
また、社会保険労務士・行政書士の小西道代さんから、ハラスメントに遭遇したときにどうしたらいいのか、解決への道筋をアドバイスいただきました。
パワハラ、モラハラの数々。
職場でよく起こりがちなのが、パワハラやモラハラ。その内容も種類もさまざまにあります。「パワーハラスメントの精神的攻撃をされました。私は上司のアシスタントをしていました。そんなに大きなミスをしたりはしていなかったのですが、『アシスタントなんて代わりはいくらでもいる、バカでもできる仕事をお願いしていますよ』など言われ続けました(30代・女性)」
「上司に仕事内容とは関係のない私の性格について周りに聞こえるような大きな声で非難されました。あまり過剰に反応しないようにしていましたが、耐えられなくなってその場を離れました(30代・女性)」
「上司から受けたパワーハラスメントで、会社の小さな会議室に閉じ込められて面と向かってその日ずっと説教されました(50代・男性)」
「こちらが手持ちのタスクで手いっぱいなのにも関わらず、面倒な仕事を要求してきたり、残業を強要するなど精神的な嫌がらせをするモラルハラスメントに不快を感じました(30代・男性)」
「短時間パートとフルタイムパートがいて、フルタイムパートが短時間パートをいじめるなど、マウントを取るのがひどかったです。“フルタイム”に目をつけられないように、ミスをしないように気をつけて仕事をしていました。同じパート同士なのに凄まじい格差でした(40代・女性)」
中にはこんなハラスメントも。
「有休を取らせてくれないハラスメントがありました。2カ月前に希望休を出すと『早すぎる、1カ月前に出すともうその日は締め切った』など、何かと言い訳をつけて有給休暇を取らせてもらえず、急な体調不良で休んでも欠勤扱いで振替出勤させられることばかりでした(30代・女性)」
そして、「丸投げハラスメント」とでも言いたくなるようなものが集まりました。
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「仕事任せハラスメントです。ちゃんとしたレクチャーもないまま、仕事を任せ、進捗や完了の確認もせず完全に人任せにすることです。
それで人が入ってはすぐ辞めていくので、最近はやっと研修の場を設けようという動きになりましたが、研修を受けず訳も分からずやらされている既存の社員については、研修を受けさせず、新しい人が研修を受け、教わりながらじっくり覚えていく間、ひたすら仕事をさせられている(30代・女性)」
「指示を明確に出さず、こちらが考える自分の思ったままでいいのでチラシをデザインしてと言われ、デザインすると事細かに指摘だけして訂正ばかりさせる(30代・女性)」
丸投げするということは、ちゃんとした指示を出す能力がないのかもしれませんね。それで大変な思いをすることになるのはたまったものではありません。
いまだ後を絶たないセクハラ
たくさんの事例が報道され、さまざまに注意喚起がされている時代になったというのに、アンケートにはセクハラの文字がいくつも見受けられました。「上司と2人きりになると髪をなでてきたり、私だけ食事に誘ってきたりされました。なるべく、2人になる機会を減らすようにしました(40代・女性)」
「上司から『少し太った?』など、体型のことをいじられたり、狭い通路で上司とすれ違ったときに体を触られるなど。体型を指摘された時は『余計なお世話です』とハッキリ上司に伝え、体を触られたときは、上司を睨みつけてしまいました(30代・女性)」
女性から男性へのセクハラの回答もありました。
「僕は筋トレをしていてそれなりに腹筋が割れているのですが、それが理由なのか、子持ちの30代くらいの女性からよく体を触られます。『旦那さんいるんですよね?』と言ってその場をなんとか押し切りましたが、次の日も触ってくるので少し嫌になります(10代・男性)」
ハラスメントをする人は、どんな風にしたら世間の風に当たらずに生きてこられたのでしょうか?
多様性はどこへ? マリハラやマタハラ、子育てハラ
古い価値観で発言をしてしまうと、即ハラスメントになることも。
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「授かり婚で、産休まで事務作業メインで仕事を続けていました。先輩方は悪気はなくおふざけの一環として『できちゃった婚は女も悪いからな』と言われましたが、今思えばマタニティハラスメントだったと思います(20代・女性)」
「結婚したことをきっかけに、上司から面談のたびに、『子供はまだ?』と聞かれるのが少し辛かったです。妊娠したら産休をとらなければならないので、職場にとっては気になることだとは分かりますが、当時不妊に悩んでいたこともあり、私にとってあまり触れてほしくない話題でした(30代・女性)」
「子育てをしている人に対して、お局が自分の子育てはこうしてるからとマウントを取るような発言をしていかにも自分の育て方がいいと言うような内容をくどくどと語っていました(30代・男性)」
みなさんが遭遇したものと似たケースもあったのではないでしょうか。同時に「あの発言は大丈夫だったかな?」など、自分の行動が心配になった状況もあるかもしれませんね。
【専門家アドバイス】価値観の見直しの必要性
ここまでのさまざまなハラスメントに関して、労務管理ガイドの小西道代さんに対処法も含めて、お聞きしました。「就職氷河期やリーマンショック後の採用控え、さらにはその前後の景気変動の影響もあり、従業員の年齢構成が20代と40代後半〜50代に偏っている企業も少なくありません。40代以上にとっては当たり前に思えることでも、20代の若い世代から見ると『古い価値観』と受け取られる場合もあるかもしれません。
SNS全盛期の今、プライバシーへの過度な干渉は、個人情報の漏えいや犯罪に巻き込まれるリスクをはらんでいて、会社にとっても、リスク管理やコンプライアンス遵守の観点から一定のルールを整備し、従業員に周知することが求められます。
特に若い世代の中には、『つながらない権利』や『プライベートを尊重してほしい』という意識が高まっていて、こうした考え方を職場全体で理解し尊重するためにも、『職場マナー・コミュニケーション研修』や『SNSリテラシー&コンプライアンス研修』を行う会社も増えています。
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早い段階で信頼できる同僚や上司に共有したり、時には『世代間ギャップの笑い話』として軽く昇華したりすることで、深刻化を防ぐ対策となります」
「今まではOKだった」という言い訳はまったく通用しませんし、常に情報はアップデートしていかなければならないということがよく分かりますね。
<調査概要>
職場で体験したハラスメントに関するアンケート
調査期間:2025年2月25日〜3月27日
調査対象:全国10〜70代の男女150人
小西道代(こにし みちよ)プロフィール
行政書士法人グローアップ代表。社会保険労務士法人トップアンドコア役員。大学卒業後、日本マクドナルドに入社。幅広い年齢層と共に働くことで、法律や制度だけではない労務管理・組織運営に興味を持ち、弁護士事務所等で経験を積む。自身も喫茶店を経営した経験から、労務トラブル予防の労務相談を得意とする。All About「労務管理」ガイド。(文:小西 道代)