格闘技イベント「RIZIN」が韓国で開催 アゼルバイジャンに続く「海外進出の道筋」

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2025年05月30日 16:52  ITmedia ビジネスオンライン

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RIZINの榊原信行CEO(撮影:河嶌太郎)

 格闘技イベント「RIZIN」を主催するドリームファクトリーワールドワイド(東京都港区)は5月31日、韓国・仁川のパラダイスシティで「RIZIN WORLD SERIES in KOREA」を開催する。


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 同大会は2023年11月にアゼルバイジャンで開催した「RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan」に続く2回目の海外大会だ。韓国の複数の団体からの選手たちと、日本のRIZINファイターたちが日韓対抗戦を繰り広げる。


 10周年を迎えたRIZINはドリームファクトリー「ワールドワイド」という社名の通り、2015年に「日本発で世界に通用するコンテンツ」を目指して旗揚げされた。


 今回の会場は2000人規模の収容となるパラダイスシティ。セガサミーホールディングスと、韓国カジノ大手パラダイスによる合弁会社パラダイスセガサミーによる統合型リゾートの施設だ。そのパラダイスシティとの共同事業として開催するという。


 RIZINが海外に進出していく道筋を、どう考えているのか。今回はペイ・パー・ビュー(PPV、有料コンテンツに料金を支払って視聴するシステム)ビジネスを、どう組み立てたのか。榊原信行CEO(榊は正確にはきへんに神)に聞いた。


●パラダイスシティとの共同事業 狙いは?


――世界展開の第2弾として開催する韓国大会ですが、どんなビジネスモデルになっているのですか?


 韓国大会は、仁川国際空港の近くのパラダイスシティと組んで共同事業として開催します。


 米ラスベガスで実施する大会に近いのかもしれませんが、パラダイスシティはRIZINというコンテンツを武器に、日本からカジノのハイローラー(高額でプレーする顧客)を誘客することが、メインのビジネス的な狙いになります。カジノプレーヤーと格闘技ファンには親和性があるからです。これはボクシングにしても(年間売上高が約2110億円の規模を誇る世界最大の格闘技団体)UFCにしても、ラスベガスでは皆そういうビジネスを手掛けています。


 パラダイスシティはチケットを買い上げるなど、一定のパーセンテージで興行リスクを負います。一方でホテルの部屋の提供などもしてくれます。つまり日本のRIZINが来ることで、カジノプレーヤーを誘客できるのが、パラダイスシティのメリットになります。


――会場は2000人キャパということです。RIZINとしてはチケット代よりもPPVで稼ぐ形ですね?


 日本国内でいうとPPVですね。もともと韓国では格闘技の人気はあるものの、チケット単価が3000〜5000円と、日本と比べると安いんですね。今回はパラダイスシティに興行を任せてしまっているので、観客が2000人であっても2万人であっても、われわれの収益は変わりません。


――リアル会場の方は、基本はパラダイスシティが仕切るということですね。


 当初はチケットを日本国内や韓国のファンにも販売しようとしていました。ですが思った以上に人気が出てしまい、カジノのハイローラーたちと、その周辺の人でほぼ満席になってしまいました。わずかに日本のRIZINファンクラブの一部だけは、受け入れられました。


 パラダイスシティとしては、結果的にもっと大きな会場で開催してもよかったのかもしれません。ですが、そうすると当然、興行としての原価も高くなります。なので最初の形としては、お互いこのレベルで実施するのが良かったのかなという感じですね。


 大会はパラダイスにある大きなバンケットルーム「PARADISE CITY グランドボールルーム」で開催します。そこは2000人規模で入ります。パラダイスホテルに宿泊している人は、ホテルから5分もかからずに会場に来られますし、飲食もできます。カジノをプレーできるスペースも近い。


 今回の大会が1つのショーケースになれば、年に1 〜2回、韓国で大会を開くことも望めるかもしれませんね。仁川には、もう一つ米国資本の統合型リゾートであるインスパイア・エンターテインメント・リゾートもあります。一つのコンテンツとして、RIZINが採用されていく可能性もあると考えています。


――韓国のファンに向けてもPPVは実施するのですか?


 日本国内ではABEMA、U-NEXT、スカパー!、RIZIN 100 CLUB、RIZIN LIVEといった各プラットフォームが生中継します。日本のファンに向けては、いつも通りの環境で配信していきます。海外ではRIZINtvで配信します。


 韓国では今回、ライブ配信アプリ「SOOP」で、無料配信します。SOOPは17LIVE(イチナナ)のようなものですね。韓国でRIZINのプレゼンスを高めることが狙いです。


 加えてエリアブロックを掛けた形で、 RIZINの公式YouTubeでも無料配信します。SOOPではハングルで、RIZINのYouTubeでは英語での実況と解説を付けます。無料なので、韓国国内ではたくさんの視聴者に見てもらえると考えています。


 ただPPVについては、韓国と日本では全く状況が違います。韓国ではマネタイズの面から、PPVビジネスは成立していません。他の韓国の団体も、自社アカウントのYouTubeで流すなど、日本と比べるとマネタライズがうまくいっていないのだと思います。


 そもそも日本でもPPVビジネスが成り立っている団体は、実はRIZINしかないんですね。他の団体でもPPVで大きな収益をあげられておらず、ビジネスモデルは確立できていません。今回は韓国国内で、RIZINのプレゼンスを高めるいい機会になればということで、無料配信をします。将来的にはRIZIN の日本大会も含めて、韓国の放送局や配信プラットフォームにサブスクによって収益を保証してもらって配信するとか、そういう状況になるといいなと思っています。


――SOOPからは配信権料を得ているのですね。前回のインタビューではNetflixやAmazonプライム・ビデオなどの世界的なプラットフォームとも交渉を進めていくということでした。


 もちろん、それは並行して進めています。そういうワールドワイドな配信プラットフォームと向き合うことによって、世界規模での配信が実現していくでしょうから。今後も引き続きAmazonプライム・ビデオやNetflix、Huluといった世界にリーチしているプラットフォームと話し合っていきます。


(アイティメディア今野大一)



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