
今から約5年前、Xユーザー・きなこさん(@kinako_731)が出会ったのは、生後まもない小さな命でした。勤務先である歯科医院のガレージで見つかった子猫。それが、「きなこ」ちゃん(女の子)です。目も開かず、母猫の姿も見当たらない―その日から、家族としての時間が静かに始まりました。
【動画】5歳の誕生日、“ごちそう”でお祝いすると…大興奮のきなこちゃん
猛暑日に勤務先で見つけた小さな命
2019年7月31日、歯科医院で働いていた飼い主さんは、先生から突然声をかけられました。「子猫が鳴いているけど、母猫の姿がない」。先生の手のひらには、生後1、2日ほどの子猫がいました。
「まだ目も開いていなくて、びっくりしました。真夏でしたし、とにかく急いでペットショップへ走って、哺乳瓶とミルクを買いました。職場のみんなで2時間おきに代わる代わるミルクをあげて、命をつなぐ“リレー”が始まったんです」
職場の先生や同僚たちはすでに犬やうさぎと暮らしており、自宅に迎えられるのは飼い主さんだけでした。
|
|
「とりあえず家に連れて帰りました。夫には『早く帰ってきて!』とだけLINEして(笑)、きなこをサプライズで見せたら、びっくりしてましたね」
当初は里親を探すつもりで、募集サイトにも掲載していたそうです。ただ、日々一緒に過ごすうちに、気持ちは少しずつ変わっていきました。
「毎日職場にも連れて行って、ミルクや排泄のお世話をしていたら、情がどんどん湧いてきて。目が開いた瞬間も見ていたし、夫も『もううちの子だよね』と。家族として迎えることに決めました」
初めてのお世話、暮らしの中心にいた子猫との日々
目が開いていない状態から始まったきなこちゃんとの暮らしは、試行錯誤の連続でした。夜中の授乳も、安心できる環境づくりも、すべてが初めての経験だったといいます。
「夜中のミルクは本当に大変でした。ケージを枕元に置いて、すぐに起きられるようにしていました。ネットで見た“タンブラー湯たんぽ”を真似して、お湯を入れたタンブラーをタオルで巻いて、毎日そばに置いていました」
|
|
気温が高い季節だったこともあり、寒さに悩まされることはなかったものの、頻繁な授乳には体力も気力も必要でした。それでも、成長のひとつひとつが励みになったといいます。
「猫用の離乳食があることも初めて知りました。カリカリを食べたときは、“一人前になった!”って(笑)。あと、きなこは人の手から水を飲むのが好きで、水が飲みたいときは洗面台に登って待ってるんです」
生活もまた、きなこちゃんを中心に変わっていきました。洗剤は無香料のものに変え、キャットタワーは日当たりの良い縁側に設置。室内のドアは、きなこちゃんが自由に通れるよう少しだけ開けておくのが日常に。
「私も夫も、“きなこが快適に過ごせるかどうか”を一番に考えるようになりました。その後できた娘にとっても、自分が生まれる前から猫がいるという環境は、良い影響になっているように思います」
毎日伝えたいのは「生まれてきてくれてありがとう」
きなこちゃんは、現在5歳。子猫時代は来客にも物おじせず近づいていくような性格でしたが、最近は少し慎重な一面も見せるようになりました。
|
|
「昔は誰が来てもクンクンと匂いを嗅ぎに行ってたんですが、最近はちょっとビビりになったのか、来客があるとそっと陰から見てるんです。成長した証拠なのかなって思います」
それでも変わらないのが、きなこちゃんの優しさ。お迎えから1年後に娘さんが誕生してからも、いつも近くで寄り添ってきました。
「娘が泣くと、すぐに駆け寄ってきて、“撫でていいよ”って言ってるみたいにおなかを見せてゴロンゴロンするんです。毎日そばで寝ていた姿が、今も忘れられません」
目も開かないうちから一緒に暮らしてきたきなこちゃんは、今では飼い主さんにとって“我が子”のような存在です。
「毎日『生まれてきてくれてありがとう』って思っています。抱っこして“かわいいねぇ〜”って頬ずりすると、前足で突っぱねられちゃうんですけど、そのときの肉球の感触がもう最高で(笑)。これからもきなこが日々穏やかに、幸せに過ごせるように、私たち家族でずっと支えていきたいです」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)