
小泉農水大臣肝いりの「2000円台の備蓄米」についてです。その引き渡しが、29日から一部で始まります。
一方で、気になるのが備蓄米放出後のコメの適正価格。小泉大臣は新米の価格を抑えることはできるのでしょうか。
■奔走 小泉大臣が重視“スピード感” 29日備蓄米引き渡しへ
コメ卸「食協」 武信和也社長
「おいしい順に番号をつけてもらい、皆さんのご協力をお願いします」
28日、広島県のコメ卸売業者のもとに備蓄米が届き、食味鑑定認定者などが参加する試食会がおこなわれました。
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この備蓄米は、江藤前大臣のときに放出されたもので、2023年産のコメですが、その味は…
コメ卸「食協」 武信和也社長
「全体的にはおいしいが、やはり古米かなという感じのコメが感じられる。若干ブレンドして出さないと食味が安定しない」
一方、小泉農水大臣が“2000円台で店頭に並ぶ”という備蓄米は、これより古い2022年産のコメ。
さらに27日、2021年産のコメを新たに中小のスーパーや町のコメ店に売り渡すことを明らかにしましたが、28日、国会では野党の党首らが小泉大臣に対し…
国民民主党 玉木雄一郎代表
「1年経ったら動物のエサになるようなものを安く売りますと言ったって、安く出ますよそりゃ。一般の人の感覚は何かというと、ササニシキとかコシヒカリとかをリーズナブルな値段で買いたいというニーズですよ」
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立憲民主党 野田佳彦代表
「バナナの叩き売りじゃないんで、気合いはわかるんですけど、それが適正価格かどうかということ」
小泉進次郎 農水大臣
「私が(5キロ)2000円と言っているのは、今の(平均価格)4200円を落ち着かせていくために、2000円の備蓄米を放出しなければいけない」
小泉大臣が、最も求めているのが“スピード感”です。
28日午後、国交大臣に物流面での支援を要請。
小泉 農水大臣
「いま随意契約で作っているルートは、今までのが一般道だとすると、これは高速道路を作ったわけです。この高速道路でどんどん流していきたい」
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さらに15分後には、コメの卸売りの業界団体に、精米や商品化など流通面での協力を求めました。
小泉 農水大臣
「今、すでに卸の皆さんなどが持っている第1回から第3回(入札)までの備蓄米、これも(価格が)下がっていくのではないかと、こういったことも聞きまして」
――卸売業者が下げられるというふうに言っていると?
「利益出ていますからね。決算見れば明らかですけど、かなり利益を出されていますから。そして今回、備蓄米ですから、さすがにそんなにマージン(儲け)を乗っけるわけにはいかないんじゃないですか」
早く・安く備蓄米を供給することに全力投球の小泉大臣ですが、28日の国会では、農家への思いも口にしました。
小泉 農水大臣
「(5キロ)2000円ではやっていけないというのが生産者の思いであると思います。本来あるべき農家が行っている努力や苦労が報われる価格がどこなのかというのを、今これだけコメの話題になっている時に、消費者も含めて一緒になってご理解をいただく、私はひとつの契機にしなければいけないと思っている」
■「農家を魅力ある産業に」農家の願い コメの適正価格は?
