ラジオで復興後押し=住民有志、臨時FM局開設へ―女川からノウハウ・石川

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2025年06月01日 19:31  時事通信社

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時事通信社

臨時災害放送局の開設に向けた研修で宮城県女川町を訪れた町野復興プロジェクト実行委員会のメンバーら=5月16日、同町
 能登半島地震と豪雨災害により甚大な被害を受けた石川県輪島市の町野町地区で、住民らの有志が臨時災害放送局の開設に向け準備を進めている。「復興を後押しする放送を」。東日本大震災の後、約5年間にわたり放送を続けた宮城県女川町の団体からノウハウと器材を受け継ぎ、6月中旬の開局を目指す。

 災害FM局「まちのラジオ」を運営するのは「町野復興プロジェクト(町プロ)実行委員会」のメンバーだ。2月に受信状況の調査も兼ねて、1日限りの試験放送を実施。5月中旬にはメンバー6人が研修のため女川町を訪れ、「オナガワエフエム」のスタジオから3日間、1時間ずつの模擬放送に挑戦した。

 「ただ今開局準備中、まちのラジオ『まちのWA!』。ラジオの前のあなたと輪をつないでいきます」。慣れない器材を扱いながら、聞き手に伝わる話し方を模索するメンバー。大震災後の放送でパーソナリティーを務めた佐藤敏郎さん(61)からは「マイクの先に聞いている人がいる。みんなで一緒に(番組を)作る意識が大事」とアドバイスを受けていた。

 模擬放送を終えた山崎瑞稀さん(34)は「緊張したが、みんなでフォローし合いながら放送できて楽しかった」と笑顔。豪雨災害で姉美紀さん=当時(31)=を失った中山真さん(29)は「好きなことができなかった姉の分までラジオを頑張りたい。道半ばだが、諦めずに復興を頑張っていることを全国の人に伝えたい」と力を込めた。

 輪島市などの奥能登地域は複雑な地形のため電波が届きにくく、住民の多くはケーブルテレビなどを使っていたが、昨年の地震や豪雨により関連施設や中継局が被災。避難所や炊き出し、物資の配布といった情報の入手が困難になった上、住民に高齢者が多く、自治体などがSNSで発信する情報も届きにくかった。

 そこで、情報発信や地域活性化の手段として災害FMに着目した。町プロ実行委員長の山下祐介さん(39)は「いろいろな人に情報が届く環境を作りたい」と意気込む。

 開局準備を支援するオナガワエフエムは、大震災後に臨時災害FMを放送。その経験を基に、2016年の熊本地震などでも開局準備や運営を支援してきた。プロデューサーの大嶋智博さん(51)は「女川で今までやってきたことを『まちのラジオ』に託す気持ち。地域の情報を集め、自分たちの言葉で伝える方法を身に付けて、町野の人を元気にする放送をしてほしい」とエールを送る。

 FM局の開設や運営に対する公的補助はないため、町プロ実行委では運営費などの資金協力を募っている。詳細は「まちのラジオ」のウェブサイトまで。 

臨時災害放送局開設に向けた研修に臨む中山真さん(左)と、東日本大震災でパーソナリティーを務めた佐藤敏郎さん(右)=5月16日、宮城県女川町
臨時災害放送局開設に向けた研修に臨む中山真さん(左)と、東日本大震災でパーソナリティーを務めた佐藤敏郎さん(右)=5月16日、宮城県女川町


臨時災害放送局の開設に向けた研修に臨む町野復興プロジェクト実行委員会のメンバーら=5月16日、宮城県女川町
臨時災害放送局の開設に向けた研修に臨む町野復興プロジェクト実行委員会のメンバーら=5月16日、宮城県女川町
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