「スクープ」の赤旗に「選挙」の公明 知られざる“政党機関紙”の実態 「紙の意味は正直…」各党の生き残り戦略【edge23】

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2025年05月31日 06:04  TBS NEWS DIG

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政党が発行する「機関紙」は党の主張を広める重要なツールだが、その実態はあまり知られていない。激しい選挙報道に定評がある「公明新聞」、約300人もの記者を擁する「しんぶん赤旗」などがある一方、国民民主党の関係者は「紙を発行する意味は正直分からない」とも語る。各党の機関紙には、発行頻度や部数、記者の数、そして収入源としての重要性に大きな違いがある。党の収入における機関紙の位置づけから、厳しい時代を迎えた機関紙の現状と将来像まで、知られざる政党機関紙の世界に迫る。

【写真で見る】候補者の顔が“ドアップ”に 選挙時の「公明新聞」の一面

「激しい選挙報道」の公明新聞 候補者の顔がドアップで「身が引き締まる」効果も

公明党の機関紙「公明新聞」は、日曜日も含めて毎日発行される日刊紙だ。公称部数は約80万部で、その制作に携わる記者数は約100人にも及ぶ。TBSの政治部記者が20〜30人程度であることと比較すると、その規模の大きさが際立つ。

記事は、ルビを多用し「分かりやすい紙面作り」を心がけているが、公明新聞の最大の特徴は「激しい選挙報道」だ。選挙直前になると、接戦が予想される選挙区の候補者の顔写真を一面に大きく掲載する。特徴的なのは、候補者の「表情」だ。緊張感あふれる厳しい表情の写真をあえて選び、「勝敗決する重大局面」「危うし」「最後は必ず勝つ」など、一般的な新聞では見られないような強い言葉とともに掲載される。

この選挙報道について複数の公明党議員に取材したところ、「普段は地味な紙面づくりだが、最新の情勢をもとにどこの選挙区を重点的に報道するか考えられているので、とても身が引き締まる」との声が聞かれた。一方、インターネット上では「怖い」との反応も相次いでおり、今年の都議選や参議院選挙でこの手法を続けるかどうかは未定だという。

公明新聞は、所属議員に対して、苦言を呈することもある。2021年、新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言中に高級クラブに深夜滞在した遠山清彦元議員の問題が発覚した際には、翌日の公明新聞のコラム「北斗七星」で「『大衆と共に』という公明党の立党精神を離れて公明党議員は存在できない」「何があってもこの立党精神を寸分違わず継承しなければいけない」と、直接的ではないが遠回しに苦言を呈した。

「公明新聞」は、創価学会の「聖教新聞」とは別物である。「聖教新聞」は創価学会の機関紙であるのに対し、「公明新聞」は公明党の日々の活動を紹介するための新聞となっている。

「紙を発行する意味は正直分からない」国民民主PRESS 

野党の機関紙だが、立憲民主党の機関紙は月1回の発行で公称部数3万部、国民民主党の「国民民主PRESS」は2ヶ月に1回の発行で公称部数わずか4000部だ。

両党とも専門の記者は置かず、広報担当の職員が企画・執筆を担当している。特に国民民主党は近年、YouTube等での発信力を強化しており、「紙を発行する意味は正直分からない」と率直に語る党関係者もいる。

一方、自民党の「自由民主」は週1回の発行で68万部の公称部数を持つ。記者は5人と少ないが、紙面には地方議員の「こだわりの一品」を紹介するコーナーや国会議員の好きな料理を紹介する「推しメシ」コーナーなど、地方重視の特色ある記事が並ぶ。

「スクープ力」が売りのしんぶん赤旗 満塁「弾」は使わない“独自ルール”と読者数減

日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、日刊紙と日曜版を合わせて読者数約85万を誇る。記者数は約300人と、公明新聞の3倍の数だ。記者になるための条件に「共産党員であること」とあり、記者は全員共産党員ということになる。

しんぶん赤旗の大きな特徴は、その「文体」にある。一般紙が「だ・である調」を基本とするのに対し、赤旗の記事は「です・ます調」で書かれている。また、米・ワシントンなど海外にも記者を駐在させており、国際ニュースの独自取材にも力を入れている。

しんぶん赤旗のもう一つの特徴は「スクープ力」だ。桜を見る会問題や自民党のパーティー券をめぐる裏金問題などを先駆けて報じ、政治を大きく動かしてきた実績を持つ。これらの調査報道は、資料を徹底的に読み込む少数の記者チームによって支えられている。日本ジャーナリスト会議の賞も受賞するなど、その報道姿勢は一定の評価を得ている。

しんぶん赤旗には、他の新聞にはない独自ルールも存在する。例えば野球の「満塁ホームラン」を一般紙は「満塁弾」と表現するが、赤旗ではこの表現を使わない。理由は「弾」という字が砲弾を連想させ、戦争を想起させるからだという。

また、しんぶん赤旗は原則として書籍以外の企業広告を掲載しない。企業の影響力によって報道が左右されることを避けるためだという。この姿勢は新聞としての矜持を示すものだが、財政面では厳しい状況を生み出している。

スクープが出ることが読者数増加に「直結しない」という厳しい現状もある。1980年には約355万人いた読者数は現在約85万人まで減少。ピーク時の4分の1だ。共産党は現在「危機に直面している」ということで、しんぶん赤旗発行のために10億円の寄付を募っており、5月時点で5億円以上が集まったという。しかし、これは“応急措置”にすぎず、根本的な問題解決には繋がっていない。共産党は政党交付金を受け取っておらず、党収入の大部分を赤旗からの収入に依存しているため、読者数の減少は党の存続にも関わる「死活問題」となっている。

政党の収入と「機関紙」の関係性 今後のメディア戦略に注目

政党収入における機関紙の位置づけも各党で大きく異なる。特に共産党と公明党は事業収入(主に機関紙収入)の比率が高く、共産党にとっては政党交付金を受け取らない分、赤旗からの収入は「死活問題」となっている。

党員や支持者が高齢化する中で、各党は電子版やネットでの収益拡大に活路を見出そうとしている。自民党の河野太郎元広報本部長はインターネット版を刷新し、公明党も最近YouTubeで代表の1日密着動画を配信するなど新たな試みに挑戦している。しかし、共産党の電子版読者は1万人弱にとどまり、他党も苦戦している状況だ。

国民民主党はYouTubeでの発信に成功しているが、他の政党はまだそこまでの成果を上げられていない。今後の選挙戦では、各党がどのようなメディア戦略を展開するのか、機関紙の役割はどう変化していくのか、注目される。

〈取材〉TBSテレビ政治部 島本雄太

このニュースに関するつぶやき

  • 発行部数と費用対効果が一番いいのは自由民主になりますね。他は総じてゴミですよ。
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