ほかの「お財布ショルダー」とは一線を画す! 薄くて収納力抜群、服のように“着るバッグ”の開発秘話

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2025年05月29日 20:31  All About

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アブラサスの「お財布ショルダー」は、商品名こそありがちなものなのですが、実際の商品はどちらかというと「エクストラポケット」とでも言うべき「着るバッグ」なのです。薄くて収納力抜群。しかも財布の機能もしっかり。この不思議な製品の開発経緯をアブラサス代表の南和繁さんに伺いました。
アブラサス「お財布ショルダー」9600円(税込)。カラーは黒のみ。サイズは高さ22cm×横幅42cm、重さは約110g。洗濯機での洗濯可能

インターネットで「お財布ショルダー」と検索すると、サコッシュ的なものや、大きめの財布にショルダーストラップが付いたような製品がたくさん見つかります。確かにそれらは「お財布」的なものでショルダーストラップが付いていて、「お財布ショルダー」という名称は間違っていないと感じます。

ただ、アブラサスの「お財布ショルダー」は、それらとは明らかに一線を画しながらも、使っていると「お財布ショルダー」としか言いようがない製品だということが分かります。

お財布にショルダーストラップが付いた製品だと思ったら全く違う

「普段オフィス内を移動する際、ノートPCの上にマウスやペットボトルなどを乗せて歩いていたのですが、さすがに不安定でペットボトルが転がり落ちたりしていました。とはいえ、ポケットには入らないので、何か入れるものがないかと思ったのが開発のきっかけです。

外出時も、目薬やペットボトル、モバイルバッテリーといった、必要だけどポケットに入れるにはかさばるものは多く、そのちょっとした荷物のためにバッグを持っていくのは面倒だなと思っていました。

そこで、ポケットの容量を増やす“エクストラポケット”的なものを作ろうと考えたんです」と、アブラサスの代表で、今回の製品を開発した南和繁さん。

つまり、最初から、財布というよりも財布を含めた身の回りの必需品を入れる、ただ、バッグほど大げさにならないものとして開発が始まったというわけです。
財布としては、赤い取っ手が付いたファスナーポケットにコインを、手前の白いパイピングのあるポケットにカードや紙幣を入れる。ただ筆者は、ポケットにカードと名刺を分けて入れて、紙幣は畳まず直接バッグの中に突っ込んでいる

「冬ならジャケットやコートのポケットに入れられるものでも、夏にはパンツのポケットしかないので、全てを身に着けることはできません。また、ボディーバッグだとオフィスの中では身に着けたままというわけにはいきません。

都度着けたり外したりしていてはポケットの代わりにはならないので、この商品は最初からジャケットを脱いでも身に着ける前提で製作しました」という南さんの言葉通り、出来上がった「お財布ショルダー」は、バッグというよりも、昔でいうなら「胴巻き」のような、服に近い製品になっています。

もともと「お財布」は「エクストラポケット」的な存在だった

こんなふうに、上着の下に着けておくことができる。軽くて薄く、ショルダーベルトが太いので、着けていることをあまり意識せずに使うことができる

「お財布の主な役割は、カード、お札、小銭、領収書を仕分けて収納するためにあると思っています。

厚みを減らすことにこだわった商品『薄い財布』を作る前には、小さいジップロックにカード、お札、小銭、領収書を入れて財布としていたときがあるのですが、やはり、それぞれのポケットが分かれていないので、出し入れしにくいと思っていました。

今回は“着るポケット”がコンセプトなので、できるだけ薄く小さくするために、別に財布を収納するためではなく、財布機能も内蔵したものにしたかったんです。財布に入れるもろもろのものも、結局はポケットに入れておきたいものだからです。

なので、製品名は『エクストラポケット』という名前にしようかとも思ったのですが、さすがにそれでは分かりにくいので、あえて分かりやすく『お財布ショルダー』にしました」と南さん。

使ってみると、直接紙幣やコインを入れられるバッグ的なものという、今までにありそうでなかったアイテムが、実はとても使いやすいことに気が付きました。

先日、筆者は『文学フリマ東京40』というイベントに出展して自作の本を売っていたのですが、そのときメモ帳などと一緒に、この「お財布ショルダー」で金銭を一括管理していたら、お金の受け渡しがとてもスムーズだったのです。なにより、紙幣とコインを分けて入れられるので、お釣りが出しやすいのです。

また、名刺やメモも一括で管理できます。さらに、小さなチョコレートを忍ばせて、エネルギー補給にも使いました。これらが、ジャケットの下で行えるのが、本当に便利なのです。身に着けているので安全性も高いし、外部ポケットにスマホを入れておけるのも助かりました。

着るバッグ的な存在として絶妙なサイズと素材

薄くて、金具がほとんど使われておらず、しなやかな素材でできているから小さく畳めるし、洗濯機で洗うこともできる

この「お財布ショルダー」を、筆者がバッグというより服に近いと思う大きな要因は、洗濯機で丸洗いできることと、装着したときの体へのなじみのよさです。

「バッグではなく、Tシャツのようにというのが当初からのコンセプトでしたので、洗濯は始めからの必須機能でした。なので、金属部品は最小限にとどめて、ショルダーストラップも長さ調整パーツを付けませんでした。

ただショルダーストラップの長さをどうするかはとても難しくて、いろいろ試しながら、どちらかというと大柄な私でも、オフィスの小柄な女性でも違和感のない長さを探りました」と南さん。やはり、開発の段階でも「着るもの」という要素が重要なポイントになっていたようです。

「ショルダーストラップを太めにしたのも、肩への負担を分散させて『着ている』感覚に近づけたいということと、ショルダーバッグっぽさが強くならないようにと考えたからです。私自身が黒いTシャツをよく着るのですが、黒いTシャツと合わせると、より見た目の違和感が少なくなると思います。

外側がツルリとしたポリエステル素材なのは、上からジャケットなどを羽織ったときに着やすいようにと考えたからです。中は綿にしてガジェット類などを入れた際に傷が付きにくいように配慮しました」と南さん。

この、マチが薄くてショルダーストラップが太いデザインのおかげで、Tシャツとジャケットの間にこの「お財布ショルダー」を装着できるのが、また便利なのです。特に、胸ポケットのないTシャツなどを着ていてもスマホの出し入れが楽になるのが生活の中でとても助かっています。金具がほとんどないので、壊れにくいのもいいですね。

さまざまな使い方に応えられる構造とポケット

外側にあるポケットは、スマホの出し入れに最適なサイズ。さらに、バッグの中に入れたモバイルバッテリーのケーブルを通す穴があるので、バッテリーは中、スマホは外のポケットに入れたままで充電が可能

「自宅の中でも身に着けていることが多く、普段はAirPodsや薬、老眼鏡、本、予備のコンタクトを入れています。飲みかけのペットボトルを入れているときもあります。遠出するときや飛行機に乗るときは、パスポートやモバイルバッテリーが入ります」と南さん。まさに、エクストラポケットといった使い方です。

「私自身やはり手ぶらが好きで、旅行やPCを持ち運ぶとき以外は、手ぶらでいたいのです。ただ、年齢を重ねると薬や老眼鏡など持ち運ぶものが増えます。そういうときにもこのお財布ショルダーが役に立ちます。また、飛行機や電車の待ち時間などに本をパッと出せるのがありがたいです」と南さん。

筆者は、外出時に外側のポケットにスマホを入れて、中にポケットWi-Fiとストーリオの「ナッツケース」、ワイヤレスイヤホンのケース、カードケースと名刺入れとパッカブルのエコバッグを入れています。

それとは別にパンツのポケットに財布とキーケース。これで、ちょっとした打ち合わせや買い物なら手ぶらで出掛けられます。外側のポケットへのスマホの出し入れがとてもスムーズなのは、ポケットの大きさと位置、ショルダーストラップの長さのバランスがよいからだと思います。

中のポケットの入り口には白い布でパイピングがされていて、ファスナーポケットの引き手は赤いゴムが付いています。そういう使い勝手への細かい配慮も、南さん自身が実際に使って開発していったからでしょう。

ありそうでなかった製品だけに、使ってみると少し想像を超えてくる感じがあって、とても面白いのです。特に、夏場には必携かもしれません。

納富 廉邦プロフィール

文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。
(文:納富 廉邦(ライター))
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