猫が、治療もされずに「自然死」に…? 快復の可能性もあるのに…放置される実態を保護団体に聞いた

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2025年05月30日 15:00  まいどなニュース

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顔面左がまひのよしのちゃん。動物愛護センターからボランティアのところに引き取られた(かごねこさん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

「麻痺があるよしのちゃんは
顔を洗ったり毛づくろいしたかったりしても
全部クリアすることができません。
時々やりたそうにしてる仕草を見つけたら
サポートするようにしています。」

【動画】顔面まひの猫さんをサポートする様子を見る

鹿児島県内の道端で横たわっているのを発見され、動物愛護センターに収容されていたという、よしのちゃん。動物病院が母体でもある保護団体「かごねこ」さん(@kago_neko_)のところに引き取られました。左側の顔面がまひし、けがも負っていたといいます。

まひの猫、交通事故? 動物愛護センターで「治療不可」「譲渡不適応」だった

「交通事故かアナグマなど外敵によるものか分からないですが、けがを負っていました。また管理センターで見た時は、左目は完全にかさぶたのような血の塊のようなもので覆われ、つぶれていました。痩せており、横倒しのまま顔を持ち上げようとしても、それすらできず、頭は真後ろへ反転してしまう状態でした」

管理センターに収容された子たちは、飼い主さんがいる場合もあるため、1週間は公示期間とされているとのこと。この期間内に、感染症など抱えていないか確認。中には、よしのちゃんのように、事故などにより重症あるいは病気を抱えている子たちがいるそうです。

「管理センターでは、1週間に1回、獣医師会のボランティア診療により、治療を行うこととなっています。ただし治療すべきかどうかの判断は、担当獣医に委ねられるため、時に治療を行うことなく、譲渡不適応として放置される場合もあります。そうして死亡した場合、『自然死』として扱われ、『殺処分』には含まれません。よしのちゃんは、治療不可・譲渡不適応として対応され、衰弱し、冷たくなっていました」

体を使うようにサポート、リハビリで歩けるように

まひやけがだけではなく、体も衰弱していたよしのちゃん。かごねこさんのところにやって来てからは、思い通りに動かせない体をサポートしてもらいながら、立ったり歩いたりとリハビリなどに取り組んできました。

「左側の顔面まひとともに、手足のまひもあります。顔面まひがあることで、左目のまぶたが閉じず障害物に角膜が直に当たってしまうことで角膜に傷が入ってしまい、慢性的に角膜潰瘍(かいよう)が起きていましたが、少しずつまぶたが閉じることがあったり反応が出てきたりしており、傷が治りぶり返すことも減ってきています。

また口へ運ぶとペロペロなめることはできたため、最初は注射器を使ってご飯やお水をあげていました。治療を始めてからは少しずつ上体を起こせるようになり、手のひらにご飯をのせて介助をしながら、なるべく体を使うようにサポート。それ以外でもマッサージや筋肉トレーニングをしながら、立つ練習をしたり、歩く練習をしたりを繰り返し、少しずつ立ったり歩いたりできるようになって。

立てるようになってからはお皿からお水をとれるようになり、それからしばらくしたら口を少し開けられるようになったため、ご飯を自力で食べられるようになりました。今では、歩いたりジャンプしたり、爪研ぎをしたりするようにもなっています」

今後は上り下りができるようにまひがあった部分を刺激しつつ、筋肉トレーニングをしながら、強化していくとか。そんな治療やリハビリを頑張っているよしのちゃんは、とても前向きで元気な猫さんだといいます。

「とにかく前向きで明るく元気な子です。生きようという強い意志があり、前へ前へ進むばかり…食欲旺盛、好奇心旺盛で、おてんば娘だったに違いないと推測しています。少し天然なところもあり、毎日たくさんの笑いをもらっています」

  ◇  ◇

殺処分ゼロの裏側にある「自然死」 救われる命もあることを知ってもらいたい

よしのちゃんは、昨年4月頃に生まれたとみられる野良猫さんでした。とあるおうちでご飯をもらっていた黒猫さんが産んだ子猫だったとのこと。道端で横たわっていたところを助けられ、一命を取り留めました。しかし、動物愛護センターに収容されて引き取る人が出てこなければそのまま衰弱して死んでいたかもしれないと、よしのちゃんのことを通じて、かごねこさんはこう訴えます。

「殺処分ゼロと言われていますが、その裏側には『自然死』の実態があります。譲渡不適応とされ、治療もされず、食べることもできないのにご飯とお水をただ入れて、衰弱するのを待ち、消えてしまう命があること。人が手を下していないから『殺処分』に含まれていないだけで、収容された命が消えてしまう現実を知ってもらいたいと思っています。

さらに、『自然死』の中には、よしのちゃんのように、ほんの少しだけ治療をして介助してあげることで、救われる命があることも知ってもらいたいです。『殺処分ゼロ』にこだわるあまり、救えるべき命が粗末に扱われていること、『自然死』という枠があることで『殺処分ゼロ』が保たれていることそれを知ってもらい、真の愛護を目指してほしい…そう願っています」

また鹿児島市の市動物愛護管理センターでは、犬猫の殺処分が2021年1月を最後に4年以上なく、今後も行われない見通しのため、センターで使われてきた犬猫の殺処分設備について、撤去の検討をしているとのこと。市は譲渡促進などを進め「殺処分ゼロ」の継続を目指しているといいます。

最後に…鹿児島市の動物愛護基金について

「鹿児島市では動物愛護基金というのができて、ふるさと納税などで集められることとなりました。一般の方は、収容された命が救われるように…と思って寄付されると思うんです。でも、実際は…費用の面だけではないところがあり、この自然死の中身について、行政がもう少し見直してもらわないと、救ってもらえる命は増えないと思っています。行政も獣医師会も、自然死の中に治療したら救われる命などないとしてますが、実際はよしのちゃんたちのような子がいるのです。この見直しができなければ、基金の使途として、負傷動物の治療というのが掲げられないと思っています」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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  • 猫を放置死他動物虐待するクズは1件で1億以上罰金徴収し保護シェルタ財源にすればいい
    • イイネ!2
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