スマートフォンでゲームを楽しむ人が増え続ける中、「ゲーミングスマホ」という言葉をよく耳にするようになりました。そこで今回は、現在のゲーミングスマホの代表格である台湾ASUSの「ROG Phone 9 Pro」と、コストパフォーマンスに優れた中国Xiaomiの「POCO F7 Ultra」「POCO F7 Pro」を試用してみたいと思います。実際に使ってみると、これらの機種は全く方向性が異なっていて、ゲーミングスマホのすそ野が広がっていることが分かりました。
ゲーミングスマホとは、その名の通り「ゲームをプレイすることに特化したスマートフォン」です。一般的なスマホと比べると、以下のような特徴があります。
●ゲーミングスマホを名乗る製品の傾向
・最新の高性能プロセッサーを搭載している
|
|
・熱くなりにくい冷却システムを備えている
・大容量バッテリーで長時間プレイが可能
・画面の更新速度(リフレッシュレート)が高く、滑らかな映像表示ができる
・ゲーム専用の追加ボタンや設定機能がある
一般的なスマホは、電話やメール、SNS、写真撮影など様々な用途にバランスよく対応することを目指しています。一方、ゲーミングスマホはゲームプレイの体験を最高にすることを最優先に設計されています。それはスマホゲームでもビックタイトルになればなるほど、3Dモデルをガツガツと動かすからで、それはゲーム以外のスマホの用途では、そこまで求められていません。
|
|
例えば、一般的なスマホでは薄さやデザイン性を重視する傾向がありますが、ゲーミングスマホでは冷却性能を高めるために少し厚みがあったり、ゲーム操作がしやすいよう側面に追加ボタンが付いていたりします。
また画面のリフレッシュレート(更新速度)も大きな違い。一般的なスマホが60Hzや90Hz程度であるのに対し、ゲーミングスマホでは120Hz以上の高リフレッシュレートを採用し、よりなめらかな映像表示を実現しています。これは特に動きの速いアクションゲームやFPSに没入するのに大きなアドバンテージになります。
現在のゲーミングスマホ市場には、大きく分けて2つの傾向があります。一つは最高の性能と専用機能を備え、価格も高めの「ハイエンド型」(今回でいえばROG Phone 9 Pro)。もう一つは必要な性能は備えつつ価格を抑えた「コスパ重視型」(同じくPOCO F7 Pro)です。
●本格ゲーミングスマホとコスパ重視モデル
ROG Phone 9 Proは、ASUSが手がける本格ゲーミングスマホの最新モデルで、価格は18万9800円とかなりの値段。単に高性能という製品ではなく、専用の機能が充実しています。
|
|
ユニークなのは、ゲーム中の本体の発熱を抑える外付けクーラーユニットや、ドット絵でアニメーションを表示できる背面ディスプレイ「AniMe Vision(アニメビジョン)」でミニゲームまで楽しめること。さすが最高峰のゲーミングスマホです。
ちなみに、ROGという名前は「Republic of Gamers」の略で、「ゲームを楽しむすべての人のためのブランド」という意味があります。ASUSがゲーマー向け製品に冠するブランド名で、PCやモニターなど様々な製品ラインがあります。
一方のPOCO F7 Ultraは、Xiaomiのサブブランド「POCO」から登場した最上位モデルで、価格は9万9980円〜10万9800円。最新プロセッサーを搭載しながら10万円を切る価格が魅力です。
もう一つのPOCO F7 Proは、POCO F7 Ultraの弟分。価格は6万9980円〜7万9980円で、必要十分な性能と大容量バッテリーを備え、さらにコストパフォーマンスを高めたモデルです。
3機種のうち、ROG Phone 9 ProとPOCO F7 Ultraは最新のSoC「Snapdragon 8 Elite」を搭載しています。これは現在スマートフォンに搭載できる最高峰の処理性能を持つチップ。重いゲームも快適に動作します。
一方、POCO F7 Proは一世代前の「Snapdragon 8 Gen 3」を採用しています。とはいえ、このプロセッサーも非常に高性能で、昨年のフラッグシップモデルに搭載されていたもの。一般的なゲームであれば、ほとんど違いを感じることはないでしょう。
メモリ(RAM)は、ROG Phone 9 Proが16GB、POCO F7 Ultraが12GB/16GB、POCO F7 Proが12GBとなっています。メモリが多いほど複数のアプリを同時に動かしても快適に動作し、ゲームとチャットアプリなどを行き来する場合にもスムーズです。
●実際のゲームプレイと発熱テスト
