「ポイントは何だ」──GMO社長の“口癖”には実はこんなに深い意図がある

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2025年05月30日 12:21  ITmedia ビジネスオンライン

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写真はイメージ、ゲッティイメージズ

 この記事は、『一冊の手帳で夢は必ずかなう』(熊谷正寿著、かんき出版)に掲載された内容に、かんき出版による加筆と、ITmedia ビジネスオンラインによる編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


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 私には口癖、というより、胸の内でしょっちゅうつぶやいている言葉があります。「ポイント、ポイント、ポイントは何だ? 今重要なこと、緊急なことは何だ?」というものです。こうつぶやくことによって、頭が一番重要なことに集中して思考できる環境を整えていると言っていいでしょう。


 人の脳というのは不思議なもので、言葉で律してやらないと、勝手な思考を展開します。これは多分、私の脳に限ったことではないはずです。


 例えば、何か心配事や悩みがあるとき、あるいは何かの決断に迫られたとき、「どうしよう、どうしよう」という漠然とした思いだけが脳の回路を駆け巡り、何も具体的に考えられないことがあります。誰しも、経験をお持ちでしょう。


 行動には結果がつきものですが、その結果が行動してみなければ分からないだけに厄介です。どうしても悪い結果を予測してしまい、本来ならいい結果を導くためにはどう行動するかを考えるべきなのに、頭は「困った、困った」の一点張り。具体的な行動が何も思い浮かばずに、鬱々とした気分で時間を過ごすことになります。


●「どうしよう」と焦って何も考えられないときは


 こういう状態を心理学では「自動思考」と称するそうです。本で学んだところによると、これはとくに気持ちが落ち込んだり、動揺したりしているときに、無意識のうちに頭の中をグルグルと回る考えやイメージを指す言葉とのことですが、私は逆に気分が舞い上がっているときの「自動思考」というのもあると考えています。


 脳にいい考えが充満するのは悪くはないものの、頭がうれしさでいっぱいになるゆえに、冷静な判断ができない状態を招く危険性もあります。


 いずれにせよ、頭に対して“放任主義”でいると、物事のポイントを捉えた集中思考が妨げられます。私が読んだ本では、この種の問題への解決策として、「自動思考」に気付いたら、その考えが現実的に見て妥当な考え方なのかどうかを検討し、非現実的な部分を変えるよう努めることを勧め、「自動思考」に対して「本当にそうだろうか」と自問するところに解決の糸口があると書いてありました。


 私はこの考えを応用して、「自動思考」が始まる前に封じてしまえばいいと考えました。というのも、課題が生じると同時に、頭に、「ポイントは何だ?」と指示すれば、脳は「自動思考」を始める暇もないままに、ポイントを考えることに集中できるからです。「ポイント集中」と称しているこの思考方法を使うと、ムダなことを考えずにすみます。


●いいときも悪いときも「ポイント」を探す


 「ポイント集中」の効果は、例えばこんなシーンで発揮されます。


初対面の人と会うとき


 「その人と会うポイントは何だ?」と考える。そうすると、なんとなく人と会って、ムダな時間を費やすことを防げる。


仕事でミスをしたとき


 「大変だ、困ったことになる」とオロオロしそうになるところで「ポイントは何だ? ミスを認めて、打つ手を考えることだ」とアタマに命じる。脳はハッと我に返り、「そうだ、善後策、善後策、善後策は何だ?」と思考モードを切り替える。どう行動すればベストか、という答えが自然と導き出され、ミスに対して的確な対応ができる。


 パニックに陥ることを防ぐだけではなく、自分のミスを取り繕うための言い訳やムリな隠し立てを考えるなど、間違った方向の思考をシャットアウトするメリットもある。


いい仕事が舞い込んできて気持ちが高揚したとき


 「やるぞ、がんばるぞ」と勝手に気持ちが盛り上がりそうになる頭に、「ちょっと待て、ポイントは何だ? いい仕事を手中に収めたことか、その仕事を成功させることか?」と問いかける。


 「チャンスを捉えて、成功へのプロセスを考えることが、今やるべきこと。すぐに計画に着手すべし」と、異常に高ぶった脳がクールダウンされる。だから、やる気が空回りするとか、情熱だけで無計画に突っ走る、といった事態を招くことはない。


複数の仕事が錯綜しているとき


 「あれもやらねば、これもやらねば」と焦る気持ちを押さえて、「一番急を要する仕事はどれだ? 重要度の高い仕事はどれだ?」と冷静に考える。


 仕事の優先順位を誤ることはないし、一つ一つの仕事が中途半端に終わることもない。


予想外のアクシデントに襲われたとき


 頭にヘコんでいる猶予を与えずに、「ポイントは何だ?」と指示する。脳はただちに、現状にどんな影響があるかを分析し始め、どうすれば最小限の被害に抑えられるかを考え始める。


 これらはほんの一例ですが、「ポイント集中」がいかに脳のマイナス思考や極端な躁状態を食い止めるかがお分かりいただけるかと思います。


●「いい自動思考」を習慣化


 実体が分からないものに対して根拠なく悩んだり、悪い結果を予測しては落ち込んだり、慢心から将来への「読み」が甘くなったりするのは、脳に対して曖昧な「呪縛」を課しているからです。ポイントを問いただせば、現実と真正面から対峙できるので、前向きな行動力を生み出すことが可能になります。


 また逆に、成功に対しても「ポイント集中」は慢心を戒めるうえで、大いに貢献してくれます。それは、私が大きな目標としてきた株式上場を果たした時のことでした。それはもう大きな達成感があり、私は非常に満足しましたが、夜には舞い上がる気持ちが引き締められていました。


 習慣というのは恐ろしいもので、私は知らず知らずのうちに、自らに「うれしい、それはいい。でも、夢はこれで終わりか? これからのポイントは何だ?」と問いかけていたのです。


 結果、私の頭の中で、夢に向かう第二ラウンドのゴングが鳴り響きました。そして、「多くのお客さまに、インターネットを広め、感動を共有し、笑顔になっていただく。結果として急成長して企業価値を高める。それが私の使命だ。上場会社の社長になったからといって、まだまだのうのうと暮らすわけにはいかない。行動計画をさらに煮詰めなくては」と改めて気付かされたのです。


 このように「ポイントは何だ?」を口癖にして「ポイント集中」を習慣化すると、仕事に、ひいては人生にプラスになる「いい自動思考」が生まれます。これが非常にいい習慣であることは、私が保証します。



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