すでに11球団が視察! 花園大出身初のプロ野球選手誕生へ高まる期待 藤原聡大はいかにしてドラフト候補となったのか

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2025年06月03日 07:20  webスポルティーバ

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 ドラフト候補にも挙がる花園大の背番号18・藤原聡大が時折マウンドで見せる笑顔には、まだあどけなさが残る。

 水口高(滋賀)時代は、主に遊撃手としてプレーしていた。1年秋には背番号6をつけ、レギュラーとして活躍。しかし2年になるとチーム事情から背番号1を背負い、投手を任されるようになる。

 ただ当時の藤原は、「その頃はどちらかというと、ショートをやりたいと思っていました。なので、ピッチャーで......と言われても、あまり気持ちが乗らなかったんです」と語るように、投手に対して強い関心はなかった。

 それでも2年の冬から本格的に投手の練習を始め、3年春には最速143キロをマーク。3年夏の大会は、初戦で滋賀学園と対戦し完投するも3対4で惜敗。この時、藤原の身体能力の高さに惚れ込んだのが、花園大の奥本保昭監督だった。

【3年秋に1試合18奪三振の快投】

 花園大進学後は、1年春からリーグ戦のマウンドに上がり、秋には3勝を挙げて新人賞を受賞。細身の体から150キロの速球を投げ込む剛腕として、早くからプロのスカウトの注目を集める存在となった。

 3年になると、さらに評価は高まっていく。昨年6月に行なわれた関西5リーグ対抗戦で、自己最速となる155キロを記録。そして秋のリーグ戦では、明治国際医療大学戦で18奪三振をマークし、連盟特別賞を受賞。着実に実力を伸ばしながら、プロへの階段を上り続けている。

 だがドラフトイヤーとなる今季、順風満帆なスタートとはいかなかった。

 3月に胃腸炎を患い、39度の高熱が続いた。食事もまともに摂ることができず、体重は5キロ減少するなど、1週間ほど練習できない日が続いた。

 ようやく回復の兆しが見えたと思った矢先、今度は副鼻腔炎を発症。その後、体調は回復したものの、藤原は「ストレートの威力はまだ完全に戻っていない」と話す。

 特に4月は、病み上がりの影響もあり、ボールを操ることに必死だった。4月12日に行なわれた明治国際医療大とのリーグ戦初戦、7回2/3を投げ15奪三振を記録したものの、3失点で敗戦投手となった。だがその後、佛教大戦では7回1失点の好投で今季初勝利。5月4日の滋賀大戦では5安打完封、13奪三振と徐々に調子を上げていった。

「1節終えるごとに、次の試合に向けてどう成長できるかを考えながら、毎日の過ごし方を大切にしてきました。その積み重ねが結果に結びついていると思います」

【花園大初のプロ野球選手を目指す】

 5月14日、リーグ戦第6節のびわこ成蹊スポーツ大との第1戦に先発した藤原は、初回に二塁打を許しながらも後続を断ち、2回には最速151キロをマークするなど、5回まで4安打無失点の好投を続けていた。しかし6回、四死球を4つ与えて2失点し、この回限りでマウンドを降りた。

この試合、藤原の投球数は5回終了時点で100球近くに達していたが、アクシデントが起きていたという。

「3回が終わる頃から、右手の人差し指に血豆ができてしまって......」

それでも6回までに9三振を奪うなど、バックネット裏に陣取った11球団のスカウトたちに上々のピッチングを披露。「6回はかなりきつかったですが、前半は要所を締めることができて、自分らしいピッチングができたと思います」と、藤原は納得の表情を見せた。

 奥本監督も「本当はもう少し早く交代させようかと思いましたが、なんとか6回まで踏ん張ってくれました」と、完全な状態ではないなかでの力投を称えた。

 呼吸を使って腹部をしっかり膨らませた状態で投げることを意識し、腸腰筋など腹部周辺の筋肉の使い方を改善したことも、復調の要因だという。体のメカニズムを理解し、それを日常の動作に落とし込むことで、万全でないなかでも少しずつ成果を上げられるようになった。

 昨秋までは速球ばかりに注目が集まっていたが、冬の間にスライダーとスプリットを磨き、ストレート以外でも勝負できる球種の習得に取り組んできた。びわこ成蹊スポーツ大との試合でも、スライダーを効果的に使う場面が目立った。

「秋にもスライダーは投げていたんですけど、精度があまりよくなくて。春先は体調がよくなかったので、なかなかボールをコントロールできなかったですが、5月に入ってようやく納得のいくボールが投げられるようになってきました。6回2失点という内容にも、これからは自信を持っていきたいです」

 今のところ、藤原は大学卒業後に支配下選手としてのプロ入りを目指している。最近は、花園大の試合になると多くのスカウト陣の姿が見られ、注目度は日に日に高まっている。もしプロ入りすれば、同大学初のプロ野球選手誕生となる。それでも藤原は、チームの勝利こそが最大のアピールになると語る。

「もちろんアピールしたい気持ちはありますが、まずはチームが勝てるピッチングをすることが一番大事。春のリーグ戦は優勝を逃したので、秋は優勝を狙えるよう、自分のピッチングをしっかりしていきたい。それを意識すれば、結果的にアピールにつながると思います」

 春は予期せぬ体調不良に苦しめられたが、トンネルを抜け、再び光が見え始めている。まだ荒削りな一面もあるが、それも含めて"伸びしろ"と評価するスカウトは多い。春から夏、そして勝負の秋に向けて、藤原はどんなピッチングを見せてくれるのか。今から楽しみでならない。

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