中国湖北省にある三峡ダム=5月21日 【北京時事】中国が巨大ダムの建設に力を入れている。2024年にはチベット自治区に世界最大のダムを造る方針を決定。電源開発や治水対策に加え、国威発揚の狙いもあるとみられ、今後も整備を加速する構えだ。
「洪水も停電もほぼゼロになった」。09年に湖北省宜昌市に完成した三峡ダムを管理する国有企業の担当者はこう胸を張った。ダムは長江をせき止めて建設された世界最大の水力発電所用で、地元政府幹部によると、完成後は長江の水かさが増したことで上流への大型船航行が可能になり、地域経済が大きく発展した。幹部は「ダムは中国の誇りだ」とアピールした。
中国メディアによると、チベットに建設予定のダムは30年代に完成する見通しで、発電能力は三峡ダムの3倍。中国の電力需要は今後も伸びると予想され、国内では「巨大ダムの整備は合理的」(専門家)といった声が強い。習近平指導部はエネルギー安全保障や地球温暖化対策の観点からも、水力を含む自然エネルギーの普及を急いでいる。
ただ、三峡ダムの完成に伴って長江流域では多くの集落や史跡が水没し、公式発表で131万人が移住を強いられた。チベットのダム建設では、下流に位置するインドやバングラデシュが中国に水資源をコントロールされると反発している。
英BBC放送は、チベットのダム建設費が三峡ダムを大きく上回る1兆元(約20兆円)に達する可能性があると伝えた。一方、人口の希薄なチベットは電力需要が少なく、「中国は安保上の理由でダムを整備しようとしている」(専門家)との見方も上がっている。

三峡ダムの完成に伴って移住した人が暮らす集合住宅=5月21日、中国湖北省