
寒空の下、段ボールの上でうずくまっていた子猫。偶然のような出会いは、Xユーザー・きのひとまるさん(@KINOHITOMARU)にとって、忘れられない運命の始まりとなりました。保護猫「あんず」ちゃん(女の子)との暮らしは、驚きと感謝の連続で彩られていくことにーー。
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段ボールの上で震えていた命、片手で包んだ出会いの瞬間
2024年11月、会社の従業員から「朝から子猫が1匹、段ボールの上にいる」と声をかけられた飼い主さん。気がつけば昼。「今もいるけど、生きてるかわからない」と聞いた瞬間、急いで行動を開始しました。
「段ボールを組み立て、車に置いてあったひざ掛けを持って子猫を探しに行きました。途中、夫に電話をして事情を説明すると『保護するんやろ。もう絶対最後やで』と。これまでも猫を保護して迎えていたので、やれやれといった様子でした。それでも私の気持ちを尊重してくれる夫に『ありがとう。愛してるで』と。こんなときだけ、ですね(笑)」
飼い主さんは、子猫がいるであろう場所に着くと、あちこち探し回りました。
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「こんなに寒いのに…とても胸が痛みました。そして、小さな“かたまり”にも見える姿を見つけたのです」
子猫は逃げる様子もなく、ただ静かにうずくまっていました。生きているのか、それともーー。飼い主さんは戸惑ったといいます。
「すると、ふいに子猫の目が開いたんです。『生きてる…!』そう思った瞬間、とめどなく涙があふれてきました」
飼い主さんは職場に戻り、段ボール箱にカイロを入れて子猫の体を温めました。そして、いったん従業員にバトンタッチ。子猫は病院で診察を受けました。
「生後1カ月半ほどの女の子で、体重はわずか275g。体は栄養不足でガリガリ、ノミとダニがびっしりと体にこびりついて血を吸われ、貧血状態でした」
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医師からは「お腹に虫がいるかもしれない」とも言われたといいます。
「健康状態が思わしくないなか、ご飯をあげるとすごい勢いで食べてくれてーー、トイレもちゃんとできました」
その子は「あんず」ちゃんと名づけられ、飼い主さんの家に迎えられました。
小さな体が見せた、回復のスピードと生命力
翌朝、あんずちゃんがいるケージをのぞくと、床にはノミとダニの死骸が山のように散らばっていました。その光景に思わず絶句したという飼い主さん。
「こんなに小さな体に、こんなにも寄生していたなんて…本当に辛かったです」
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あんずちゃんの体をやさしくブラッシングし、こびりついたほこりを落としていきます。まだ体力がなく、目を閉じてじっとしている姿を見て、「早く元気になってね」と何度も声をかけたそうです。
そんな中でも、あんずちゃんは驚くほどの回復力を見せ、ご飯をたくさん食べて、排泄もきちんとできるようになりました。
「まだお風呂に入れていなかったので、夫には“しばらく触るのは禁止”って言ったんです(笑)。でも、すぐにでも抱っこしたい様子でした」
保護から3日目、ようやくお風呂で体を洗ってあげることができました。
「やっと本来の毛色と毛づやが戻ってきました。そして、ようやく『ここがあんずの家だよ』と伝え、意思疎通ができたように感じられたのを覚えています」
飼い主さんの家には、3匹の先住猫がいました。みんな女の子です。不思議なほど空気を読み、あんずちゃんが落ち着くまでしっかり距離を取ってそっと見守ってくれていました。
「本当に、猫同士ってすごいですよね。言葉にしなくても、わかり合っている気がします」
先住猫が“ママ代わり”にーー家族に笑顔をもたらすあんずちゃん
現在、生後6カ月を迎えたあんずちゃん。今ではすっかり家族の一員として溶け込み、同居猫のひとり、「よもぎママ」に甘えながらのびのびと過ごしています。
「よもぎの姿を目にすると、すぐに走って近寄り、大ジャンプ! よもぎはびっくりして“猫パンチ”をしています(笑)。そんなふたりのやり取りも本当にかわいくて。よもぎには感謝しかありません」
あんずちゃんは、甘えたいとき、全身で“好き”を表現するそう。その無垢な姿に、飼い主さんも思わず顔がほころび、家族の心が温かくなる——そんな毎日が広がっています。
「保護当時はとても寒く、外で何時間過ごしたのだろうと考えるといたたまれません。あのとき逃げずに、私の手の中に入ってくれて本当に良かった。『生きていてくれてありがとう。お姉ちゃん猫たちと仲良く、楽しくすごそうね』と伝えたいです」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)