ないが、クレーマーの中には勘違いで怒鳴り込んでくる人もいるから困りものだ。元携帯ショップの店長だった竹田さん(仮名:40代男性)は20年ほど前に遭遇したクレーマー客が今でも忘れられないという。
そのクレーマー客は週末のキャンペーンイベント中に襲来した。
「店外から突然、ものすごい怒鳴り声が聞こえてきて、店内にいた私たちは『何事?』と顔を見合わせました。その直後でしたね、60代くらいで柄付きの長袖シャツを着た男性が店に怒鳴り込んできたのは」
その男性は大声で「ここの店で買ったばかりの携帯電話が壊れてる!」とわめき散らしたという。その後、クレームをどうやって収束させたのか。編集部では、そのときの対応を詳しく聞いた。(文:篠原みつき)
「ここの店は不良品を売っているんだ、買うんじゃないぞ!」
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店は駅近くの路面店だった。イベントは盛況で、店内に4席あるカウンターが全て埋まり、店外ではキャンペーンリーダーの男性とキャンペーンガールの2人がチラシ配りや簡単なゲームを行い、道行く人の注目を集めていた。事件が起きたのは、人通りが特に多くなる昼過ぎのことだ。
「その男性はキャンペーンで集まった店外のお客さんたちに向かって『ここの店は不良品を売っているんだ、買うんじゃないぞ!』と大声で叫びました。キャンペーンスタッフは怖くて店内に逃げ込んできましたし、店外にいたお客様は蜘蛛の子を散らすように誰もいなくなりました。店内にいたお客様も何が起きたのか分からず、ただただ動揺されていましたね」
緊迫した状況に、店長である竹田さんがすぐに対応にあたった。相手はかなり興奮しており、一方的に言い分を怒鳴り続けていたが、なんとか話を聞ける状態には持ち込めた。
「壊れたと主張する内容を詳しく聞くと、3か月ほど使用していて『写真が消えた』と言います。しかし携帯を確認してみると、写真を複数撮影されていたためスクロールすれば下に消えたという写真が出てきました」
つまり壊れたという苦情は、ただの勘違いだった。
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「まるで何もなかったかのように『じゃっ!』と帰ろうとした」
その事実を男性に伝えると、それまでの剣幕が嘘のようにトーンダウンしたという。
「男性は驚いた表情で『あっ!そう!分かった』と苦笑いをしながら言い、まるで何もなかったかのように『じゃっ!』と帰ろうとしたんです」
しかし、竹田さんはこの男性を簡単には帰さなかった。
「私としては、お店のイメージダウンやイベントを停止せざるを得ない理由を作ったこの方には、それなりの対応をして頂きました。スタッフとその場にいたお客様への謝罪です」
「ただ、キャンペーンガールの1人の女の子は泣いてしまっていて、その男性からの謝罪を拒否していましたね。最終的に、その男性は出入り禁止にしました」
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この騒動による具体的な売上への影響は数字では不明だが、「店外の興味を持ってくださっていたお客様の分の売上と、男性の悪口によって店舗の評価がいくらか落ちたとは思います」と竹田さんは推測する。幸いにも、集客については解決後30分ほどで元の状態に戻ったという。
イベントは売上に大きく影響「あの時間は本当にもったいなかった」
しかし、竹田さんには当時、割り切れない思いも残った。
「イベントは月に1回実施する、店舗にとって売上が伸びる大きなチャンスなんです。この日の成功の有無で報奨金や全20数店舗中の売上順位にも影響するので、あの時間は本当にもったいなかった。結果として、その月は通常通りの5位という順位でしたが……」
「正直、警察に通報したいくらいの気持ちでしたが、上司からは『土・日曜日は本社が休みで判断できないので大きな問題にしたくない』と言われ、結局何もできずモヤモヤしましたね」
突然の乱入クレーマーが迷惑だったことに変わりはないが、店長の毅然とした対応は、店舗スタッフたちに安心感を与えたことだろう。
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