「適正な価格」とはいくらなのか。
田植えが始まった青森県北部の平内町で、「まっしぐら」などのブランド米を生産している田邊さんはこう話します。
マルサンファーム 田邊真太郎さん(35)
「(コメ販売価格)2500円から3000円くらいが生産者にも消費者にも一番良い価格帯だと思う。消費者の立場からすると安いに越したことはないが、そのくらいの価格帯(2500円〜3000円)で流通していくというのが、今後の持続可能な農業経営につながると思う」
農協を介さず、自社の直売所やネットでコメを販売している田邊さん。
4月から店頭価格を500円値上げし、5キロ3000円としましたが「完売」に。ネット販売もすでに売り切れの状態です。
マルサンファーム 田邊さん
「例年に比べると早い段階での完売という状況が続いている。去年、今年とより引き合いが強くなっている」
新米が出回る今年の秋以降は、5キロ3000円台後半に値上げをすることを考えているといいます。
マルサンファーム 田邊さん
「当初の政府の見立てよりか、大幅に備蓄米を放出しているが、それでも価格が上昇傾向にある」
コメの価格を落ち着かせるためには、国全体の“増産”が欠かせないと感じています。
しかし、農家の担い手不足が進み、耕作放棄地は年々増加。統計が残る2015年の時点で42.3万ヘクタール。現在はさらに増えているとみられます。
マルサンファーム 田邊さん
「黙っていても農地は集まってこない。大規模化という展望があって戦略を立て、その戦略の中で新たに開拓しにいった」
いま、耕作放棄地の再生に奔走する田邊さん。
6年前、自衛隊を辞めて叔父から譲り受けた田んぼは4ヘクタールでしたが、その後、引退した農家の土地などを引き取り、30ヘクタールに広がりました。
マルサンファーム 田邊さん
「機械の故障が引退のきっかけになるっていうケースがほとんど。離農される方から農地を引き継いで大規模化、省力化っていう部分は今後のトレンドになってくるのかな」
2024年は、作業の手間を省くため、水のない畑での作付けにも挑戦しました。
マルサンファーム 田邊さん
「(田んぼ拡大で)生産性が高い農業が実現できる。休みの確保など課題のあった業界なので、そういった部分も含めて魅力ある産業にしていきたい」
そんな中、“障壁”となりそうなのが国の政策。
事実上続いていると指摘される「減反政策」で、作りすぎた際は生産の“抑制”、足りない今は“増産”へと方針が変わっています。
マルサンファーム 田邊さん
「国としても一定数余裕を持った生産体制を作ってほしいなと。余れば米価が下がる、そういう仕組みではなくて、余ったら輸出に回すとか、そういう仕組み作りが求められているんじゃないかなと。農業界の転換期を迎えているんじゃないかと思います」
■備蓄米の放出で今後は「3つの価格帯」に?
藤森祥平キャスター:
生産者の皆さんの一言一言が重いなと感じます。
コメの価格は、備蓄米の放出によって主に3つの価格帯に分かれるのではないかとみられています。
▼今回、新たに随意契約で放出された2000円台の備蓄米、▼これまでに放出されている3000円台の備蓄米、そして、▼今まで一般的に食べてきたものや、今後の新米なども含めた4000円前後のコメです。
NEWS DIGアプリで3つの価格帯のコメ、どれを買いたいかアンケートをとったところ、新たに放出される約2000円の備蓄米と4000円超の銘柄米、大きく2つに分かれています。
小川彩佳キャスター:
先週、農水大臣が江藤氏から小泉氏に変わり、「随意契約」とはどういうものなのかをお伝えしたばかりなのに、それから1週間で“3つの価格帯”をお伝えすることになり、スピード感を改めて感じます。
一方で、いかにこれまでコメの価格高騰への対応がおざなりだったのかということも感じます。
トラウデン直美さん:
先週までかなり長い期間、コメの価格が下がらないというニュースが続いていて、「なんで下がらないんだ」という状況だった中、この1週間でこれだけ大きな展開が速く動いているということに、「今までは何だったの」と少し感じてしまいます。
また、今回、値段が下がれば消費者としては嬉しいですが、やはり適正価格や農家へのサポートという点は、今だけの話ではなく、この先も続いていくことだと思います。
取材した農家さんは、若くて、(田んぼを)広げて、増産できるように協力しようと考えている人でしたが、高齢で(コメ生産を)担っている人たちに、そういったこと(増産)を今からお願いするというのは、大変な部分もあると思います。
日本の農業の環境の中で、どのように私達の根幹となるコメを守っていくのか。コメを守るために農家を守っていくという形を、これをきっかけにしっかり考えていかなくてはなりません。
■『コメの価格』について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『コメの価格』について「みんなの声」を募集しました。
Q.3つの価格帯のコメ あなたが買うのは?
「4000円超の銘柄米」…34.7%
「3000円前後の備蓄米」…12.2%
「約2000円の備蓄米」…36.1%
「今後の放出を待つ」…4.2%
「その他・わからない」…12.9%
※5月28日午後11時08分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは29日午前8時で終了しました。
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」受賞
趣味は乗馬・園芸・旅行