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佐賀市の児童福祉施設で女性職員が刃物で切りつけられて死亡した事件で、佐賀県は、殺人未遂容疑で逮捕された同県武雄市の会社員の女性(28)の子供を5月中旬に児童相談所が一時保護し、事件現場の乳児院に入所させていたことを明らかにした。県警は、女性が子供を取り返そうとして施設とトラブルになった可能性があるとみて調べている。
県によると、県中央児童相談所(佐賀市)が女性の子供を一時保護したのは5月12日付。その際、女性は夫と一緒で落ち着いた状態だったため、入所先も隠さずに伝えたという。
しかし翌13日昼ごろ、女性から児相に比較的強い口調で「子供を返して」と電話があった。さらに、その日の夕方には児相を訪れて暴れ、持参した消毒用アルコールを口にするなどしたため、職員が110番した。
精神保健福祉法では、精神疾患のために自分や他人を傷つける恐れのある人を警察などが通報した場合、都道府県や政令市の判断で強制的に入院させる「措置入院」ができると定めている。県警は女性を保護し、自傷などの恐れがあるとして県に通報。ただ、県は女性と面会し、主治医にも話を聞いた上で、今回は措置入院の可否を判断するための精神保健指定医の診察は不要と判断し、女性を帰宅させた。また、児相は乳児院に女性が「子供を返して」と電話してきたことを情報共有して備えるよう促したが、今回の騒動は詳しく伝えなかった。
その後、県は女性が主治医の診察を受けたことを確認。しばらくトラブルはなく、5月下旬には夫と2人で子供と一時外出するなどしていたとされる。ところが、5月31日に「子供に面会したい。(子供と)外出したい」と乳児院に電話をかけた後に1人で来院し、事件が起きた。
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乳児院は女性に「(面会や外出は)両親そろってならばOK」などと説明したが、夫が到着する前に女性が暴れ出したとみられる。職員の川原千恵さん(55)=佐賀県小城市=が両腕や胸を包丁で多数回切りつけられるなどして、搬送先の病院で死亡した。県警は女性を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。「記憶にないから分からない」と供述しているという。
一連の対応について、県こども家庭課の野田英雄課長は「親が声を荒らげるようなことはあるが、ここまでの事態は想定外。突発的な事案で、児相の対応に問題があったとは思っていない」と話した。事件を受け、県内の関連施設に注意喚起することなどは検討するとしている。
県警は2日、女性を殺人と銃刀法違反の容疑に切り替えて送検し、新たに中国籍と判明したと発表した。【成松秋穂】
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