見た目はシンプル…秘密は一体どこに!? 手品のようにスルっと着脱できる「キーリング」の驚きの正体

0

2025年05月31日 20:50  All About

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

All About

キーリングへ鍵などを通すのは結構大変ですが、その面倒を解決してくれるのが、WAVECLIPSの「スマートキーリング」です。するりと手品のように鍵をリングに通せる秘密を、開発者の方に伺いました。面白いと思ったら、まず使ってみてください。驚きますよ。
WAVECLIPS「SMART KEY RING(スマートキーリング)」1980円(税込)。この写真のように、少し大きな外径30mmのリング1個と、小ぶりの外径23.5mmのリング3個がセットになっている

WAVECLIPSの「SMART KEY RING(以下、スマートキーリング)」は、おそらく今、最も楽に着脱できるキーリングの1つです。何より、着脱時に爪を痛めることがありません。

そして、基本的にリングが閉じているので、バッグなどに付けていて知らないうちに外れていたといったことも起こりにくい構造になっています。それでいて、見た目はとてもシンプル。見ただけでは、そのすごさが分かりにくいほど、ちょっとおしゃれなリングという感じのデザインです。

おしゃれなリングに見える「スマートキーリング」の正体は特殊なバネ

「これ、キーリングとして売っていますが、実は“バネ”なんです。弊社では『スクロウェーブスプリング』という商品名で扱っていますが、一般的には『コイルドウェーブスプリング』と呼ばれているアメリカ生まれのバネです。

主に工業用として使われている波形圧縮バネで、新幹線のブレーキや航空宇宙機器の部品などで使われているものです」と、MAENIの斉藤出さん。

MAENIは世界でも珍しいコイルドウェーブスプリングを専門に製造しているメーカーで、その技術を応用し、BtoCの製品を作るブランドとして立ち上げたのがWAVECLIPS。そのブランドを担当しているのが、今回取材に応じてくださった斉藤さんです。

コイルドウェーブスプリングは、今から60年以上前にアメリカで発明されたものです。すでに特許が切れているためどのメーカーでも作れるのに、世界的に作っているメーカーが少ないのは、その製造が手間も技術も必要な難しいものだからだそうです。
コイルドウェーブスプリングの構造。こんなふうに、波打つ平たい板が部分的に上下で接している

「普通の渦巻き状に巻かれているバネは丸い金属の棒を巻いて作るのですが、コイルドウェーブスプリングは平たい棒を曲げながら巻いて作られています。そして、その巻いている一部分が上下で接するようになっています。

つまり、細い板が波打つような形で巻かれているわけです。なので、専用の機械がないとなかなか作れませんし、波打っている部分が部分的に接するように加工するのも難しいんです」と斉藤さん。

コイルドウェーブスプリングで生活を便利にしようという試み

コイルドウェーブスプリングのバネの機能を使ったカードスタンド。ミュージアムショップなどで販売していたが、現在は販売終了している

しかし、この特殊な形状がバネとして面白い特性を持ったものになるわけです。通常のバネは、押しても引いても、元の形に戻ろうとする力が働きますが、コイルドウェーブスプリングは、押す方向には反発力が生まれますが、引っ張ると簡単に伸びてしまうという特性があるのです。

ただ、押す方向に関しては、従来のバネと同じ力を約半分のサイズで実現することができます。

また、丸い棒を平らに延ばし、火入れして加工するので、剛性が高いことも特徴。スペースがないところで活躍する強じんなバネなので、新幹線のブレーキや車のミッションなどに使われています。

この、剛性の高さと、弱い力で引っ張れるという部分に目を付けて開発されたのが、この「スマートキーリング」。本来はバネなのですが、それを単にリングとして使うという発想の転換が素晴らしいのです。実際、よく思いついたなと感心します。

「このバネで別事業を始めようという話が持ち上がったのは10年ほど前でした。最初はバネの応用製品として、ヨーロッパ製の折り畳み自転車のサスペンションを交換部品として作ったんです。

自転車に元々付いていたサスペンションが樹脂製で劣化しやすかったので、剛性の高いコイルドウェーブスプリングで作ったわけです。これがSNSなどで拡散されてヒットしたのが始まりでした」と斉藤さん。

その後、ポストカードなどを挟んで立てておけるカードホルダー(販売終了)や、車のダッシュボードに付けて駐車券などを挟んでおくグッズなどを作った斉藤さん。前者は美術館のミュージアムショップやホテルなどで扱ってもらい、後者は、今もイエローハットのオリジナル商品として販売されているそうです。

ただこれらは、先行商品として通常のバネで作られたカードスタンドや名刺立てもあるように、あくまでもバネの構造をそのまま使った製品です。

説明は難しいが、試してみると一発で分かる不思議なキーリングの誕生

こんなふうに、閉じている部分が少ない力で開くので、鍵を隙間に差し込むだけで、簡単に穴にリングが通る

「たまたま友人と話していたとき、キーリングに鍵を付けるのはいつも苦労すると聞いて、もしかしたら、コイルドウェーブスプリングになら簡単に鍵が通せるのではないかと思ったんです」と斉藤さん。

実際に試してみると、スルスルと簡単に鍵が通って自分でも驚いたそうです。そこで、試作品を作って展示会に出すと、これがテレビなどでも取り上げられてヒット商品になりました。

使い方は本当に簡単で、リングにある隙間に鍵を差し込んで、そのままぐるぐるとリングを回すだけ。いつの間にか鍵の穴がリングに通っているのです。外すときは、リングの端を持ち上げると簡単にリングが開くので、そこから鍵を取り出します。

ただそれだけなのですが、実際にやってみると、いつの間にか鍵がリングに付いていることにも、とても簡単に外せることにも、かなりビックリします。テレビで取り上げられたときに、所ジョージさんが「世の中のキーリングが全部これになればいいのに」とおっしゃったのも当然という感じなのです。
簡単に着脱できるので、チャームだけでなくツール類も付けておけるのが面白いのだ

「ただ見ただけでは分からないし、単に『簡単に着脱できるキーリングです』と説明しただけでも伝わりにくいんですよ。ギフトショーなどの展示会でブースに並べていても、『知恵の輪かな?』といった反応で」と斉藤さんは苦笑いします。

しっかりと閉じるのに、簡単に開くというコイルドウェーブスプリングの性質を、バネではなくキーリングに使うという発想の転換は、意外過ぎて「実はバネなんです」と言っても伝わらないのでしょう。

ただ。説明を聞くと納得できるしビックリするし、しかも手にしたその瞬間から便利に使うことができるのです。そういう製品は、なかなかありません。

筆者は友人に1個あげたのですが、彼はその場で自分のキーホルダーに付いていたキーリングをスマートキーリングに変えて喜んでいました。

着脱しやすいキーリングというのは、「スマートキーリング」だけではありません。筆者もこれまでに、いくつかの製品を試したことがあります。また、カラビナのような、リングではないけれど簡単に着脱できる構造もあります。

それらには一長一短ありますが、個人的には「スマートキーリング」の構造やデザインのシンプルさが気に入っています。問題の解決の方法が、それこそ「スマート」だと感じるのです。とはいえ、実際に触ってみないとなかなか伝わりにくい製品なので、一度使ってみてもらえればと思っています。

納富 廉邦プロフィール

文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。
(文:納富 廉邦(ライター))

    ランキングトレンド

    前日のランキングへ

    ニュース設定