
グレープフルーツジュースの成分が問題? 注意すべき薬がある理由
グレープフルーツジュースには、「フラノクマリン類」という成分が含まれています。この成分は、小腸の細胞にある酵素「CYP3A4(シップスリーエーフォー)」の働きを妨げる働きがあります。そのため、薬の分解(代謝)が遅れ、薬が通常より長く・多く、体内に残ってしまうのです。結果として、薬の効果や副作用が強く現れたり、思わぬ反応が出たりするリスクが生じます。
特に、高血圧の治療薬として使われる「ニフェジピン」や「ニカルジピン」などのカルシウム拮抗薬は、この影響で血圧が下がりすぎてしまうリスクがよく知られています。
糖尿病の治療薬も無関係ではありません。糖尿病治療薬の中で特に注意が必要なのは、「グリニド系」と呼ばれる速効型インスリン分泌促進薬です。具体的には、「ナテグリニド〈ファスティック〉」「ミチグリニド〈グルファスト〉」などの薬です。
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また、DPP-4阻害薬の一部である「アナグリプチン」なども、CYP3A4を介して代謝される可能性があるとされています。ただし、グリニド系ほど明確な影響は確認されていません。しかし、グレープフルーツジュースを日常的に飲む習慣のある方は注意が必要です。
一方で、メトホルミン(ビグアナイド薬)、SGLT2阻害薬、注射薬を含むGLP-1受容体作動薬などは、主にCYP3A4以外の経路で代謝されます。そのため、グレープフルーツジュースによる相互作用は少ないとされています。
薬を飲んでいる人が注意すべき点
ここで大切なのは、「あらゆる薬、全ての糖尿病薬が、グレープフルーツジュースと一緒に飲むと危険なわけではないが、一部の薬では確かに注意が必要である」という点です。また、グレープフルーツの品種や製法(100%ジュース、生の果物、加工食品など)によってもフラノクマリン類の含有量は異なり、影響の程度にも差があります。さらに、グレープフルーツに似た成分を含む柑橘類でも、同様の注意が必要です。具体的には、セビルオレンジ、スウィーティー、ポメロなどは、グレープフルーツと同様の成分を含みます。一方で同じ柑橘類でも、温州みかん、レモン、カボスなどはCYP3A4を阻害する成分を含みませんので、問題ありません。
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そして、どちらに該当するにせよ、薬の内服には基本的にジュースではなく「水」を使うことが大切です。糖尿病治療の観点からは、果物ジュースは糖分が多く吸収も早いため、血糖値を急上昇させやすい飲み物です。
薬の効果や安全性のためはもちろん、糖尿病のコントロールのためにも、グレープフルーツジュースで薬を飲むのは避け、必ず水で服用するようにしましょう。
荒牧 昌信プロフィール
日本内科学会総合内科専門医。「やさしい言葉とわかりやすい説明」をモットーに、クリニック院長として外来診療に従事。糖尿病・生活習慣病に関するセミナー・講演会も多数。ひとりでも多くの人が健康的な生活を送れるよう、役立つ医療情報を発信中。(文:荒牧 昌信(医師))
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