日本の"自動運転"が前進? トヨタ×米ウェイモ「電撃提携」の真意

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2025年05月29日 07:10  週プレNEWS

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4月10日、東京都内でメディア向けに公開された、走行するウェイモの自動運転車両。ちなみにこのクルマのベース車両は輸入車


寝耳に水! 世界のトヨタと米の自動運転企業ウェイモが提携を発表したのだ。うおー、マジか! このミラクルタッグ結成の背景にはいったい何があるのか? 今後の展開は? そして、ニッポンの自動運転の現在地は?

【写真】トヨタと中国企業が共同開発した「4Xロボタクシー」

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■米の自動運転企業ウェイモとは?

4月30日、トヨタと米ウェイモが自動運転分野での提携を発表して話題を呼んだ。

トヨタは言うまでもなく、5年連続世界新車販売トップを独走する自動車業界の巨人。一方、ウェイモとはどんな企業なのか。自動車専門誌の元幹部が解説する。

「ウェイモは米アルファベット傘下の自動運転企業。もともとウェイモは、同じくアルファベット傘下のIT大手・グーグルの自動運転開発部門でしたが、2016年に独立しました」

では、具体的にどんなビジネスを展開しているのか。

「すでにウェイモは米国のカリフォルニア州などで自動運転タクシーのサービスを商用展開しています。ユーザーがスマホのアプリを使って呼べば、無人のロボタクシーがやって来る。

ちなみにウェイモは日本でも今年4月から配車アプリ大手の『GO』やタクシー大手の日本交通とタッグを組み、自動運転タクシー導入のための実証走行を開始しています。主な狙いは東京都内の道路環境のデータ収集です」

東京都内で道路環境のデータを収集しているウェイモのクルマ(英ジャガー・ランドローバーのSUV)は、29台のカメラ、6基のレーダー、レーザー光を使い各種測定を行なうLiDAR(ライダー)などを搭載する。


トヨタとウェイモは提携で何を生み出すのか。自動車誌の元幹部はこう続ける。

「まずウェイモの配車サービス向けの自動運転車両を共同開発します。将来的には、トヨタの市販車にウェイモの技術を搭載することも視野にあるはず」

自動車ジャーナリストの桃田健史氏は2社の提携についてこんな感想を口にした。

「『まさか!』と思うと同時に、『なるほど』な部分もあります。つまり、今回の提携はデファクト(スタンダード)の始まりなのです」

デファクトスタンダードとは、公的な認証は得ていないものの、その業界において事実上の標準となった製品や規格を指す言葉である。

「ウェイモは世界各地の自動車メーカーと連携してきています。この動きは自動運転技術のデファクトを狙ったものだという声も多いのです」

確かにウェイモは、中国の浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)、韓国ヒョンデ、仏ルノーと提携していた過去を持つ。

「ウェイモはグーグルからスピンアウト(分離独立)した企業ですが、大きな視点で見ればグーグルの親会社であるアルファベットの一員。その上で、車載OS(オペレーティングシステム)であるアンドロイドOSを自動運転領域と連携し、活用の幅を広げたいのでしょう。つまり、"次世代のクルマの頭脳"を牛耳りたいのでは」

一方、トヨタの狙いは何か。

「これまでトヨタは、いわゆるロボタクシーの領域に、なかなか踏み出せていませんでした。今回の提携はそれに対するカンフル剤の意味もあるでしょうね。

また、東京オリンピックでの公共交通向け自動運転車・eパレットの導入や、未来型実験都市ウーブン・シティでのモビリティ実証試験など、これまで描いてきたロードマップにウェイモとの提携は大きな変化をもたらす......いや、もたらしたいという、トヨタの気持ちがあるのでは」

ちなみにトヨタは今回の提携について、「ウェイモと自動運転技術を世界に普及させ、事故ゼロ社会へ一歩近づくことができる。安全・安心な社会の実現を着実に進めていく」とコメントしている。

■米国と中国が先行する自動運転技術

トヨタとウェイモの提携により、ニッポンの自動運転やロボタクシーはどうなるのか。自動車評論家の国沢光宏氏は一刀両断する。

「まず大前提として、自動運転の分野では現在、米中がはるか先を走っています」

米中は自動運転の分野で世界を大きくリードしているという。その背景には何があるのか。

「米国は事故が起きた場合、システムにどんな問題があるのかを探します。中国は一党独裁なので国が決めればなんでもできる(笑)。一方の日本は事故が起きると責任の所在を明確にしようと動く。要は犯人捜しです」

だから研究開発が行き詰まる。桃田氏もこう言う。

「日本では10年代半ばから9年半にわたり、国のプロジェクトであるSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の中で、産官学の連携で自動運転領域において、世界を即キャッチアップ(同レベルに追いつく)していた。

しかし、直近ではSIPで描いた自動運転の将来像とは違う流れが米中で急速に広がり、日本は再びキャッチアップしなければならない立場に......」


さらに、自動運転普及には資金面の課題も横たわる。

「ウェイモに代表される自動運転企業に対する米国の投資額は日本とは桁違いです。日本としては、トヨタ×ウェイモのように欧米または中国とのパートナーシップを構築すべき時期だと思います」

国沢氏もうなずく。

「私は今年4月に中国・上海市で開催された上海モーターショー2025に足を運びましたが、トヨタは中国の自動運転企業・小馬智行(ポニー・エーアイ)が誇る最新の自動運転ソフトを搭載したbZ4Xを公開。

トヨタ関係者に話を聞くと、このクルマに搭載された自動運転技術は中国国外への持ち出し禁止だそうです。自動車メーカーが世界市場を視野に入れた場合、米中の自動運転企業との提携を推し進めるしかない」

いずれにせよ、トヨタ×ウェイモの世界無双タッグがどんなクルマを出すか注目だ。

取材・文/週プレ自動車班 写真/時事通信社

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