『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』セイラの“白い軽キャノン”どう解釈？　ファンサか宇宙の彼方への前兆か？

■白い軽キャノンがSNSで話題に

　『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』第8話に関して話題になったのが、「シャアがソロモン内部で遭遇した、白い軽キャノン」である。一年戦争最末期という過去の時代に遡った第8話前半では、宇宙要塞ソロモンをジオンの拠点である月面のグラナダへと落下させる連邦の作戦、それを阻止するべく出撃するシャアとシャリア・ブル、キャメル艦隊の戦いが描かれた。

  シャアが立てたソロモン落下阻止作戦は、「艦隊とともにソロモンに突入、揚陸艦であるソドンによってソロモン内部にモビルスーツ部隊を侵入させ、内部の四箇所にザクの動力炉を使った時限爆弾を設置。各部を同時に爆破し、ソロモンを空中分解させて突入コースを逸らす」というものだった。しかしザビ家に恨みを抱くシャアは途中で作戦を放棄し、爆破を失敗させてソロモンをグラナダに落とし、グラナダごとキシリアの抹殺を狙う。

  この作戦を放棄したタイミングで現れたのが、通常の機体とはカラーリングが異なる「白い軽キャノン」だった。シャアのセリフによればこの軽キャノンはドズルを撃墜したエース機で、ソロモン内に単機で残って敵機を狙っていたようだ。シャアの乗る赤いガンダムと白い軽キャノンはソロモン内部で激闘を展開。その最中、シャアは軽キャノンに乗っているのが妹のアルテイシアだと感知する。驚愕したシャアにできた一瞬のスキをとらえ、軽キャノンは肩の武装を発砲。この攻撃によってソロモンの坑道が崩落をおこし、シャアはガンダムごとソロモン内に閉じ込められてしまう。

  この「一年戦争の最終決戦というタイミング」「宇宙要塞内部の坑道というロケーション」「シャアと連邦軍エースの戦闘」という条件の揃いぶりはまるで『機動戦士ガンダム』の最終話を思わせるものだった。それまでにも『GQuuuuuuX』では、「ガンダムに乗ったシャアによる敵モビルスーツへの飛び蹴り」をわざわざ盛り込んだりと、『機動戦士ガンダム』の名場面を「正史」とは異なる『GQuuuuuuX』世界でなぞるような場面があった。「もしもサイド7に乗り込んでいたのがシャア本人だったら」という「if」から物語が始まった結果、なぜか「正史」でのアムロの位置にセイラさんが収まってしまったわけで、なんともマニアらしいくすぐりだと思う。

  この「セイラさんが軽キャノンのパイロットに！」というシーンは『Beginning』でも公開されていた。その時点では「オタクっぽい遊びだなあ」と思っていたのだが、今となっては『GQuuuuuuX』はかなり「あのキャラクターが『GQuuuuuuX』宇宙ではこのポジションに！」「あの要素をここに持ってきたか！」という驚きで引っ張る作品だったのだなという気がしている。シイコ・スガイなど強い印象を残した新キャラクターもいたが、ニャアンに撃墜された黒い三連星（のうち二人）や、バスク・オムと強化人間など、話数が進むごとに過去作から引用された要素が増えていき、「その要素をそこに入れたのか」というパズルの上手さに感心させられることになっていった。

  そのこと自体の是非は全話見るまでわからないのだが、現時点では正直なところ「なんだか思っていたよりこぢんまりとした話になってきたな」という気がしてきている。作品全体が「UC0079年からの宇宙世紀の大規模な語り直し」ではなく「旧作のキャラクターと要素をうまくはめこんだ、ガンダムトリビアパズル」のような印象になってきているように思うのだ。もちろんまだ完結していない作品であり、今後すべてを置き去りにするような圧倒的な展開が待っている可能性もあるのだが、ララァらしき人物が9話の予告に登場した点も、「旧作キャラクターをどこにはめこむか」というパズルの一環のように感じられる。

  してみると、最初は「ちょっとしたファン向けのサービスかつ、製作陣のお遊び」のように感じられた軽キャノンのセイラさんという要素は、『GQuuuuuuX』が視聴者に提供している面白さのコアである、「あのキャラクターがこんな意外なポジションに！」という要素のひとつだったということになる。それはそれで最初から首尾一貫していたということになるのだが、自分としては「宇宙世紀を舞台にしつつ、完全に見たことのない要素だけで組み立てられたガンダムが見られるのではないか」と思っていただけに、このところ肩透かしを食ったような気持ちになっているのも事実だ。しかし泣いても笑っても残り数話、まだどうなるかはわからない。『GQuuuuuuX』にはソロモンのセイラさんのことがどうでもよくなるくらいハチャメチャなストーリーを広げて、宇宙の彼方に飛び出していってほしいと思っている。