キヤノンの「EOS R」シリーズにVlogモデル(といっていい?)が誕生した。「EOS R50 V」である。Powershot Vシリーズが動画仕様だったように、EOS R Vという新シリーズが誕生したのかもしれない。
製品名からいってEOS R50の動画メインバージョンかな、と油断してたら、予想以上に動画方面に振り切っていたのである。
どのくらい振り切ったのか。分かりやすいのが撮影モードダイヤルだ。
見ての通り、静止画用のポジションは一つだけで、あとは全部動画系なのである。これは一目瞭然。
|
|
他にもファインダーがないとか縦位置用の三脚穴があるとか、EOS R50とはまったく違ったテイストに仕上がっているので動画・静止画ともにちょいとチェックしてみたい。
●R50 Vの「V」はどのくらいVなのか
ボディはEOS Rシリーズ初のファインダーレスで上面がフラットなのもあって、なんとなく「EOS M6」っぽさがある。
センサーはR50と同じAPS-Cサイズで2420万画素のデュアルピクセルCMOS。ボディ内手ブレ補正はないが、APS-Cサイズセンサー用のRF-Sレンズはみな手ブレ補正内蔵のISレンズなので、フルサイズセンサー用のレンズも手ブレ補正内蔵のものが多いのでその辺は心配ないかも。動画撮影時は電子式手ブレ補正もかけられることだし。
特徴は前面にも録画ボタンがあること。
|
|
続いて上面。グリップは浅め。EOS系の特徴でもあるシャッタボタン前の前電子ダイヤルはなく、右肩に電子ダイヤルがある。
シャッターボタンは……最初から赤い○が描かれていて、録画ボタンという位置づけ(静止画モード時はもちろんこれがシャッターになる)。
シャッターボタンの回りにはズームレバーがある。これは電動ズームレンズ用で、今回RFレンズで初めて14-30mmの電動ズームレンズが用意された。装着しているレンズはそれだ。
そして前述したように撮影モードダイヤルは一つのポジションを除き、全部動画用だ。
背面はこんな感じ。新しいのはボタン3がデフォルトで「COLOR」に割り当てられていること。
|
|
これを押すと、静止画時は2種類(ピクチャースタイルとカラーフィルター)、動画時はそれに加えて「カスタムピクチャー」が現れ、画作りを選べる。
Canon Log3やBT.709を使いたいときはここから。
●美肌動画からレビュー用動画まで楽しんでみた
では、せっかくなので動画から撮ってみたい。
動画サイズは4K/30p。4Kクロップを選ぶと60fpsでも撮れるが、画角がぐっと狭くなるので、4K/30pで撮るのが基本だ。
動画ポジションはいろいろあるけれども、初心者向けが「A+」。ここでは基本的にカメラ任せで、手ブレ補正の強度を指定するくらい。
手持ちで動きながら撮るには手ブレ補正を「強」にするといい。かなり補正されるが、ガチで動きながら撮るなら別途ジンバルかスタビライザーがあった方が良さげだ。
音声は上部のステレオマイクで撮れるが、Powershot V1と違いウインドスクリーンは付属しない。サードパーティ製のウインドスクリーンか外付けマイクを使うのがいいかも。
A+ではほぼフルオートだが、顔を見つけるとフォーカスがそちらへ行ってしまう。それを避けるにはカメラに近いものにフォーカスを合わせる「レビュー用動画」を使うのが簡単。シーンモードに入っている。ほかに肌をほどよく補正する「美肌動画」「手ブレ補正」の3つが用意されている。手ブレ補正は他の撮影モードでも当然扱えるが、ここでは「水平補正」モードも用意されているのが特徴だ。この構成はPowershot V1と同じ。
レビュー用動画で録ってみた。
手に持ったアイテムをレンズにぐっと近づけてもらったフォーカスが顔ではなく、手に持っているもの(赤ベコの小さなぬいぐるみ)にちゃんとあってる。
シーンモードから美肌動画も。ノーマルで撮ったものと並べてみた。確かに肌の描写が少し違う。
さらに自撮りネタということで縦位置動画。
EOS R50Vは縦位置動画用にグリップ部に三脚穴があいており、三脚に据え付けるとこのように簡単に縦位置動画を撮れる。
A+、シーン、S&F(スローandファスト)以外の動画モードではより細かいセッティングが可能だ。AF回りやLog撮影、その他必要に応じて設定できる。
では様々なシーンを撮影した4K動画からいくつかピックアップしてキャプチャーしたものを。
EOS R50 Vはライブ配信にも力を入れており、ライブボタンを押すとライブ配信メニューが開く。
スマホを経由して簡単に配信するときは、Camera Connectがいいか。EOS R50 VをWi-Fiのアクセスポイントに接続しておく必要はあるが、比較的簡単に配信可能だ。
●静止画用としてはどう?
EOS R50 Vははっきり動画向けをうたっているし、別途EOS R50という製品もあるので静止画用……つまり写真用には使いづらいのではないかと思っていたが、あにはからんや、これが意外にそうでもなかったのだから面白い。
EOS R50 Vにはファインダーがないが、いまやファインダーがあっても背面モニターで撮る人が多いから問題ないかも。晴天下では見づらいけど、どこかのボタンに「モニターを一時的に明るくする」機能を割り当てておけばなんとかなる。なんともならないのは老眼だけだ。
撮影モードダイヤルで写真撮影モードが冷遇されている点も、いざ使ってみると、逆に一つの画面で全モードにアクセスできるのでまったく困らなかったりするのである。
画面左上の撮影モードアイコンをタップすると撮影モードメニューが出る。そこで目的の撮影モードをタップすればいい。
では撮影。いつものガスタンクから。
画面上のQボタンをタップすると撮影に必要なメニューはさっと出てくるので、指先だけで操作できるわけで、よほど凝った撮影をしない限り、「これでいいじゃん」感があるのだ。
縦位置撮影時に画面のボタン配置も縦位置対応になるのもいい。
ISO感度はISO100から32000までで拡張ISO感度で最高ISO51200。
ISO25600で夜景。ここまで感度を上げるとディテールがあやしい。ISO12800くらいまででおさえたいかも。
シャッタースピードはメカシャッター(電子先幕シャッターのみ)時は1/4000秒、電子シャッター時は1/8000秒まで上げられる。動画機であるがメカシャッターも用意されてるのである。
連写はメカシャッター時は最高約秒15コマ(電子シャッター時)。メカシャッター時でも約秒12コマだ。
55-210mmを装着して、シャッタースピード優先でカルガモ。被写体自動検出が働いてくれた。
従来、シーンモードに入っていた各種シーンも他の撮影モードと一緒に一覧表示されるのでアクセスしやすくなった。
ポートレートモードを使い、50mm F1.8で撮影。
自撮りモードでも撮って貰った。
●EOS R50かR50 VかPowershot V1か
動画仕様モデルながら、カジュアルなミラーレス一眼としてもなかなかイケるのが分かったEOS R50 V。タッチパネルの操作系がしっかりしてるので、けっこう快適に使えたのだ。
では、その直前に発売された1.4型センサー搭載の動画モデル「Powershot V1」と比べるとどうか。
実は価格がほとんど変わらないのである。レンズ一体型(16-50mm相当)のPowershot V1が14万8500円(25年5月時点。キヤノンオンラインショップ)。14-30mm(22.4-48mm相当)の電動ズームレンズとEOS R50 Vのレンズキットが14万800円(25年5月時点。キヤノンオンラインショップ)。
動画カメラを買いたいと思ったら、レンズ一体型にするかレンズ交換型にするか悩みそうだ。EOS R50 Vのレンズキットを買って、あとからもうちょっと広角も、もうちょっと望遠も欲しい、となって沼にはまっていくのがいいかと思う(無責任)。
EOS R50とR50 Vで比べてみる。
EOS R50 Vは動画に、EOS R50は静止画に軸足を置いたモデルであるけれども、どっちも撮りたい人はどっちを選ぶべきか。EOS R50の方がファインダーがついていて少し安い(25年5月時点。キヤノンオンラインショップ)が、両方を触った感触としては、ファインダーを使わないならEOS R50 Vを選ぶのはアリだと思う。もし自分なら、動画より静止画メインだしファインダー覗くの好きだけど、カジュアルに持ち歩くカメラとしてEOS R50 Vを選びそうな気がする。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。