マラソン代表の吉田祐也と近藤亮太が5000mで好タイム 東京世界陸上に向け良い形で本格的なマラソン練習へ

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2025年06月04日 06:00  TBS NEWS DIG

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9月に行われる東京2025世界陸上の男子マラソン代表2選手が、6月1日に横浜市の日体大横浜健志台キャンパス陸上競技場で行われたNITTAIDAI Challenge Games5000mで好走した。近藤亮太(25、三菱重工)は1組12位(日本人9位)の13分46秒59で、自己記録に約4秒と迫った。吉田祐也(28、GMOインターネットグループ)は2組10位(日本人5位)の13分29秒93で、自己記録を約1秒更新した。2人ともトラックのスピードや、自身の動きを確認することが目的での出場。ともに好感触を得て、これからの本格的なマラソン練習に入っていく。

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吉田がこのタイミングで5000m自己新を出した意味とは?

代表3選手の中でも、吉田祐也が一番期待を集めている。昨年12月の福岡国際マラソンに2時間05分16秒の日本歴代3位で優勝。選考競技会5大会(昨年12月の福岡国際と防府、今年2月の別大と大阪、3月の東京)の中で一番のタイムだった。レース内容も素晴らしく、中間点は1時間02分58秒の通過だったが、後半を1時間02分20秒にペースアップした。日本選手が2時間6分未満で走ったなかで、後半のタイムは最速である。

その吉田の表情が明るかった。

「去年も同じタイミングの5000mで13分30秒91を出して、マラソンは2時間05分16秒でした。今回の自己新で、地力が付いたと感じられたので、余裕を持ってマラソン練習に入って行けます。函館(6月29日の函館ハーフマラソン)と、その先の世界陸上に向けて、すごく良い流れができたと思います」

4月の日本選手権10000mでも6位(27分56秒30)入賞と、トラックのスピードランナーが揃った中で予想以上の走りを見せた。その日本選手権と函館ハーフマラソンを、「前期の一番大きなターゲット」と設定している。その中間で5000mに出場した理由は何だったのか。

「(指導を受ける青学大の)原晋監督とも、マラソン練習ばかりでなく、今まで練習してきた蓄積もあるし、学生と一緒にスピード練習もしているので、トラックのレースも楽しんで出よう、ということで5000mに出場しました」

必ずしも“スピードを上げる”ことが目的ではなかったという。スピード練習を行いながら、マラソン用のメニューもこなし「折衷的なところ」で行っていた。レース前1週間は調整で練習量を落としたが、その前の週には35km走も行っている。その流れで自己新を出したことで、地力がアップしていることを確認できた。

函館ハーフマラソンの好成績も期待できそうだが、そこからは国内の高地練習拠点で本格的なマラソン練習に入っていく。9月15日の世界陸上男子マラソンまで2か月、1か月と迫っていくと、練習の緊張感も高まるだろう。だが「練習で気負いすぎて、疲れた状態でスタートラインに立つことは避けたいと、原監督とも話をしています。練習と休養のサイクルを上手く回すことを意識して練習していきます」と、吉田に力みは見られない。

昨年がそうだったように、トラックで良い走りができていれば、マラソンにつなげていける自信がある。そのプロセスを確認できた5000mの自己新だった。

近藤が再現できた“力を使わない走り”

近藤亮太は2月の大阪マラソンで日本人トップの2位。2時間05分39秒と初マラソン日本最高記録を28秒更新した。今、勢いのある選手といえる。しかし4月19日の5000mは14分03秒65、5月3日のロード5kmでは14分24秒と、良くない走りが続いていた。

「今年度に入ってのトラックレースで、満足のいく動き、走りができていなかったので、NITTAIDAI Challenge Gamesに向けては集中して仕上げていくことが、目的の1つとしてありました。自己ベスト(13分42秒08)に近いタイムを目標にして、実際に13分46秒59で走れたことはすごく収穫がありました」

単純にタイムだけでなく、走りの内容が良かったという。トラックとしては大人数で走るレースなので、集団の中でのペース変化に対応するところや、位置取りなどはロードレースにも通じる部分がある。「その中で自分の力を使い切らずに集団の前との差を詰めたり、慌てずに対処できたのは今後のロードレースにつながります」。力を使わない走りは長距離関係者が“ランニングエコノミー”と言って重視している部分である。近藤はそれができるレースが、以前は年に1回くらいしかなかったが、大阪マラソンまでの練習でそのコツをつかんでいた。

「前の選手のお尻を見ることで上半身が前傾できて、軸がぶれなくなり、楽に走ることができました。それまではどう力を使うかを考えていましたが、力を抜けばいいとわかったんです」。その走りがNITTAIDAI Challenge Gamesでは「久しぶりにできた」という。

「この1カ月間で体重も落として、スピードを上げた設定で練習ができるようになっていました。レース前に親しい選手が13分38秒を目標にしていると聞いて、彼のお尻を見て集中して、リズムを取って走ることができたんです。1000mあたり2分45秒ペースも余裕を持って走ることができたので、この感覚を大事にしていきます」

レース後には近藤も「次の函館ハーフマラソンや世界陸上につながるレースでした」と、吉田と同じ感想を話した。

2人が走った前日の10000mには、もう1人のマラソン世界陸上代表の小山直城(29、Honda)も出場し、28分38秒18(8位、日本人2位)で走った。記録自体は良くないが、当初から練習代わりと位置づけ、5000mの2人ほどタイムを求めていなかった。その小山も2人と同じ函館ハーフマラソンに出場する。代表3人は徐々に、ロード仕様の走りにシフトし、暑さ対策やコースの研究など、地元の利点も活用しての対策も行っていく。近藤はNITTAIDAI Challenge Gamesの翌日に、陸連科学委員会とミーティングも行った。

函館後には3人とも高地トレーニング(小山と近藤は海外、吉田は国内)も組み込みながら、9月15日の東京2025世界陸上男子マラソンに向かっていく。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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