画像はイメージです GWの終わりが意味するのは、大型連休の終わりだけにあらず。祝日の空白期間への突入こそが、日本の会社員たちを憂鬱にさせるのだ。
年次に関係なくみな憂鬱とはいえ、やはり新入社員のそれは一段と重いのだろう。入社早々に心を病んで会社を辞めてしまう新入社員のトピックは、毎年メディアでもSNSでも話題になる。
特に昨今では、繊細な新入社員が増えたといわれる。貴重さがどんどんと増している“若者”でもあるからこそ、企業も細心の注意を払い、人材育成に手塩をかけるようになった。
しかし、中には“モンスター”な新入社員もいるのだという。
◆ありとあらゆるトラブルを連発した新入社員
そんなモンスター型新入社員とのトラブルを明かしてくれたのは、都内の一部上場企業で営業職に就いている里見真一さん(仮名・30歳)。思ってもみなかったトラブルに続々と巻き込まれたと、呆れ果てた声色で語ってくれた。
「うちの会社では、新卒研修が明けてから各部署へと配属されていきます。配属後、自分が在籍する営業部では、まずは教育担当の先輩社員と行動をともにして、仕事を覚えていく。まあよくあるOJTの形です。
取引先とのやり取りはもちろん、社内ルールや報告書の作成まで、すべてを先輩社員から教えてもらうわけです。自分は入社8年目で、これまで多くの新人の教育を担当してきましたが、Aという新入社員を越える“ヤバイ”人は今後も現れないだろうな、と思うほど散々な目に遭いました。
すでに辞めてしまった社員ですが、退職するまでの短い間にありとあらゆるトラブルを連発して、部内を引っ掻き回していったんです」
◆超難関大出身で“格下の学歴”を小バカにする
里見さんが教育係になった新人のAさんは、超難関の国立大学出身。エリートの自負がある――そんな域には到底収まらない、傲岸・非常識な性格で、先輩たる里見さんにもはじめから高圧的な態度で接してきたそうだ。
「最近、心の弱い新入社員が増えたようなニュースばかりですが、Aはその対極でしたね。研修期間が終わって部に配属された際も、自己紹介で出身大学をわざわざ明かして、自分がどれだけ優れた学生だったかをアピール。その時点でみんなドン引きだったのですが、運が悪いことに自分が教育係に任命されてしまいました。
ちなみに、自分もそれなりに名門とされる大学の出身ではあるものの、旧帝以前に国立大ではありません。には、完全に“格下の学歴”の人間と認定されてしまいました。
はじめて一緒に営業に行った日もなにかにつけて意見してきて、小バカにしているのがミエミエでした。ムカつきはしましたが、自分が説教して辞められても困るので無視していたんです」
先輩社員に対して学歴マウントをとったうえ、舐めた態度に出る新入社員が現代にも生き残っているとは、いやはや。
当然このような振る舞いは社内であっても問題ではあるが、なんと社外でも同じような言動を行ったのだとか。
◆なぜか自分が責任をとるハメに…
「とある取引先に、Aを連れて行った際にトラブルが起きました。その取引先の担当者は実は、自分の出身大学の先輩。商談の合間の世間話で、共通の話題として母校の話が出たんです。するとAは一体なにを思ったのやら、われわれの大学を馬鹿にする発言を繰り出して。
大学野球の話をしていると、『勉強はできないけども、スポーツの特待生が多い大学ですから(強くもなりますよ)ね』とAがポツリ。
はじめ、先方はAがなにを言っているのか理解できていなかったようですが、その後も自分の大学のほうが学力で上だと発言。先方の担当者も大人なのでその場は笑って流していましたが……後日、弊社の部長にクレームの電話が来ました。当然の結果ですよね。
ただ、怒りのほどはかなりのもので、今後もAが関わるのであれば契約を見直すとの内容でした。慌てて部長と自分で謝罪に行ってなんとか丸く収めたのですが、取引先からの信頼がAのせいで大きく下がってしまったことには変わりません。結局、Aの教育ができていないと自分が部長から強く叱責されてしまったんです」
◆部長の寵愛を受けた、態度がさらに増長
社会人としてはまったく実績がないのに、出身大学の“偏差値”だけで勘違いしている、“残念系高学歴”なAさんは、その後もさまざまな場面でトラブルを起こしていったそうで。
「厄介なのが学歴の高さがなまじハリボテではなかったこと。切れるところでは頭が切れたので、上長へ媚びを売るのは抜群に上手だったんです。取引先への失言騒動では部長も被害を受けたのに、いつの間にかAはお気に入り社員の座について、部長直々に誘って飲みに行くような関係になっていました。
結果、教育係の自分を通してよりも部長から振られる仕事が増えたんです。言わずもがなAはつけあがって、勘違い発言を以前にも増して連発するように。看過できなくなった周囲の社員が注意すれば、すぐに『パワハラだ』と騒ぎ立てて人事部へ報告してしまうのです。あっという間にA以外の部署の人間全員が、Aへのパワハラ加害者に仕立て上げられました。しかも部長に目をかけられてもいるのですから、注意できる人間なんて誰一人残りませんでした」
さらには部長だけでなく、同じ大学出身であることをきっかけに担当役員にまでかわいがられるようになっていたとか。
◆突然電話がつながらくなったワケは…
こうして周囲に毒を撒き散らしながらも、本人はいたって順調に社会人生活を送っていたはずのAさん。だが、ある日突然、会社から消えたのだという。
「とある日、Aが出社していないのでスマホに連絡すると、『この電話番号は現在使われておりません』とのアナウンスが流れたんです。その数時間後には退職代行業者から連絡が来て、Aはそのまま会社を辞めていきました。どうやら、大学時代の友人が会社を起業したことで、そちらに移籍するという理由だったようですが……。
なんの引き継ぎも行わずに辞めてしまったので、Aが進めていたプロジェクトは教育担当として自分が引き受けることになりました。そのうえで、部長からは『教育がなっていないからだ』と再び叱責されたんです。
初対面から最後まで、一貫して最悪な印象しかない同僚は後にも先にも彼一人。退職代行を使われても、イマドキ感より彼らしさが勝ってすらいるように感じました。ムカつきを通り越して、もはやアッパレと思うしかありませんでしたね(笑)」
◆かつての常識が通用しなくなっている?
教育係というだけで、Aさんの尻拭いをさせられ続けた里見さんはそうした経験をもって、新入社員は二極化しているのではないかとの仮説を語る。
「世間では『心の弱い』若手社員ばかりが議論されているように感じますが、Aのような唯我独尊タイプのモンスター系・クラッシャー系も多くなっていると思いますね。
良くも悪くも、臨機応変に会社や取引先にあわせられるわれわれのような普通の社員が少なくなっているんじゃないでしょうか。
会社が悪いのか教育が悪いのか、変化の時代のせいなのかはわかりませんが、かつての『会社員の常識』が令和では通用しなくなっているのを肌で感じます」
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「バブル世代が日本を壊した」とはよく言われてきたものだが、「Z世代」の評価は一体この先どう転んでゆくのだろうか。
話を聞いていると、「日本経済にトドメを刺した」とされるのか、「ジリ貧を覆した救世主」とされるのか、これまた両極端な評価ばかりをつい予想してしまう。
<TEXT/高橋マナブ>
【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている