
川の中に、じっと動かずうずくまる小さな命。母猫の姿はなく、体は泥にまみれ、冷たくなっていたといいます。その子は、生後わずか2週間の三毛猫、シナちゃんでした。
保護されたとき、「このサイズの子は生きられない子も多い」と言われた命。それでも、ミルクと排泄の世話を2〜3時間おきに続け、愛情を注ぎながら日々を重ねてきた飼い主のXユーザー・tobi8/8さん(@8_tobi8)。この出会いが、家族の時間と絆を大きく変えていくことになります。
川で見つけた泥だらけの子猫
2023年9月、義姉が犬の散歩中に川で発見したのが、後に「シナ」と名づけられる子猫でした。母猫がいるだろうと思ってその場を離れたものの、翌日になっても同じ場所にうずくまってるのを発見。義姉は川に入ってその子を保護しました。
「体は泥だらけで、冷たくなっていたそうです。病院で体を洗ってもらって、初めて三毛猫だとわかりました。数日後、うちに来ましたが、まだ予断を許さない状態でした」
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かかりつけ医からは、覚悟を求められたといいます。
「『このくらいの子猫は生きられない子がいっぱいいるから、もしもの時は自分たちを責めないように』と伝えられて。ああ、子猫を育てるって簡単じゃないんだって、改めて思い知らされました」
それでも「なんとしても生きてほしい」という気持ちは、ますます強くなっていきました。
息をしているか、何度も確かめた初日
親戚の家へ迎えに行ったとき、シナちゃんはぐっすり眠っていました。手のひらよりも小さな体に、飼い主さんは不安を抑えられなかったそうです。
「息をしてるか、ヒヤヒヤして何度も確認しました。病院でミルクのあげ方や排泄の仕方を教わってからは、2〜3時間おきに世話する日々が始まりました。大変だったけど、今では良い思い出です」
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家では段ボールとケージの中で様子を見ながら、ミルクを用意しました。最初はなかなか飲んでくれませんでしたが、次第に呼吸が合ってきたのか、少しずつスムーズに飲めるようになったそうです。
先住猫のトビ子ちゃん(現在16歳)は、当初シナちゃんが小さすぎて猫と認識できなかったようです。さらに、シナちゃんはノミダニ、猫カビ、寄生虫と複数の健康トラブルを抱えていたため、しばらくは隔離生活が続きました。
「顔合わせできたのは2カ月後です。初めてシナを自由に歩かせたとき、トビ子と遭遇して、シナが『シャー』って威嚇したんです。トビ子はじっと見つめていました」
その後もシナちゃんはトビ子ちゃんの後をついて回って嫌がられながらも、少しずつ関係を築いていきました。今では隣に来ても逃げられることなく、優しく見守ってもらえるようになったのです。
2024年には3匹目の猫・ブリちゃんも加わり、シナちゃんにとっては年の近い良き遊び相手となっています。
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「毎日追いかけっこをして遊んでいます。ときどき猫パンチ対決もしますが、お互い楽しそうなんです」
小さな体でよく生きた “気遣い屋”で甘えん坊な三毛猫
シナちゃんは、現在1歳。今ではすっかり家族の一員として暮らしています。朝5時、家の中で最初に動くのは先住猫のトビ子ちゃん。その声に反応して、眠たそうにしているシナちゃんとブリちゃんも起きて、飼い主さんの後をついてくるそうです。
性格はお転婆で甘えん坊、けれど実はとても気遣いのできる子。
「トビ子やブリが爪切りタイムで捕まっていると、シナが心配そうに駆け寄ってきます。小さい体で、よくあんなにたくさんの病気を乗り越えてきたなって思います」
ノミダニや寄生虫による嘔吐・下痢、猫カビで顔まわりや足の毛が固まってしまったこともあり、毎日お風呂に入れて体を洗っていた時期もあったといいます。
「それでも、元気を取り戻してくれた。ほんとうに強い子です」
今では帰宅すると、玄関まで迎えに来てくれるのはシナちゃんとブリちゃん。トビ子ちゃんはベッドで耳を傾けながら、そっと気配を感じ取っているようです。
「それぞれお迎えした時の事を鮮明に覚えています。3匹ともお迎え当日はドキドキソワソワしていましたが、あっという間にうちに慣れて、今ではすっかりうちの子です。私たち夫婦にとって猫たちは我が子のように大切で、今では猫がいない生活は考えられません」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)