
青山剛昌氏の漫画が原作の人気アニメ『名探偵コナン』の劇場版最新作『名探偵コナン 隻眼の残像』の興行収入が128億円を突破したことが、5月26日に発表された。2023年の『黒鉄の魚影』、2024年の『100万ドルの五稜星』に続き、3作品連続で興行収入100億円突破の快挙を達成。どこまで数字を伸ばせるか、注目を集めている。
毛利小五郎にスポット
今作の舞台は長野県の雪山。“眠りの小五郎”こと毛利小五郎と長野県警の大和敢助という一見接点のなさそうな二人を繋ぐ“眠っていた記憶”が描かれている。
「劇場版のコナンといえば、毎回どのキャラクターがフィーチャーされるのかが話題になってきました。今回の舞台が『長野県警』と発表された際は、コアなファンを相手にしすぎているのではと不安でしたが、プラスアルファで主要キャラの毛利小五郎にもスポットを当てることで、ライト層も映画館に来場しやすくなった。登場キャラが多い『コナン』ですが、この先、誰がフィーチャーされても100億円は突破しそうです」(アニメ誌編集者)
一方、絶好調の興行成績とは裏腹に、作品の“脚本”については一部から厳しい意見も。今回、脚本を担当したのは櫻井武晴氏。『劇場版コナン』では、過去に『絶海の探偵』(2013年)や『緋色の弾丸』(2021年)など6作品を手掛けている。
「櫻井氏といえば、ドラマ界ではテレビ朝日系列の人気刑事ドラマ『相棒』や『科捜研の女』など、いわゆる“刑事もの”を得意とする脚本家としても知られており、重厚なストーリーラインを描いてきた実績のある人物。しかし、その力量が今回の『コナン』に適合したかというと、いささか疑問です。
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今作の裏テーマは“司法取引”で、公安や検察も登場するなど警察色が強い。冒頭に出てくる小五郎のかつての相棒は、優秀な刑事でありながら左遷部署に配属されており、この設定はほぼ水谷豊の“特命係”でしたね。そんな硬派なストーリーに、コナンファンを喜ばせるキャラ同士の恋愛といった“萌キュン要素”が加わっていることから、チグハグなイメージを持った人も多かったようです」(サブカルライターの蒼影コウ氏)
SNS上でも《なんか相棒みがある》《コナンで相棒が見たいわけじゃない》といった声が散見された。
さらに、肝心のミステリー部分にもガッカリ声が集まっているという。
「象徴的だったのが、小五郎の扱いです。いつもはコナンに麻酔銃を撃たれて眠っている間に事件が解決するという腹話術的な役回りですが、今作のポスターには《今回わたくし眠りません!》とのコピーが踊っており、“ついに推理をする小五郎が観られるのか”と期待が高まっていました。実際、原作や劇場版でも小五郎の身近な人物が容疑者となった際には、自身の経験を武器に工藤新一(コナン)を上回る鋭い推理を見せることもあります。
しかし、今回の見せ場は“スナイパー”としてであって、『コナン』最大の見せ場である犯人の動機やトリックが明かされる場面が一瞬で済まされていた。その意味でも、今回の脚本は『コナン』というより『相棒』のイメージに近く、ファンがコナン映画に期待する“探偵ものとしてのカタルシス”が薄かったように思います」(前出・蒼影氏)
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ともあれ、今や“春の季語”ともなっている『劇場版コナン』。まだしばらくは、日本映画界の大黒柱として君臨しそうだ。