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2度目の日本一へ、あと1歩届かなかった。1日、ラグビー「リーグワン」1部のプレーオフ決勝が東京・国立競技場で行われた。
リーグ3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(東京ベイ)が、同1位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)に挑んだが、13−18で敗れ2季ぶりの優勝を逃した。
フラン・ルディケ監督(57)は「決勝進出はポジティブ。収穫があった」と納得。NO8ファウルア・マキシ主将も(28)「プロセス、プランは間違っていなかった」と手応えを口にした。古豪がしのぎを削るリーグで、確実に存在感を示した。
ピッチ外でも日本一を目指す。今季は強い覚悟で「赤字」の道を進んだ。主催の9戦のうち6戦をスピアーズえどりくフィールドで開催した。東京最東端の江戸川区に位置し、千葉・船橋市の練習場から車で約20分。水と緑に囲まれた“ホスト”を主戦場とした。
今季の平均入場者数は4000人、収入は1試合あたり約1000万円。入場券5000枚が完売しても黒字化できず、毎節1500万円の赤字。年間で1億円弱に膨らむ計算になる。
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東京、千葉、神奈川を拠点とする7チームの多くは、港区・秩父宮での開催が多い。渋谷駅からわずか2駅、交通の便が良く収益が見込める。今季は5チームが4試合以上を聖地で主催。リーグ戦全体では26試合が行われた。うち東京ベイ主催は2戦で、平均1万4000人を集めた。支出はえどりくとほぼ同じだが、入場料収入は3倍以上。大きな資金源となりうる。
それでも「えどりく」にこだわった。運営責任者の栗原喬アシスタントGM(45)は「ホストスタジアムを持つことに大きな意味がある」と明かす。約70万人の江戸川区民とともに「スタジアムを満員のオレンジに染めたい」。都心では得られないファン獲得を意識した。
クボタの「手作り感」とも相性が良い。アットホームな街ゆえに、ファンとの距離が近い。19年W杯日本大会以降、にわかファンを取り込むべく、対面でアンケートを実施。「ノーサイドの精神」が魅力と気づかされた。意見を柔軟に取り入れ「相手ファンにも楽しんでもらう」ことを徹底。敵の得点にも演出を施すなど、リーグが掲げる「ホスト&ビジター」の理念に自然と近づいた。
“先行投資”が実りつつある。当初は「ライト層」が大半を占めたが、来場5回以上の「ヘビー層」が約50%に拡大。客層も約50%が都民、千葉県民が約30%。複数拠点を持つ利点を生かした。
今季はスタッフの発案から江戸川区浴場組合とのコラボも実施。区内の4つの浴場を巡りスタンプを集めると、ホスト試合のペア招待券がもらえる。この企画から毎節50人超の集客に成功した。
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さらに、スタジアムで5つ目のはんこを押したスタンプ帳を手に浴場に行けば、コラボタオルをプレゼント。一部の浴場では在庫切れになるほどの盛況だった。銭湯からえどりくへ、えどりくから銭湯へ。クラブと区民との距離をより一層縮めた。
結果にも直結した。トップリーグ時代の19年からえどりくで24連勝中。不敗神話について、栗原氏は「小さいスタジアムならではの満員感が選手の背中を押す」と要因を分析する。開催1試合だった昨季は6位に沈んだ。今季はこの地で6勝全勝。リーグ3位からの準優勝を後押しした。
今後は本格的なホストスタジアム化が目標となる。1万人以上収容への改修に向け「簡単ではないが実現したい」と描く。強化面、運営面ともにリーグワンの頂点へ。独自の道を進んでいく。【飯岡大暉】
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