しっとりと、そして力強く...坂本花織がシャンソンで新たな表現世界に挑戦

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2025年06月03日 18:30  webスポルティーバ

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『ファンタジー・オン・アイス2025』レポート 前編

【シャンソンナンバーに挑戦】

 5月31日、6月1日に幕張メッセ(千葉市)で開催されたアイスショー『ファンタジー・オン・アイス』。昨年のこのショーでは、シンガーソングライターのフレイヤ・ライディングスが歌う『Poison』で曲の心象風景を描写する新境地のスケーティングを披露した坂本花織(シスメックス)だったが、今回はシャンソンに挑戦、さらなる新しい表現世界を見せてくれた。

 振付師ブノワ・リショーの協力も得てプログラムと滑りを磨き、2022年には北京五輪で銅メダル獲得と世界選手権優勝にたどり着いた坂本。翌季からの3シーズンは、振付師をマリーフランス・デュブレイユやロヒーン・ワード、ジェフリー・バトルに替えて新ジャンルにも挑んでいた。

 そうした期間を経て、昨季最終戦の世界国別対抗戦を終えたあとに、坂本はプログラムについてこう語っていた。

「タンゴの『Resurreccion del Angel(天使の復活)/La muerte del Angel(天使の死)』だったり、(映画)『シカゴ』の『オール・ザット・ジャズ』をやってみて、自分は意外と速い動きが苦手だと感じた。やってみて気づけたことだし、やってよかったなっていう部分もありました。だからこそ来シーズンは、動きで見せるというよりは本来のスケーティングで勝負したいなと感じています」

 勝負の五輪シーズンへ向け、5月のゴールデンウィーク明けから新プログラムの振り付けに取りかかると話していた坂本。今回のファンタジー・オン・アイスで披露したのは、『Non, je ne regrette rien(水に流して)』。1960年にフランスのシャンソン歌手エディット・ピアフが歌ったヒット曲で、「私は何も後悔しない」と人生を強く生きる女性の物語だ。

【メリハリある演技に会場がわく】

 白い衣装でスローな曲調に乗ってゆったりと滑り出す坂本。しっとりとした流れのある滑りのなかでも、その身体から力強さがにじみ出て、プログラムを伝えようとする思いの強さを感じさせる。ダブルアクセルを跳び、歌詞がはじまるとフランス語のリズムに共鳴するように上体を大きく使って、3回転ルッツも跳ぶ。

 この3回転ルッツは彼女がずっと苦手とし、エッジエラーの判定になることも多かったため、以前は極力回避していたジャンプだった。その後、得点を取るために入れるようになっていたが、昨季はフリーでさらなる得点力アップのため、基礎点が1.1倍になる演技の後半を含めて2本を入れていた。

 つづくコンビネーションスピンのあともメリハリが効いた滑りで、大きくスピード感のある滑りから、最後はレイバックスピンで締め、会場をわかせた。

 今回のファンタジー・オン・アイス、坂本はオープニングでも最後に紹介される座長格の存在。グループ演技『Cinema Italiano』では、宮原知子やアンサンブルスケーターとともに、チャ・ジュンファン(韓国)や中田璃士などを誘惑する役割を演じ、メインスケーターとして華やかなプログラムを演じた。

 さらに、フィナーレでは、ゲストアーティストである俳優の城田優やほかのスケーターとの氷上ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』を盛り上げる役割も果たしていた。

 自身、集大成ととらえる新シーズンへ向け、自分をさらに磨き上げて勝負しようと決意する坂本は、今回のアイスショーでもはつらつと存在感をアピールしていた。

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