チャンピオンズリーグ決勝の行方をインテルのサネッティ副会長に聞く いま注目する日本人選手は?

0

2025年05月30日 18:21  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

ハビエル・サネッティ(インテル副会長)インタビュー 後編

 インテルのハビエル・サネッティ副会長インタビュー後編。クラブのレジェンドである彼に、15年前のチャンピオンズリーグ優勝のことや、今回の決勝の見通し、今注目している日本人選手を聞いた。

>>前編「サネッティが語る今季のインテル、長友佑都、クラブW杯」

【15年前のCL優勝の思い出】

――ブエノスアイレスの粗野な港湾出身の無名選手が、クラブ史上最多出場記録と最多タイトル記録を塗り替え、2010年にはキャプテンとしてチャンピオンズリーグ(CL)の優勝カップを掲げました。あれ以来、イタリア勢の欧州王者は出ていませんが、CL制覇にはどんな記憶が残っていますか?

「あれからもう、15年が経つのですね。もちろん、それでも記憶は鮮明に残っています。あの時のチームは、ジョゼ・モウリーニョ監督のもと、全員が家族のように強い絆で結ばれていました。優勝後に彼がレアル・マドリードへ移ることが明らかになると、多くの選手たちが涙を流したことからもわかるように。

 バルセロナとの準決勝には、強烈な印象が残っています。ジョゼップ・グアルディオラ監督が統率した相手は、リオネル・メッシやズラタン・イブラヒモビッチ、シャビ、セルヒオ・ブスケツ、カルレス・プジョル、ダニエウ・アウベスら、錚々たるメンバーが揃う前年のCL優勝チームでした。インテルが勝つと思っていた人は、おそらくほとんどいませんでしたが、ホームでの第1戦をディエゴ・ミリートの大活躍(1得点、2アシスト)で3−1とモノにした。カンプ・ノウでの第2戦では、前半にチアゴ・モッタが退場となり、ひとり少ない状況になりましたが、長時間の相手の猛攻に耐え、なんとか失点を1に抑え、勝ち抜くことができました。

 サンティアゴ・ベルナベウでの決勝のピッチに足を踏み入れた時、このチームなら、絶対に優勝できると感じていました。相手はバイエルンだったというのに。そして実際に、ミリートの2ゴールで2−0の勝利を収めました。優勝後は最高に嬉しかった反面、さっき言ったようにモウリーニョ監督との別れに胸を痛めたことを覚えています。あれから15年が経ち、その間に私にもクラブにも色々なことが起こりましたが、こうしてクラブが再び欧州の頂点に立つチャンスを迎えていることを、心から喜んでいます」

【決勝はわずかなディテールが勝敗を分ける】

――では今週末にミュンヘンでキックオフを迎える今季のCL決勝、インテル対パリ・サンジェルマンの行方を占ってください。

「トップ中のトップレベルの決勝であり、今大会のベストチームのふたつが激突するので、わずかなディテールが勝敗を分けるのではないでしょうか。能力の差はほとんどなく、どちらも攻撃的にも守備的にも、うまく戦えるチームです。うちのシモーネ・インザーギ監督はこの4年間、見事な手腕を見せて、選手の心身のスタンダードを高め、技術と戦術も磨き上げてきた。2年前にはイスタンブールで開催されたCL決勝に辿り着きましたが、グアルディオラ監督が率いたマンチェスター・シティに初優勝を遂げられてしまった。

 その悔しさを糧にさらなるレベルアップを遂げ、今大会ではアーセナルやバイエルン、バルセロナを下してここまで来た。ソリッドな組織と決定力の高い2トップを身上とする強固なチームです。相手のパリ・サンジェルマンにも、似たようなところがありますね。キリアン・エムバペ、リオネル・メッシ、ネイマールといったスーパースターはいなくなりましたが、だからこそ、誰もがハードワークできる献身的なチームになっています。そして、すばらしいアタッカーもいる。ルイス・エンリケ監督の手腕には脱帽です」

――ずばり勝つのは?

「もちろんインテルです、と言いたいところですが、当日に少しでも状態がよく、ツキを味方にしたほうが優勝するでしょう」

――過去5年、チェルシーが2度目の欧州制覇を遂げ、マンチェスター・シティが宿願のCL優勝を果たしました。もし今季、パリ・サンジェルマンも初優勝したら、いよいよビリオネアやオイルマネー、国家ファンドに支えられた新興勢力の時代が到来するのでしょうか。インテルのような伝統的なビッグクラブとしては、この状況をどう見ていますか?

「時代の趨勢と言えるのかもしれませんね。われわれインテルだけでなく、レアル・マドリード、バイエルンのような伝統的なクラブも、そうした無限に近い資本に支えられた新たなビッグクラブの勢いを感じているはずです。とはいえ、我々には我々の強みがあるし、様々なものを駆使して対抗していくしかない。常にクリエイティブに考え、よいアイデアを用いて、トップレベルの熾烈な争いを生き抜いていくしかないのです」

【今、注目している日本人選手は?】

――近年、そんなトップレベルにも日本人選手が増えてきています。長友佑都選手とプレーした経験もあるあなたは、日本人選手にどんな印象を持っていますか?

「まさに近年、日本のフットボールが充実の一途を辿っているように感じています。全体的なレベルの高まりは、長足の進歩と言えるものですね。直近の2022年W杯では、ドイツとスペインを破って世界中にサプライズを提供しました。今では、欧州のトップクラブでプレーする日本人選手も増えているし、誰もが周囲に完璧なプロフェッショナルと認められている。今後もW杯で日本と対戦して苦しむ強豪は、後を絶たないはずです」

――サネッティ副会長が個人的に注目している日本人選手はいますか?

「ブライトンのミトマ(三笘薫)は大好きです。あのドリブルは、本当に惚れ惚れしますね。それからレアル・ソシエダのクボ(久保建英)にも、ずっと注目しています。彼は少年時代からとてつもなく大きな期待を背負い、着実に成長を遂げている。今季はソシエダで孤軍奮闘しているような印象を受けました。

 私の現役時代で言えば、ユウト(長友)はもちろん、ナカタ(中田英寿)も輝いていました。私が実際に見た日本人選手では、彼が一番だったと思う。それからナカムラ(中村俊輔)の凄まじいフリーキックは覚えていますし、日本のパイオニア、ミウラ(三浦知良)のことも忘れていません」
(おわり)

ハビエル・サネッティ 
Javier Zanetti/1973年8月10日生まれ。アルゼンチン・ブエノスアイレス出身。タジェレス、バンフィエルドを経て1995年にインテルに移籍。2014年まで19シーズンも在籍しセリエA615試合出場の鉄人。主に右サイドバックや中盤でプレーし、数々のタイトル獲得に貢献した。アルゼンチン代表でも長くプレーし、国際Aマッチ143試合出場。2014年の現役引退後、現在はインテルの副会長を務めている。

セルヒオ・レビンスキー 
Sergio Levinsky/アルゼンチン出身。ブエノスアイレス大学社会科学学部を卒業。バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号も取得。1982年より記者として活動を始め、ワールドカップは1986年メキシコW杯よりすべての大会を取材。アルゼンチン国内の各種メディアで活動するほか、ヨーロッパのスポーツメディアや日本のメディアにも記事を寄稿している。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定