性能を数値で比較できるAnTuTuベンチマークでは、ROG Phone 9 Proが約294万点、POCO F7 Ultraが約239万点を記録しています。POCO F7 Proのスコアは公表されていませんが、同じプロセッサーを搭載した他機種の結果から推測すると、200万点前後と考えられます。いずれも非常に高いスコアで、現在のスマホゲームであれば最高設定でも快適に動作するレベルです
実際のゲームプレイでは、3機種とも人気ゲーム「原神」などの重いゲームでも最高設定で快適に動作します。特にROG Phone 9 ProとPOCO F7 Ultraは、長時間プレイしても性能が落ちにくいのが特長です。
POCO F7 Ultraは特筆すべき点として、「VisionBoost D7」というグラフィック専用チップを搭載しており、フレーム補間機能によって60FPSのゲームを120FPSの滑らかさで表示できます。POCO F7 Proにも一部のゲームでフレーム補間機能はありますが、対応タイトルはF7 Ultraより限定的です。
今回、もっともスマホを物理的に熱くするゲームともいわれている「学園アイドルマスター」(以下、学マス)でプレイ時の発熱をテストしてみました。あえてグラフィック性能を品質画質「最高」、フレームレート60fpsで3機種ともプレイしてみたのです。プレイしたのは最初のプロデュースが終わるまでの10分弱。
結果は一目瞭然。POCO F7 Ultraは裏面のみが熱くなる程度でしたが、POCO F7 Proは本体全体(スクリーンまで)が熱くなりました。一方、ROG Phone 9 Proはほんのり暑くなる程度で済みました。発熱の度合いは、ROG<POCO F7 Ultra<POCO F7 Proの順番で、倍々で熱くなるという印象です。
この結果から、長時間のゲームプレイを考えると、冷却システムの優れたROG Phone 9 Proが最も安定した性能を発揮できることが分かります。POCO F7 Ultraも悪くありませんが、POCO F7 Proは長時間の高負荷ゲームでは発熱による性能低下が懸念されます。
●画面サイズとリフレッシュレートはゲーム体験を左右
画面サイズは、ROG Phone 9 Proが6.78インチとやや大きめ、POCO F7 UltraとF7 Proはともに6.67インチです。大きな画面はゲームの没入感を高めてくれます。
解像度については、POCO F7 UltraとF7 Proが2K(3200×1440ピクセル)と高精細なのに対し、ROG Phone 9 ProはFHD+(2400×1080ピクセル)にとどまっています。ただし、スマホの画面サイズでは解像度の違いはあまり目立たず、むしろバッテリー消費を抑える効果があります。実際、体感上で差異はほとんど感じられませんでした。
ゲーミングスマホの大きな特徴である高リフレッシュレート画面は、3機種すべてに搭載されています。特にROG Phone 9 Proは最大185Hzという驚異的な数値。POCO F7 UltraとF7 Proは120Hzとなっています。
リフレッシュレートが高いほど画面の動きが滑らかになり、特に動きの速いアクションゲームやFPSでは大きなアドバンテージになります。185Hzと120Hzの違いは、熟練したゲーマーでなければ体感しづらいかもしれませんが、60Hzの一般的なスマホと比べると、どの機種も格段に滑らかな表示が可能です。
●ゲーミングスマホならではの特別な機能
ROG Phone 9 Proの最大の特徴は、「AirTrigger」と呼ばれる超音波ボタンを側面に搭載していることです。これにより、物理ボタンがないのに、ゲームパッドのようなボタン操作が可能になり、特にFPSやアクションゲームでの操作性が向上します。物理的に押せるわけではないのにボタンとしてちゃんと機能するのは不思議な感覚で、また物理的ボタンではないというのは故障しにくい構造になっているといえます。
また、ROG Phone 9 Proには「AniMe Vision」という背面ディスプレイ機能があり、648個のLEDによって様々な画像や文字を表示できます。ゲーム中の通知やカスタマイズ要素として楽しめる機能です。ドット絵のような画面で遊ぶのは、無駄と言えば無駄ですが、ゲームの楽しさを追求するという点で、実にゲーミングスマホらしい機能です。なお、付属のスマホケースであれば、ドットの光はケースから透けて見えるので問題なく遊べます。
ソフトウェア面では、3機種ともゲーム体験を向上させる機能を搭載しています。ROG Phone 9 Proには「Game Genie」というゲーム中に設定を調整できる専用ツールがあり、POCO F7 UltraとF7 Proにも同様のゲームブースター機能があります。これはゲーム用の設定ができるという点もいいですが、スマホでゲームをやる際にゲームの邪魔するものをオフにする機能もあります。ゲームに熱中しているときにかかってくる電話なんてお互いに不幸しかありませんから、これはうれしい機能です。しかもこれらの機能、ゲームを始めると勝手に(許諾は必要ですが)作動してくれるのもありがたい限りです。
ゲーミングスマホにとって重要な冷却システムについては、ROG Phone 9 Proが最も優れています。内部に大型の冷却システムを搭載しているほか、別売りの「AeroActive Cooler X」を装着することで、さらに冷却効果を高めることができます。学マスの発熱テストでも明らかなように、POCO F7 UltraとF7 Proの冷却システムはROG Phone 9 Proには及びません。
特にPOCO F7 Proは長時間の高負荷ゲームでは発熱が顕著になります。ゲームを長時間楽しみたいのであれば、この点を重視して選ぶと良いでしょう。もちろん、熱問題はゲームの設定次第ではあります。ただ、せっかくなら高品質で楽しみたいというのも正直なところです。
●ゲーム以外の機能もチェック
ゲーミングスマホとはいえ、日常的に使うスマートフォンとしてカメラ性能も重要です。ROG Phone 9 ProとPOCO F7 Ultraは、メインカメラ5000万画素、超広角カメラ1300万画素、望遠カメラ3200万画素という3眼構成を採用しています。一方、POCO F7 Proは望遠カメラがなく、メインカメラ5000万画素と超広角カメラ800万画素の2眼構成です。
カメラ性能については、ROG Phone 9 Proが最も優れており、一般的なフラッグシップスマホと遜色ないレベル。POCO F7 Ultraは静止画よりも動画撮影に強みがあり、POCO F7 Proはエントリーモデルとしては十分な性能を持っています。ただ、いずれの機種も夜景のような状況では、やはりカメラが強いとされているスマホのような結果にはなりません。そこは用途が違うスマホなのだと割り切りはある程度必要です。
日本での利用を考えると、「おサイフケータイ」(Felica)対応も重要なポイントです。この点では、ROG Phone 9 Proのみが対応しており、POCO F7 UltraとF7 Proは非対応です。電子マネーやSuicaなどを頻繁に利用する方にとっては、ROG Phone 9 Proの方が便利でしょう。一方、おサイフケータイ機能が不要な方や、別のスマホやカードで代用できる方であれば、POCO F7 UltraやF7 Proでも問題ありません。
そして、ここまで記載していませんでしたが、ROG Phone 9 Proの一番すごいところは音の良さです。スマホから鳴っているとは思えないほどの音質と音圧があり、これはちょっとびっくりするレベルです。ROG Phone 9 Proは応答性も高いですから、特に音ゲー好きの人にはこれはたまらないでしょう。もちろん動画を見るにも最高です。
●まとめ
3機種を比較してきましたが、どれが「最良」というわけではなく、それぞれのニーズや予算に合わせて選ぶのが現実解です。
ROG Phone 9 Proは18万9800円と高価ですが、専用ゲーミング機能や冷却システム、おサイフケータイ対応など、他にはない特徴を備えています。ゲーム専用機として最高の体験を求める方、高負荷ゲームを長時間プレイしたい人に向いています。
POCO F7 Ultraは、ROG Phone 9 Proと同じSoCを搭載しながら、価格は半分近い9万9980円から10万9800円。専用ゲーミング機能は少ないものの、性能だけを見れば非常に高いコストパフォーマンスを誇ります。高性能を求めつつ予算を10万円以内に抑えたい方に適しています。
POCO F7 Proは、6万9980円から7万9980円と上の2機種に比べればお手頃。ゲームに必要十分な性能と大容量バッテリーを備えているため、コストパフォーマンス重視の人に向いています。
いずれの機種も、一般的なスマホと比べればゲームプレイにおいて大きなアドバンテージがあります。自分のゲームスタイルや予算に合わせて、最適な一台を選んでみてください。ゲーミングスマホというジャンルの中でも選択肢があるのはジャンルの成熟度を示しています。
もちろん、これらゲーミングスマホ日常使いのスマートフォンとしても十分な性能を持っています。特に処理性能の高さは、写真や動画の編集、複数アプリの同時使用など、様々な場面で快適さをもたらしてくれるでしょう。
スマートフォンのゲームはあまりやらないからゲーミングスマホは関係ないと考えるのは実にもったいないので、自分がスマホに求めていることを考えて、ゲーミングスマホも選択肢の一つと考える方が賢明です。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
YouTuberヒカル、結婚を報告(写真:ORICON NEWS)66
YouTuberヒカル、結婚を報告(写真:ORICON NEWS)66