“小豆”の起源は日本(縄文時代)だった──ゲノム解析で明らかに 農研機構と台湾大学が発表

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2025年06月03日 08:11  ITmedia NEWS

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 農研機構と台湾大学に所属する研究チームが発表した論文「A single domestication origin of adzuki bean in Japan and the evolution of domestication genes」は、アズキの栽培化が縄文時代の日本で始まったことを最新のゲノム解析によって科学的に証明した研究報告だ。


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 和菓子や赤飯など、日本の食文化に欠かせないアズキの起源を巡っては、長年議論が続いてきた。近年の考古学的発掘調査では、約6000〜4000年前の縄文時代後期において、中国よりも日本でアズキ種子の大型化が先行していたことを示す証拠が見つかり、日本起源説が提唱されている。しかし、これまで科学的な裏付けは不十分であった。


 研究チームは、アジア各地から収集した栽培アズキとその祖先種であるヤブツルアズキ合計693系統について、全ゲノム解析を実施した。興味深いことに、核ゲノムの解析では中国の栽培アズキの方が日本のものより遺伝的多様性が高く、一見すると大陸起源説を支持する結果となった。


 しかし、母性遺伝する葉緑体ゲノムの解析では全く異なる結果が得られた。中国の栽培アズキも日本のヤブツルアズキと同じ型を持ち、中国のヤブツルアズキとは明確に異なっていたのだ。


 この一見矛盾する結果を解明するため、さらに詳細な核ゲノム配列の解析を行った。その結果、中国の栽培アズキに見られる高い遺伝的多様性は、中国に波及した後に現地のヤブツルアズキと交雑したことによってもたらされたものであることが判明した。


 つまり、アズキは日本でヤブツルアズキから栽培化され、その後中国に伝わり、そこで現地の野生種と交雑することで多様化したという進化の道筋が明らかになったのだ。


 さらに注目すべきは、栽培化の時期についての発見だ。研究チームは、栽培アズキの赤い種皮の色を決定するANR1遺伝子の変異頻度を解析。野生のヤブツルアズキは黒味を帯びた種皮を持つが、栽培アズキではこの遺伝子の変異により赤くなる。


 この変異は自然界では生存に不利だが、人為的な選抜により栽培集団では赤いアズキが増加した。ゲノム情報に基づく推定では、この変異型遺伝子の頻度は約1万世代前から増加し始めたことを示した。


 この発見は、日本列島におけるアズキ栽培が、稲作が始まった約3000年前よりもはるかに古い時代から行われていたことを示している。縄文時代後期の遺跡から発掘されたアズキ種子が、同時代の中国や韓国のものより大型であったという考古学的証拠とも合致する。


 Source and Image Credits: Chih-Cheng Chien et al. ,A single domestication origin of adzuki bean in Japan and the evolution of domestication genes.Science388,eads2871(2025).DOI:10.1126/science.ads2871


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2



このニュースに関するつぶやき

  • 小豆あんの起源は平安時代だそうです。渋皮煮と質素なつぶあんに分かれ、渋皮煮がこしあんに変化を遂げたそうです。
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