日本ダービーに出走するマスカレードボール(撮影:下野雄規) 2020年代に入り、マルシュロレーヌ、ウシュバテソーロ、パンサラッサ、フォーエバーヤングが海外のダートG1を制覇。「日本馬がダートで世界に通用するなど夢のまた夢」と考えられていた時代とは隔世の感がある。わが国の競馬が芝だけでなくダートでも世界の第一線に躍り出たことで、芝競馬が“主"でダート競馬は“従"、という旧来の日本競馬の構図は変化しつつある。
折しも昨年から中央と地方が連動したダートの競走体系が構築され、ダート三冠競走が開始された。もはや日本ダービーだけが3歳馬の頂点ではない。大井競馬場で行われる東京ダービーがもうひとつの頂点となり、芝・ダートそれぞれの3歳チャンピオンが並び立つ時代となっている。ということで、2つの“ダービー”を血統的側面から見てみたい。
日本ダービー馬の血統的な共通点として最も分かりやすいのは、「父が現役時代に日本ダービーで1〜3着に来ていること」。2012年のディープブリランテから昨年のダノンデサイルまで13年間継続中なので信頼性が高い。
皐月賞の1、2着馬ミュージアムマイル、クロワデュノールは、それぞれリオンディーズ、キタサンブラックの息子。これらは現役時代に日本ダービーで5、14着だったので条件を満たしていない。
3着馬マスカレードボールは日本ダービー馬ドゥラメンテを父に持つので条件を満たしている。ドゥラメンテは種牡馬として成功し、タイトルホルダー、リバティアイランド、スターズオンアース、ドゥレッツァなどを出して2023年にはリーディングサイアーの座についている。5世代を残して早世したのが惜しまれる。
マスカレードボールは右回りが苦手なので、皐月賞3着は大健闘といえる内容だった。左回りの東京芝は共同通信杯など2戦2勝。距離延長も問題なく、今回はベストの条件だろう。ドゥラメンテ産駒は他にファイアンクランツ、エムズなども登録しており、最終世代にダービー初制覇の望みを託す。
東京ダービーは昨年から中央馬に門戸を開いた。その結果、1〜3着を中央勢が独占。他のダートグレード競走がそうであるように、基本的に中央馬を中心に馬券を組み立てるべきだろう。
三冠の第一関門である羽田盃は、中央馬ナチュラルライズが5馬身差で圧勝。モノが違うという勝ちっぷりだった。通算5戦4勝。
母方にDanzig(ダンジグ)を持つキズナ産駒は、皐月賞馬ジャスティンミラノ、ゴドルフィンマイルを勝ったバスラットレオン、重賞を3勝したシックスペンスとサンライズジパングなどが出ており、キズナ産駒の最も優れた配合パターンといえる。
ナチュラルライズはこれだけでなく、Storm Cat(ストームキャット)のクロスを持っている。ストームキャットは米リーディングサイアーで、このクロスを持つキズナ産駒は、ハピやモンブランミノルのように適性がダート方向に寄りやすい。
ダンジグを持ち、なおかつストームキャットのクロスを持つナチュラルライズは、ダート向きの大物感にあふれている。三冠も視野に入っているだろう。
(文:栗山求)