日本ダービー制覇のクロワデュノール(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返る日本ダービー
【Pick Up】クロワデュノール:1着
キタサンブラック産駒は日本ダービー初制覇。これまでイクイノックスとソールオリエンスが2着に甘んじていたのですが、ついに頂点を極めました。
日本ダービーは2012年のディープブリランテから13年連続で「父が日本ダービーで1〜3着だった馬」が勝ち続けていました。父キタサンブラックは2015年の日本ダービーで14着。この例に当てはまりません。
ちなみに、キタサンブラックが敗れた年の日本ダービーを勝ったのはドゥラメンテ。今回2着と敗れたマスカレードボールの父です。もし同馬が勝っていれば、キングカメハメハ→ドゥラメンテ→マスカレードボールと、3代連続日本ダービー制覇の新記録が実現するところでした。
キタサンブラック産駒は日本ダービーに計4頭出走して[1-2-0-1]。日本ダービーに滅法強い血統といえるでしょう。イクイノックス、ソールオリエンス、クロワデュノールも、いずれ種牡馬として日本ダービー向きの特長を伝えるのではないかと思います。
母ライジングクロスはパークヒルS(英G2・芝13ハロン197ヤード)を勝ったステイヤー。ヨーロッパ各国とアメリカを転戦し、他に英オークス2着、愛オークス3着という成績があります。海外のサイトによれば体高がわずか14.3ハンド(約145cm)しかなく、現役時代のレース映像を見てもその小ささは見て取れます。
ライジングクロスの産駒成績を見ると、オークス(GI)で4着と好走したアースライズ(父マンハッタンカフェ)を産んでいますが、同馬を含めて産駒のサイズは総じて小さめです。キタサンブラックが交配相手に選ばれたのは、体高が172cmと社台スタリオンステーション繋養の種牡馬のなかで最も背が高いことも理由のひとつでしょう。アースライズの父マンハッタンカフェも170cmの大型馬でした。
クロワデュノール自身は、父キタサンブラックのスラリとした体形を受け継ぎ、今回の馬体重は504kg。十分なサイズを備えています。
母の父ケープクロスは、シーザスターズ、ゴールデンホーン、ウィジャボード(いずれもカルティエ賞年度代表馬)などの父で、大レース向きのスタミナと底力に定評があります。
(有)サンデーレーシングの吉田俊介代表によれば、現時点では未定ながら今秋は海外遠征も視野に入れているとのこと。血統的にヨーロッパの洋芝は合うタイプでしょう。
◆血統で振り返る目黒記念
【Pick Up】アドマイヤテラ:1着
父レイデオロは日本ダービー、天皇賞(秋)の勝ち馬。種牡馬としては、“短距離=不振、長距離=天才的”という際立った特徴を備えています。
芝2500m以上では勝率26.1%、連対率43.5%、複勝率52.2%。2015年以降、芝2500m以上で産駒が20走以上した62頭の種牡馬のなかで、勝率、連対率、複勝率のいずれにおいてもナンバーワン、という凄まじい成績です。単勝回収率109%、複勝回収率110%と、馬券的にも妙味があります。
その一方で、芝1000〜1200mでは過去30戦未勝利。5着が最高着順です。芝短距離では馬券から外し、芝長距離で買い続ける、という狙いの分かりやすい種牡馬です。
アドマイヤテラは昨年秋の菊花賞で7番人気ながら3着と好走しました。長距離適性の成せる業でしょう。
母アドマイヤミヤビはクイーンCの勝ち馬で、オークス3着。こちらもスタミナ十分ですから、長距離路線におけるアドマイヤテラは前途洋々です。
本馬は「ウインドインハーヘア4×4」という牝馬クロスが施されています。おもしろいことに、その息子ディープインパクト、またはブラックタイドを経ない形でのクロスとなっています。アドマイヤテラの4代母、父レイデオロの3代母がウインドインハーヘアで、同馬の娘2頭を通じて血を引いているという珍しい形です。