「新NISAは“老後の資産形成”に向いていない」10億円投資家が力説するワケ。サラリーマンに有利な投資とは

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2025年06月02日 09:00  日刊SPA!

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―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、時価資産額約10億円、年間家賃収入約4000万円の個人投資家・村野博基氏。注目されている新NISAは「あくまで制度で使い方次第。必ずしも無理してやる必要はない」と言います。また、「サラリーマンがまず投資をするなら、新NISAよりもiDeCoが向いている」と語ります。村野氏の非課税投資制度に対するスタンスについて聞いていきます

◆新NISAはあくまで非課税制度。投資を「勝ち」にしてくれる制度ではない

政府は「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げ、新NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、投資における税制優遇制度を整備しています。投資に関心があるみなさんにとっても注目度が高く実際に活用している方も多いのではないでしょうか。

巷では新NISAでオルカンと呼ばれる全世界株式の投資信託や、米国株を代表するインデックスS&P500に連動する投資信託を買うのが流行っていると聞きます。しかし、私自身は新NISAでの積み立て投資や成長枠投資は行っていません。自分自身が考える投資のセオリーとは異なるためです。新NISAは「絶対に行うべき投資」という位置づけではないと考えています。

そもそも、私が大事にしている資産形成における大切な方程式は下記です。

Z=a(X-Y)+b

Zは「資産」、Xは「収入」、Yは「支出」で、aは「時間」でbは「資本(貯蓄)」です。大事なのは「X-Yの(収入-支出)がプラス」であること。新NISAでの投資リターンは結局のところ時間に係る「収入」ではないため、bである貯蓄の部分に当たります。

全世界株や米国株での積み立て投資は長年行っていけばプラスになる可能性が大きいいでしょう。実際にオルカンやS&P500も10年前よりも上昇して良いパフォーマンスを出しています。ただ、これまでの投資がプラスだからといって今後がどうなるのかは未知数です。これからも全世界株式もアメリカ株が順調に上がるとは限りません。

◆インフレヘッジを考慮すると…

同時に日本でも鮮明になってきたインフレを考慮する必要性が出てきます。

いくら指数に連動するインデックスファンドが10%値上がりしていたとしても、インフレ率が10%であれば実質的な価値は変わりません。インフレ下では物価の上昇以上に投資先の金融商品が伸びなければ、投資した資産は実質目減りしてしまいます。数年前までお米5kgが2000円台だったのに、昨今では4000円台が当たり前になった状況を考えてみても、インフレによる資産の目減りが実感しやすいのではないかと思います。

極端な例ですが「お米を5kg手に入れることに対する対価」と考えると、数年前の2000円は今の4000円分の価値があります。もしこのケースに備えて投資をするならば、2000円が2倍になっていないと収支はトントンにはなりません。

さらに「いつ使うか」という点も考慮する必要があります。多くの方は老後資金のために新NISAで積み立てるわけですが……。売却するときの出口をみなさんはどう考えているでしょうか。

「今の1万円と10年後の1万円は同じ価値か」を考えてみましょう。この問いは「運用して増やすから同じ価値ではない」という話ではありません。今1万円で購入できるものが10年後に同じ金額で購入できるのであれば同じ価値だと考えるものとします。この問いへの回答は「その時の経済状況に左右されてしまう」です。

現在と10年前を比べたら、1パック100円台も珍しくなかった卵は今や1パックの平均価格は300円台です。お菓子やパンも値段は据え置きでも量やサイズが減っていたりします。一方でPC機器などは同スペックでもこの10年間で恐ろしく安い値段になっていたりします。

10年後の未来を正確に見通すことのできる「人」は恐らくいません。結局新NISAで積み立て投資をしても売却したタイミングの経済状況と使用用途によって価値が変わります。そのため「インフレヘッジのための貯金」としては機能するかもしれませんが、あくまで「Z=a(X-Y)+b」におけるb(貯蓄)のプラスアルファにしか過ぎないと考えています。

◆新NISAはキャッシュフローが赤字に

もう一つ、新NISAにおける積み立て投資では困る問題が出てきます。積み立てによる投資は「ドルコスト平均法」がメリットになります。安いときにはたくさん買えて、高い時には少ししか買えないので、毎回同じ量を購入するよりも最終的に多くの量が購入できます。ただし、これは積み立てる資金が毎月手元から出ていくことでもあります。

それはつまり「Y(支出)が増える=キャッシュフローが赤字」の投資に該当します。投資に熱心になるあまり、日常で使えるお金を減らして、帰って生活が苦しくなる「新NISA貧乏」という言葉も話題になりました。そもそも、幸せになるために始めた投資で、かえって日常の満足度が下がるのは、残念なことではないでしょうか。

新NISAはあくまで「儲かった分」に対しての税制優遇制度で「必ず儲けさせてくれる制度ではない」という事実を忘れてはいけません。

非課税になることは確かにメリットですが、儲からなければその恩恵は受けられないのです。さらに新NISAには利益に税金がかからない一方で、利益が無いので損益通算ができないというデメリットもあります。損失を繰り越すことができないので、負けが確定されてしまうのです。新NISAは投資で勝って儲かる前提の制度であり、むしろ積み立てることでキャッシュフローがマイナスになるデメリットもあるので、それを理解せず「買って放置しておけば良い」とするのは大変危険だと考えています。これらの理由から「負けを極力回避したい」と考える私は新NISAの積み立てにはあまり積極的にはなれないのです。

◆サラリーマンならばiDeCoの方が向いている

むしろ同じ積み立てるのであれば、現在働いていて収入がある方はiDeCoの方が先に活用する投資だと思っています。iDeCoは原則として60歳まで資金をロックされるというデメリットはありますが、拠出した金額は所得から差し引かれるために支払う税金が減り、手元に残る金額は新NISAより増えます。つまり再投資できて複利で運用させる資金が新NISAよりは多く残るのです。

再三説明してきましたが、「Z=a(X-Y)+b」の公式のなかでは、「X-Yの(収入-支出)がプラス」であることが最も重要です。新NISAの制度を活用した投資とは、Y(支出)を増やしてb(貯蓄)に資金を移動させ、「利益に係る税金を減らすことでb(貯蓄)の最大化を図る」になります。それより、まずはY(支出)である税金を減らすことのできるiDeCoに取り組んだ方が、「より負けない投資になるのではないか」と考えています。

構成/上野 智(まてい社)

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

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  • 投資について珍しく、わかりやすく的を得た記事。普通のサラリーマンなら純金積立コツコツw。仮に伸びが鈍化しても下がることはないでしょう。
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