ガバメントクラウドへの移行後、システム運用経費は増加見込み──東京都は5月28日、日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」への移行後のシステム運用経費を巡り、国に対して声明を発表した。移行後の経費削減を目指すと国が掲げる一方、都の調査の結果では、移行前と比べて約1.6倍に経費が増える見込みだと主張。国に対して速やかに実効性のある措置を講じるよう求めている。
地方公共団体の基幹業務システムの標準化を巡っては、原則2025年度末までに、義務として「国が定める標準的な仕様に適合」させる必要があり、さらに努力義務としてガバメントクラウドへの移行を求めている。これにより国は「標準化移行後のシステム運用経費は18年度比で少なくとも3割の削減を目指す」と掲げている。
しかし、都の調査結果では、都内自治体の運用経費は、移行前と比べて全体で約1.6倍に増える見込みと主張。また国は、クラウドを最適化することで中長期的には、ほとんどのケースでコスト削減を見込めると説明していたが、これについても「その試算根拠や実現に要する期間、条件などは具体的に示されていない」と都は指摘している。
国は他にも、運用経費全体のうち7割弱を占めるソフトウェア借料などのソフトウェア関連経費について「クラウド最適化によるコスト削減が、ソフトウェア借料などの他の経費項目にも波及する」と主張。しかし、その波及効果を明確に示していない。このため都は、各区市町村が運用経費削減の見通しを住民に説明できない状況にあると続けた。
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このような状況を踏まえ、都は総務省とデジタル庁に対応策を講じるよう要請。3割削減目標の試算根拠など目標達成に向けたロードマップの明確化を求めた他、ソフトウェア関連経費の削減に向けた区市町村への具体的な負担軽減策や、経費削減が見込めない場合の全自治体に対して必要な財政措置を講じるよう求めた。
都が発表したこの声明は、小池百合子東京都知事と吉住健一特別区長会会長、加藤育男東京都市長会会長、師岡伸公東京都町村会会長の4人による共同要請となっている。
地方公共団体の基幹業務システムの標準化への要望はこれまで、都以外にも中核市市長会や指定都市市長会も声明を発表していた。その内容は都と同様に、経費負担が増加する見込みであるため、国に対して適切な財政措置を求めるものだった。
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