
また、社会保険労務士・行政書士の小西道代さんから、ハラスメントに遭遇したときにどうしたらいいのか、解決への道筋をアドバイスいただきました。
まずは、自分も簡単に「加害者」になってしまいそうなハラスメントの数々です。
ホメハラ
「褒めるハラスメントです。みんながいる前で執拗に褒められるとすごく恥ずかしい気持ちになってくるので本当にやめてほしいです(40代・男性)」ありがとう言わないハラスメント
「仕事中に『ちょっと』と呼ばれて、こちらの作業の手を止めてその方の席に行ってパソコンの操作方法を教えてあげて問題を解決したのに、『ふんふんふん』と相槌のみで感謝の言葉なしでした。何度もこれを繰り返されると本当に嫌な気分になります(50代・女性)」発言独占ハラスメント
「同僚が常に自分の仕事の話ばかりして、他の人の話を全く聞かない『独占ハラスメント』を感じました。みんなの意見や時間を尊重せず、会話が一方通行で、非常に不快でした(30代・女性)」居眠りハラスメント
「隣の島のおばさんの『居眠りハラスメント』にいつもイライラします。ひどい時は始業のチャイムと同時にウトウトし始め、周りの人間の気分を害し、ストレスの元になっています。居眠りを気にしだすとイライラして仕事にならないため、パソコンのディスプレイの位置を見直し、視界に入らないよう工夫しています(50代・男性)」爪切りハラスメント
「職場で爪を切る人がいました。毎月きまった日に爪を切る人がいて、靴下を脱いで丁寧に1つひとつ切っていました。そのような育ち方をしているのだろうと思い、変に言って絡まれるのも嫌なので放っておきました(50代・女)」そして、本人たちは「楽しいこと」だと思っているところが厄介なハラスメントもあります。
なかよしハラスメント
「お昼くらいは1人になりたいのに、『仲良くするために一緒に食べなあかん』と強制されたのが嫌でした。自分の意見を言っても面倒なことになりそうなので黙って従っています(20代・女性)」おしゃべりハラスメント
「職場で後輩が頻繁に話しかけてきて、集中力を保つのが難しい状況を経験しました。断るのも気まずく、適切なタイミングで話を切り上げる方法を模索しましたが、ストレスを感じることもありました(20代・女性)」「私語ハラスメントが嫌でした。『〇〇のラーメン屋が美味かった』『〇〇の車が良い車乗っているよなぁ?』などと話しかけてきて、業務を覚えているこっちの身にもなって欲しい、と感じたので、とにかく無視をする! 相手にすると、余計にうるさくなるので、適当に相づちを打ち、興味のない素振りをしていた(30代・女性)」
「質問攻めハラスメントですね。旅行に行って、手土産を持って出社すると『どこに、誰と行ったの?』とか、質問攻めにあいます。とりあえず、答えられる範囲で答えますが、答えにくい質問には『勘弁してください』とだけ伝えて逃げています(20代・女性)」
宴会ハラスメント
「宴会ハラスメント。とにもかくにも宴会が好きですぐに飲み会を開催して、飲み会への参加を強要してくる人がいた(30代・女性)」「行きたくないのに忘年会の参加を強要されて嫌でした。行っても面白くなかったです。最初は仕方なしに参加していましたが、家を引っ越してから会社が遠くなったので、それを理由に断っていました(50代・女性)」
「あまり飲み会に誘わないでほしい。オンライン飲み会の方が気楽だと思ってしまうことがある。『体調不良、予定が入りそう』など理由を説明した上でできるだけ飲み会は参加せずに、チャットなどによるツールを活用してコミュニケーションを取っている(20代・女性)」
さらに、ハラスメントは細分化されていきます。
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大谷ハラスメント
「野球、大谷ハラスメント。まったく野球に興味がないので話題を振られても答えに困る。毎日、誰かしらに話しかけられて大谷選手に罪はないが、嫌な気分(50代・女性)」甲子園ハラスメント
「甲子園の時期に見ている前提で話しかけてきて見ていないと言うとおもしろさをアピールするハラスメント。夏になると毎年湧くので、見ていないと告げてスルーするしか対策できていない(40代・男性)」ヨン様ハラスメント
「同じ部署にいわゆるお局と言われるタイプのだいぶ年上の女性がいたのですが、その当時流行っていた韓流(ヨン様などの時代)にハマって月に一度ぐらいの頻度で韓国に通い始めて、その方の都合だけでお休み取るので、周りの人達は先に休みの予定を入れていても変更させられる始末でほんとにストレスでした(50代・女性)」【専門家アドバイス】一歩立ち止まって、相手のことを考えてみる
ハラスメントもだいぶ細分化されているというところをご紹介しましたが、社会保険労務士の小西道代さんに、自分が加害者にならないための心構えも含めてハラスメントについて教えていただきました。「皆さんの回答を見ていると、うまくスルーしたり、相手を不快にさせない程度に切り返していたり、職場の人間関係を円滑にするためにしっかりと配慮されているなーと感心します。
職場は仕事をするところだけれど、生まれも育ちも年代も違う人たちが集まる空間でもあります。だからこそ、ちょっとした言葉や態度が相手を傷つけることがあり、それぞれの価値観や考え方の違いを受け止めながら、相手を思いやる姿勢が大切です。
男女雇用機会均等法の改正により、2007年に『セクシュアルハラスメント(セクハラ)』の防止対策が会社に義務づけられました。その後も、2017年には『マタニティハラスメント(マタハラ)』、2020年以降は『パワーハラスメント(パワハラ)』の防止対策が順次法制化され、会社には包括的なハラスメント対策が求められるようになっています。
これらの法制化によって、『ハラスメント』という言葉が広まり、本当に苦しんでいる人たちが声を上げやすい風潮が生まれたのは大きな前進です。その一方で、何を言ってもハラスメント(ハラスメントハラスメント=ハラハラ)と受け取られてしまって、適切な指導や教育ができない……という声も聞かれます。
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最後に、答えてくれた方も笑ってしまったハラスメントで締めくくりましょう。
テレビチャンネル権ハラスメント
「昼休憩の1時間テレビが点くのですがチャンネル権は課長にあるらしく、課長の離席中に誰かがチャンネルを変えたら機嫌が悪くなり、誰が見ていようとも課長はテレビを消していました。『何て大人げないんだ』と感じ、思わずくすくすと笑ってしまいました(40代・女性)」<調査概要>
職場で体験したハラスメントに関するアンケート
調査期間:2025年2月25日〜3月27日
調査対象:全国10〜70代の男女150人
小西道代(こにし みちよ)プロフィール
行政書士法人グローアップ代表。社会保険労務士法人トップアンドコア役員。大学卒業後、日本マクドナルドに入社。幅広い年齢層と共に働くことで、法律や制度だけではない労務管理・組織運営に興味を持ち、弁護士事務所等で経験を積む。自身も喫茶店を経営した経験から、労務トラブル予防の労務相談を得意とする。All About「労務管理」ガイド。(文:小西 道代)