写真「月12万円でやりくりする」と決めたのは10年前。
『68歳おひとりさま 幸せに年を重ねるためのお金と時間の上手な使い方』(マガジンハウス)の著者、シニアブロガーのショコラさんは、今も心豊かに過ごしています。
世間の経済事情がどうなろうとも、ショコラさんはシンプルにブレずに「月12万円」のままなのです。
◆40代で離婚、正社員→パート→年金暮らしへ
40代で離婚、ひとり暮らし、45歳で化粧品会社の正社員になり、46歳でマンションを購入、13年勤務した会社を辞め、パートへ。老後の不安を見据えて「月12万円」のシミュレーションをはじめたのが10年前です。
やりたいことを後回しにして、がむしゃらに働いた頃、節約にも励みました。
昨年パートを辞め、現在は完全な年金暮らし。「時間に余裕が生まれたら、やりたかったことにどんどん挑戦しよう」と決意していたショコラさん。限りあるお金で自由を謳歌する毎日には、ショコラさん流の工夫があふれているのです。
◆必要なお金を計算しておく
長年家計簿を付けていたショコラさんは、その経験から「贅沢をせずに暮らせるお金は12万円」と定めました。この金額は人それぞれ異なりますが、最低××円あれば生活できる、という金額を把握しておくのは大切です。
あとは老後に備えての貯金、予想外の出費のための予備費を確保しておけば、人生設計は安泰といえるのではないでしょうか。
お金の管理は苦手、という方は多いです。しかし将来への漠然(ばくぜん)とした不安は、お金の計画を無視していては拭(ぬぐ)えないのです。40代、50代、そして60代と、ショコラさんは生活の変化を冷静に見つめていました。
一生懸命に働いて、無理なく節約していたからこそ、ショコラさんは今、「やりたいことリスト」を思いきり消化できるのです。
◆「いつ何があるかわからない」
地震、災害。怪我や病気。年齢とは無関係に、予想外のアクシデントはおそってきます。だからこそ、ショコラさんが念頭に置くのが「思いたったら行動する」。
銭湯やレトロ喫茶めぐり、フラダンスにヨガ。昔習っていたピアノを再開、そして旅。ショコラさんの趣味は多岐にわたりますが、シニア割や無料スポットを上手に活用しています。
そこは知恵をしぼって、情報を入手。やりたい!という衝動と好奇心があれば、出費をカバーすることもできるのですね。
最初から「無理」「お金が」など、あきらめモードになってしまったら何事もはじまりません。
ちなみになんとなくハードルが高そうなピアノですが、「ネットで購入した電子ピアノで時々練習」「近所の音楽教室のレンタルルームでグランドピアノを弾く」でまかなっています。しかもレンタル料は30分1100円。
リーズナブルに、非日常感を堪能できるのです。
ショコラさんのように昔習っていたとか、子供の頃に憧れた、といった復活させたい夢が誰にでもひとつはあるもの。こういう形で叶えるのも素敵ですよね。
◆借り暮らしとメルカリ暮らし
ショコラさんはレンタルをうまく利用しています。2週間に一度の図書館通い、日帰り旅行でのレンタサイクル。
電車やバスをあえて避けて、運動がてらサイクリングするのも楽しく、予算も抑えられそうです。
さらに「食料品と日用品以外の買い物はほとんどメルカリ」というほどのメルカリヘビーユーザー。ベーシックなファッションが素敵なショコラさんですが、アイテムの仕入れ先もほとんどがメルカリ。
「メルカリがなかったら、今の節約生活ではおしゃれを楽しめなかったかもしれません」とショコラさん。
世の中でどんどん更新されていく便利なシステムを、自分のセンスで即座に取り入れていく。このフットワークの軽さも、日常をときめかせるコツなのでしょう。
◆物価高騰の節約術
趣味や好きなことにはお財布のひもをゆるめて、しめるところはしめる。それでも「ここ最近の物価高には、本当にまいってしまいます」とため息つきたくなるのは、私達と同じようです。
とはいえ、嘆いてばかりいても状況は好転しません。たとえば「生鮮以外の食品や雑貨はPB(プライベートブランド)商品を買う」といった身近な工夫で乗り切れることもあるはず。最近はPB商品も増え、クオリティも向上しているのだとか。
「どうしても譲れないお気に入りブランド」とPB商品をうまく分けるのも、心をすり減らさない秘訣です。すべて節約マインドにしてしまうと、ストレスレベルまで上がってしまうからです。
◆基本現金払いのワケ
キャッシュレス決済がデフォルトになっている昨今、節約を最優先するならばポイントが付与されるキャッシュレスに軍配が上がりそうですが。
「使うお金の『見える化』」をはかるショコラさんは、基本現金払い。お札が出ていく、というリアルさを味わえるのは、やはり直接的なやりとりです。
キャッシュレスだとつい使いすぎてしまう、使った金額を把握できていない、などのデメリットも生じます。
お財布の中、きれいにお札が収まっていると「なるべく減らしたくない」と思うのが人情。メルカリやネットショッピングはクレジットカード決済でしますから、ここもやはりバランスで使い分けています。
◆世界にひとり、ひとつだけの幸福
充実した1日の積み重ねが、やがてかけがえのない人生となっていく。お金や仕事、健康や美容。年齢や環境のせいにせず、等身大の自分で今日という日を楽しむ。
ショコラさんの目に映るのは、ショコラさんだけが彩(いろど)る幸福です。あなただけの幸福を紡ぐヒントが、本書には詰まっているのです。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx