対馬丸記念館館長の平良次子さん=5月26日、那覇市 戦後80年に当たり、4日から沖縄を訪れる天皇、皇后両陛下と長女愛子さまは5日、那覇市の対馬丸記念館を視察される。館長の平良次子さん(62)は、「語り部」だった母啓子さんの遺志を継ぎ、対馬丸の惨禍を語り継いできた。「戦後生まれの両陛下と同世代として、沖縄の歴史をきちんと次の世代に伝えていきたい」との思いで、ご一家を迎える。
沖縄から疎開する学童ら約1800人を乗せて長崎へ向かった対馬丸は1944年8月22日夜、鹿児島・トカラ列島の悪石島沖で魚雷攻撃を受け沈没。対馬丸記念会によると、少なくとも1484人が犠牲となった。上皇ご夫妻は平成時代の2014年に記念館を訪れ、生存者らと懇談した。
啓子さんは9歳で対馬丸に乗船。いかだで6日間漂流した後、無人島に漂着して救助されたが、一緒に乗った祖母と兄、いとこが犠牲となった。戦後、長年にわたり小学校教諭を務め平和教育に尽力。退職後も「語り部」として体験を伝え続け、23年7月に88歳で死去した。
平良さんは啓子さんから、いかだに必死にしがみついて生き抜き、無人島に漂着後は砂浜を掘って水を求めたとの体験を直接聞いた。沖縄県南風原町の文化センター勤務時代、沖縄戦について証言を聞く機会があり、「戦争で犠牲になったのは弱い立場の一般人だ」と感じるようになった。
退職後、対馬丸記念館の依頼を受け、「私たちの世代が継がなければ」と決意し、24年4月に館長に就任した。自分と同世代の両陛下が、愛子さまを伴って沖縄を訪れることを「天皇家も戦争の記憶継承をとても意識されている」と受け止める。「沖縄の歴史をきちんと学べば、そこから平和の道が生まれる」と力を込めた。