太ったと思いジム通い→実は妊娠5か月…37歳ADHDライターの私が妊娠に気づかなかったワケ

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2025年05月30日 16:10  女子SPA!

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女子SPA!

姫野桂
 2022年2月から夫と同棲を始め、2024年10月に結婚。今は夫と猫2匹と暮らしている。私は発達障害の一種のADHD(注意欠如・多動性障害)と算数LD(数字、計算に困難を抱える学習障害)持ちで、今まで発達障害に関する記事や書籍を出版してきたライターだ。

 今年で38歳、夫は41歳。夫が再婚で前妻との間に子どもがいることもあり、子どもをつくるかどうかは私としては特に考えていなかった。今後も夫と2人で大好きなお酒を飲みに行ったりバンドのライブを見に行ったりして、お互いおじいちゃんおばあちゃんになるのだと思っていた。

 周囲には子どもを産む選択をした人、産まない選択をした人がおり、それぞれの楽しみを持っていた。どんどん出産できる年齢のタイムリミットが迫ってきた中、私は産まない選択をしたつもりだった。

◆尿が出づらく泌尿器科へ行くも、病気の気配はナシ

 夫と二人、猫2匹の生活を続けていたある朝、5時に尿意で目が覚めた。しかし、トイレに行くもまったく尿が出ない。膀胱はパンパンで下腹をつつけば漏れそうなのに出ないのだ。これは膀胱炎なのではないかと疑い、近所の泌尿器科を調べると診察は9時から。診察開始の時間までトイレに20回ほど駆け込み、ようやく少しずつ尿が出始めた。

 診察開始時間になり泌尿器科に行って尿検査後、膀胱炎ではないし尿にも異常はないと診断された。この日は残尿感や頻尿を防ぐ漢方を処方され、「来週尿が溜まった状態で超音波検査をしましょう」と医師に言われた。

 この漢方は効き、すぐに尿が出にくい症状は緩和された。翌週、尿を溜めた状態で泌尿器科へ向かった。昔、母が子宮筋腫により膀胱が圧迫されて尿が出にくくなったことがあったので、私も子宮筋腫の影響で尿が出にくくなっているのではないかと思いつつ超音波検査を受けた。超音波検査の機器をお腹に当てられるとモニタに尿がたっぷり溜まった膀胱が映し出された。

◆突然の妊娠発覚! 宇宙人のような影が

「膀胱に異常はありませんね。では子宮を見てみましょう」

 医師はそう言って機器をずらした。すると、モニタには何かピクピク動く宇宙人のような影が映し出された。

「妊娠してるじゃないですか!」

 医師が声を上げた。私も「えええええ!!!!」という声しか出なかった。どうやら、胎児が膀胱を圧迫していたため尿が出づらくなっていたようだ。

 医師はすぐに超音波検査の機器を片付け、「処方した薬はすぐにやめてください! うちではなく産婦人科へ行ってください!」と言い、私は追い出されるよう泌尿器科を出た。

 頭の中が混乱している。一旦家へ帰り産婦人科を調べ、今から受診してもいいか電話をかけると電話口の受付の女性から優しく承諾をもらった。

 産婦人科へ行くと初老の男性医師が診てくれた。内診台に上がると医師が「あれ? 大きい……」とつぶやく。大きいってどのくらい……? そのままエコー検査を受けると、モニタに胎児が映し出された。すでに頭や体の形がわかるまで成長している。

◆すでに安定期に入っていた

「16週に入っています。びっくりしましたね〜。おめでとうございます」

 医師はそう言って祝福してくれた。流産の心配が大きかったり、つわりで苦しんだりする妊娠初期を通り越して、もう安定期である中期に入っているので、突然妊婦になった気分だった。

 産まない選択をしたつもりだったのに私は今、妊娠している。妊娠しているとはつゆ知らず、いつも通りの日常を送っていた。飲酒もしていたし脂っこいものも食べていたし、妊婦に禁じられている激しい運動もしていた。明け方近くまで起きていることもあって、到底健康的な生活を送っていたとは言えない。

 こんな生活を5か月も送っていてお腹の子の健康は大丈夫なのだろうか? 今まで独身生活、そして子どもがいない分自由な生活を謳歌してきた私がまともな親になれるのだろうか? 不安なことばかり脳裏によぎる。

