
2024年の初夏、静岡県内で彷徨っていた1匹の犬が保護されました。犬種はジャックラッセルテリアで、推定年齢はわからないものの相当なシニアのようです。
行政では当初このシニア犬を「迷い犬」として扱い、保護後の一定期間、保護情報を公示していました。しかし、飼い主らしき人からの申し出はありませんでした。
一般的に考えれば、体の大きいジャックラッセルがいなくなったとすれば、すぐにでも飼い主が捜索すると思います。しかし、一向に名乗りがなく後述のシニア犬の様子も含めて考えれば、飼い主が意図的に遺棄したようにも感じられました。
目が見えず耳が聞こえず認知症の症状も
このシニア犬、パッと見た感じでは人間を前にして顔を近づけてくれるような社交的で穏やかな様子ですが、実は「目が見えない」「耳が聞こえない」といった持病がありました。さらにぐるぐる意味もなく回り続けたり、唐突に大声で鳴きわめくこともありました。明らかに認知症特有の行動でした。
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ワンコも人間と同じように認知症を発症することがあります。早ければ10歳ごろから見られ、13歳以降で多くなると言われます。症状は様々ですが、旋回・徘徊、夜鳴き、トイレの失敗、無気力、感情的になるなど。
ワンコの認知症の原因ははっきりと分かっていません。しかし人間同様、進行すれば現状の獣医学では治すことは難しいとされています。
生活の中で、程よい刺激を与えたり、適切な運動・睡眠を心がけたりと、ある程度予防はできると言われ、予防フードやサプリメントも開発されていますが、「完治」が期待できる手立ては現状ではまだない状況です。
行政からの相談を受けて団体が引き取りを承諾
行政は、地元の保護団体、アニマルフォスターペアレンツに引き取りの相談を持ちかけました。
団体施設は常にキャパいっぱいの状況ですが、シニアになり、体も不自由で認知症の疑いもあるこのワンコを放っておくわけはできないと、引き取りを承諾。「ジョン」という名前をつけ、その晩年に少しでも幸せを感じてくれるようお世話することにしました。
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1日でも長く穏やかな晩年が続きますように
シニアであり、これだけの持病を抱えているわけですから、ジョンがこれから先、いっぱいの幸せを噛み締める時間はそう長くないかもしれません。しかし、団体のもとで、美味しいエサを食べて人間から愛され続けることで、穏やかな晩年が続いてほしいと強く思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)