自分の血液型を知らない人が増加? 産後すぐに知らされなくなったのが要因か

10

2025年05月30日 20:51  All About

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

All About

【小児科医が解説】A型・O型の献血協力が広く呼び掛けられていますが、自分が何型か知らない人や、自分の子の血液型が分からないという人は、現在では珍しくありません。なぜ、血液型は出産後すぐに知らされなくなったのか、解説します。
医療を支える上で欠かせない献血。特定の血液型は不足傾向にあり、安定的な血液供給のために、より多くの人の協力が不可欠な状況です。日本赤十字社の関東甲信越ブロックのサイトによると、特にA型とO型の血液が不足しており、さまざまなキャンペーンを通じて献血への協力が呼び掛けられています。

一方で、近年では「自分が何型なのか知らない」という人も珍しくありません。以前は、出産後すぐに親に伝えられていた子どもの血液型は、なぜ知らされなくなったのでしょうか? 今回は血液型に関する、意外と知られていない事実を、分かりやすく解説します。

「出生時の血液型は変わることがある」 血液型分類のしくみ

「出生時の血液型」は、「本来の血液型」と違うことがあります。産後すぐに子どもの血液型が調べられなくなったのは、そのためです。

そもそも血液型は、「赤血球の違い」で判定されます。現在、日本国内で一般的な「ABO式血液型」の分類法が発見されたのは1900年のことです。オーストリアの学者であるLandsteiner博士が、ヒトの赤血球と、血液の液体部分である血清を使い、赤血球が集まって塊を作るかどうかで4つの型に分ける分類法を見つけました。

当時はA、B、「C」、ABの4つでしたが、現在ではA型、B型、AB型、O型に分類されています。

少し専門的な話になりますが、赤血球の表面にあるのは「A型抗原」と「B型抗原」で、液体部分の血清にあるのは「抗A抗体」と「抗B抗体」です。

ABO式血液型の血液型判定試験では、「おもて試験」と「うら試験」の2つが行われ、おもて試験では赤血球の状態、うら試験では血清状態を見ます。この抗A抗体と抗B抗体は、「IgM」と呼ばれる免疫グロブリンというものです。

そしてIgMは生まれてから作られるため、新生児や生後6カ月程度までの乳児では、血清中に抗A抗体も抗B抗体もありません。したがってこの時期には、ABO型血液型を調べる上での「うら試験」ができないのです。

おもて試験でも正確とは言えますが、おもて試験だけできてもダブルチェックができないため、生まれた時に調べた血液型が1歳になってから調べると変わってしまう可能性があります。

血液型を知らなくても大丈夫? 緊急時は必ず行われる血液型検査

血液型は親子で遺伝します。そのため誤った血液型が伝えられると、親子関係が疑われてしまうことも起こりますし、これは親御さんの精神面でも望ましいことではありません。いずれにしても不確かな情報にしかなりませんので、現在では緊急時を除いて、産後すぐに子どもの血液型を調べることはなくなりました。

一方で、病気や事故などの輸血が必要になるような緊急時においては、必ずすぐに血液型の確認が行われます。これは、血液型の自己申告があってもなくても、必ず行う検査です。「血液型が分からないせいで、適切な医療がすぐに受けられなかった」ということはありませんので、ご安心ください。

清益 功浩プロフィール

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。
(文:清益 功浩(医師))

このニュースに関するつぶやき

  • 「これだからゆとりは」とB型が重なったら地獄やねんぞw
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(9件)

前日のランキングへ

ニュース設定