
2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が「生涯独身」に? 「結婚しない」生き方が普通の時代がやってくるといいます。とはいえ、人は一人で生まれて一人で死んでいくもの。独身で楽しく健康に暮らしてきた岩田明子さんに、元気の秘訣などを聞きました!
老後の方向性が定まったら安心できた
「恋愛よりも仕事が最優先でとにかく結婚運には恵まれませんでした」
こう話すのは元NHK政治部記者で、現在はフリージャーナリストの岩田明子さん。しかし独身主義だったわけではない。
一人っ子だったため、両親は自分たちが亡くなったあとのことを心配し、岩田さんは「家庭をつくって穏やかに暮らすのが良い」と言われて育った。そのため学生時代から出会いのチャンスは積極的に求めてきたという。
「私は司法試験合格を目指していたので、勉強時間を確保するために、図書館で一緒に勉強することをデートと称していました。とにかく遊ぶ時間を徹底的に倹約。なぜ彼氏が離れていったのか、その気持ちも当時はわかっていなかったんです」
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NHKに入局してからも周りに「誰か紹介して」と声をかけ、パートナーを探してきたが、記者という仕事柄、事件が起きるとデートを切り上げざるを得なかった。
「北朝鮮がミサイルを発射しそうだと連絡が入れば、顔つきが怖くなって、相手の話も聞いていられなくなります。食事中に取材先から電話が入ったら『ごめん。重大事案だから行くわ』となるので……。結婚を考えた人もいましたが、結局、一人でここまで来てしまいました」
40代に入ると「この先、結婚して共同生活をしていくエネルギーがない」と悟ったという岩田さん。一方で老後の不安や孤独感が強くなり、更年期も始まって不眠症にも悩まされるようになった。
「それからはシェアハウスやシニアハウスを調べるようになり、元気なときから入所して、そこから仕事に出勤する。体調が悪くなったら医療行為を受けられて、看取りまでやってもらえるところに入りたいと強く思うようになりました。シニアハウスで暮らしている大先輩に住み心地を聞いたりもしました。
実は私は寂しがり屋。居心地がよくて気の合う人たちがいるシニアハウスに入って、そこの共用スペースに友達が遊びに来て、常に人が絶えない環境をつくることが老後の目標です。こうして老後の方向性が定まったら、ずいぶん安心できました」
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さらに死後の居場所も確保しているというから驚きだ。
「30代のときに1年間お墓を探して、浅草に特別永代供養のお墓を購入しました。私が死んだときはここに祭ってもらえるよう、ありとあらゆる人に伝えています」
女友達を増やす活動を頑張っている最中
最近は女友達の存在も独身生活の支えになっている。
「記者時代は、彼氏と同様、女友達と遊ぶ時間もなく、疎遠になっていました。でもフリーになってから、友人と食事をしたり、温泉旅行に行ったりできるように。悩みを相談したり、お互いを思いやれる関係に幸せを感じています。
女性同士だから相手が何に困っているのか想像しやすいのですが、私は何といっても家事全般が苦手。できるだけ想像力を働かせるように努力をして、女友達を増やす活動を頑張っている最中です」
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これまでは仕事の虫で、不規則な生活をしていたが、フリーになって健康を意識した生活をしようと心がけている岩田さん。母親と同居し、介護で大変な時期もあったが、今は施設で過ごしてもらい、最近は趣味を楽しむ時間をつくるように。
「ダンス教室に通い始めました。TRFの曲に合わせて、シニアでもできる動きで踊るんですが、とても楽しいんです。また、仕事で絵日記を描いたときに、子どものころ描いていた楽しさを思い出したので漫画にチャレンジしようと思ったり、ピアノをまた弾き始めたり。
本を読む、映画を見るといった一人の時間も若いころより味わい深くなっていますし、寂しくなれば女友達とおしゃべりをして過ごせばいい。この先、結婚することはほぼないと思います(笑)」
取材・文/紀和 静
いわた・あきこ 千葉県生まれ。東京大学法学部卒業後、1996年NHKに入局。岡山放送局で記者として岡山県警察や岡山地方検察庁などを担当。2000年東京放送センター報道局政治部へ異動、官邸記者クラブに所属。2002年当時官房副長官だった安倍晋三元首相の番記者を担当。歴代内閣で首相官邸や外務省を担当しながら、20年以上にわたって安倍元首相を取材。2013年、解説委員室へ異動、政治担当の解説委員と政治部の記者職を兼務。2022年7月NHKを退局し、フリージャーナリストに。