
古典は言葉が難しくて苦手。大人になってもこの先入観から抜け出せず、せっかくの名作を読み逃している人は少なくない。子どもの時にもっと親しめていたら・・・と思える一冊ができた。『10代からのいいね!万葉集』(天野慶著、誠文堂新光社、税込み1760円)が6月12日に発売される。ロマンチックな日本語の源泉に近づける、万葉集の新しい形の入門書だ。約4500首ある万葉集の名歌を100首に厳選。穴埋めナゾトキ問題のクイズ形式で紹介しているので、親子で楽しみながら豊かな万葉集の世界に遊ぶことができる。
普段よく口にする言葉には、古典を題材にしたものが多くある。たとえば「むなしい」。万葉集では「世の中は 空(むな)しきものと 知る時し いよよますます 悲しかりけり」(大伴旅人)という歌に出てくる。「この世は空しいものだとはじめて思い知ったとき、いよいよますます悲しく思われるよ」というのが現代語訳。
「世の中は空しい」というのは、仏教の思想に基づいたもので、妻を亡くし、不幸なことが重なり、さらに大事な人(この歌では弟ではないかといわれている)が亡くなったとの知らせを受けた作者、大伴旅人にとっては、生きることがつらく悲しく感じられたという解説がつく。言葉の意味や典拠を知ると、古代の日本人、そして日本文化とつながることができる。
「ちはやぶる」「なでしこ」「わたつみ」「言霊」「誰そ彼(たそかれ)」など、知っておきたい含蓄のある言葉や、「さくら」「富士」「夢」「恋」など、普段よく口にする言葉の奥深い意味まで、じっくり知ることができる。

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