 そんな気持ちの一方で、今までは子どもは作らなくてもいいと思っていたのに、今現在お腹に新しい命が宿っていると思うと愛おしくなる気持ちも込み上げてきた。偶然だが、妊娠がわかる2週間前、同い年である元モー娘。の辻ちゃんが第5子の妊娠を発表していた。辻ちゃんは既に4人産んでいて育児の経験者であるけど、この年で産むのは同じなのだから私も頑張ろうという前向きな気持ちになれた。

◆妊娠に気づかなかったいくつかの要因

 ここまで妊娠に気が付かなかったのだが、今思えば日々の小さなサインはあった。まず、生理が止まった。しかし、初潮を迎えたときからずっと生理不順だった。実際、直近の生理も、4か月間来なかったので婦人科で妊娠検査の上、妊娠していないことがわかりホルモン剤を処方してもらい、医学の力でこさせた生理だった。

 また、体重も大幅に増えた。もともと20代の頃から摂食障害によりガリガリの低体重で、服のサイズはXS、ウェストは54cmしかなかった。しかし、食べるのが好きな夫と付き合い始めてからは同じものを食べるようになって太り始め、16kgも増えて服のサイズはLになっていた。そして最近はお腹だけぽっこりと出る太り方になってきた。

 そのため、友人が通って8kgの減量に成功したというボクササイズジムに通い始めた。45分ノンストップで体を動かし、700〜1000カロリーも消費するという激しいレッスンだ。筋トレとボクシングを組み合わせた内容で毎回滝のような汗を流していた。しかし、こんなにハードな運動をしてもちっとも痩せない。当たり前だ、妊娠によりお腹が出ていたのだから。

 さらには乳首がチクチク痛んだり、気分が荒れて夫に当たったりすることもあった。乳首の痛みは今思えば乳腺が発達してきていたことによる痛みだったのだが、乳がんなどの病気を疑い乳腺科を検索したこともあった。気分の荒れも女性ホルモンの分泌量の大きな変化によるものだったのだろう。。

◆つわりがまったくない+ADHD特性+セルフネグレクト

 なぜ妊娠に気が付かなかったのか、その理由はいくつかあるが、つわりがまったくなかったことと、ADHD特性によるものが大きいと思う。私にはADHDの特性として先送り癖やセルフネグレクト(健康管理、衛生など自分の身の回りのことを放棄してしまう状態)の傾向がある。「生理が来ないから、いい加減婦人科で診てもらわないとな〜」と思いつつ、「でも体調が悪いわけではないから」と婦人科の予約を先送りしていた。

 セルフネグレクトに関しては、常に部屋はぐちゃぐちゃで、2週間の使い捨てコンタクトレンズすら交換するのが面倒で1か月は使い続ける。最高に部屋が汚くなると夫が「今日は大掃除をしよう」と言い、一緒に片付けてくれる。

 同棲を始めた頃、私の部屋が汚いことに気づいた夫は「今まで気づかなくてごめん。これから定期的に一緒に掃除をしよう」と言ってくれた。ただ、私は何を捨てていいのか自分では判断できない。すると彼は一つ一つ、一つ一つ「これはいる? いらない?」と聞きながら一緒に処分してくれた。「まずはここを掃除して」「次はここ」と指示を出してくれて、その通りに動くことで、ようやく部屋を片付けることができた。

◆先送り癖が発動し、ピルも飲んでいなかった

 また、7〜8年前の子宮頸がん検診のときに超音波検査や内診もしてもらい、医師に「卵管が詰まっていて排卵していない状態。もし子どもが欲しいのであれば不妊治療が必要で自然妊娠は難しい」と言われていたのだ。だから、生理が止まったのもいつもの生理不順だと思っていた。それに、そもそも算数LDで自分の生理周期をあまり把握していなかった。

 さらに夫からも「この年齢だからさすがに妊娠なんてしないよ」と言われていた。自然妊娠率を調べると確かに30代前半までは30%ほどなのに、35歳以降になるとガクンと18%まで下がる(※妊娠しやすい時期に性交渉をした場合の1か月あたりの妊娠率)。

 そのことから結婚以降、避妊がおろそかになっていた。生理痛を緩和するためにピルも飲んでいたが、ある日切らしてしまってからADHDの先送り癖が発動して婦人科に行くのが面倒になり飲んでいなかった。

 こうやって突然ママになった私。予定外の妊娠。周りに子どもを産んだ人はいるが、今まであまり関心がなかったので情報もなく知識もゼロ。既に妊娠中期なので、他の妊婦より健診のスタートもだいぶ遅れている。さて、どんなマタニティライフとなるのやら。

<文/姫野桂>

【姫野桂】
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei

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