
欧州サッカー今季活躍した選手トップ10
2024−25の欧州サッカーシーズンが終了。さまざまな選手の奮闘が見られたが、そのなかで特に活躍が目立ったのは誰だっただろうか。識者3人それぞれに今季のトップ10を選んでもらった。
【際立ったパリ・サンジェルマンとバルセロナの強さ】
中山 淳(サッカージャーナリスト)
欧州サッカー今季活躍した選手トップ10
1位:ウスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン/FW)
2位:ラミン:ヤマル(バルセロナ/FW)
3位:ヴィティーニャ(パリ・サンジェルマン/MF)
4位:ラフィーニャ(バルセロナ/FW)
5位:アクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン/DF)
6位:キリアン・エムバペ(レアル・マドリード/FW)
7位:モハメド・サラー(リバプール/FW)
8位:マルキーニョス(パリ・サンジェルマン/DF)
9位:フィルジル・ファン・ダイク(リバプール/DF)
10位:ジャンルイジ・ドンナルンマ(パリ・サンジェルマン/GK)
今シーズンのヨーロッパサッカーを振り返ると、やはり際立っていたのがチャンピオンズリーグ(CL)で初優勝を飾ったパリ・サンジェルマン(PSG)と、準決勝で敗退したバルセロナの強さだった。スタイルは異なるものの、どちらも攻撃サッカーを貫いてファンを楽しませただけでなく、結果もしっかり残した。したがって、今シーズンに活躍した選手のなかからベスト10を選出すると、当然ながら両チームの選手が多数を占める。
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MVPに選びたいのは、チャンスメイカーからフィニッシャーに変貌を遂げたデンベレだ。シーズン前半戦にPSGが抱えていた得点力不足という問題を一気に解決し、チームを無敵艦隊に変えた原動力となった。今年のバロンドール最有力候補だろう。
そのデンベレに肩を並べるだけの活躍を見せたのが、ヤマルだった。ラ・リーガのみならず、CLの舞台でも傑出したパフォーマンスを披露した17歳は、もはや神童の域を超え、年齢無関係で世界のトッププレーヤーの仲間入りを果たしたと言っていい。
PSGの頭脳でもあるヴィティーニャも、シーズンを通してハイパフォーマンスを披露。PSGの流動的ポゼッションサッカーに欠かせない司令塔として、世界トップクラスのミッドフィルダーへと進化を遂げた。
フィニッシャーとして大きく飛躍を遂げたラフィーニャも、ハンジ・フリック監督率いるバルセロナの象徴的存在。そして右サイドバックの領域を越え、前線ではFWとしてクオリティの高さを披露したハキミも、今シーズンのヨーロッパサッカーを代表する選手のひとりとなった。
6、7位にはふたりの点取り屋を選出。ラ・リーガ初年度で得点王に輝き、公式戦44ゴールを記録して「ゴールデンシュー」に輝いたエムバペと、同じく29ゴール18アシストという驚異的な数字を残し、リバプールのプレミア優勝の原動力となったサラーだ。
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DF陣からは、PSGのキャプテンで守備の要として大活躍したマルキーニョスと、安定して高いパフォーマンスを披露し続けたファン・ダイクを選出。ベストGKとしては、CL決勝トーナメントで神がかり的なセーブを連発したドンナルンマを選出した。
【ヴィティーニャはバロンドールに値する大活躍】
西部謙司(サッカーライター)
欧州サッカー今季活躍した選手トップ10
1位:ヴィティーニャ(パリ・サンジェルマン/MF)
2位:モハメド・サラー(リバプール/FW)
3位:ペドリ(バルセロナ/MF)
4位:ウスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン/FW)
5位:ラフィーニャ(バルセロナ/FW)
6位:キリアン・エンバペ(レアル・マドリード/FW)
7位:アレッサンドロ・バストーニ(インテル/DF)
8位:ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド/MF)
9位:ラミン・ヤマル(バルセロナ/FW)
10位:スコット・マクトミネイ(ナポリ/MF)
シーズン後半から覚醒したPSGの牽引車としてヴィティーニャ、デンベレを選出。ヌーノ・メンデス、アクラフ・ハキミ、デジレ・ドゥエ、ジャンルイジ・ドンナルンマなど選びたい選手が多すぎるので代表して2人に限定。
ヴィティーニャはチームの頭脳で心臓。プレーメーカーとして抜群だった。マンツーマンでつききる守備の貢献度も高く、バロンドールに値する大活躍。デンベレは偽9番として技術とヒラメキを存分に披露。守備意識が劇的に変化したことでチームリーダーとなり、チームをジャンプアップさせた象徴的な活躍だった。
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プレミリーグ優勝のリバプールからは得点、アシストで圧倒的だったサラー。ボールを持てばすべてはサラーの掌の上。躍進したチームのなかでも別格だった。
今季、最も印象的で冒険的だったバルセロナの司令塔としてすばらしいプレーぶりだったペドリ、新生バルサの象徴だったラフィーニャも外せない。
ここまでは大方異論はないと思う。エムバペは意見が分かれそうだが最終的には帳尻を合わせた感じ。CL準優勝のインテルからは攻守に活躍したバストーニを選んだ。GKヤン・ゾマー、FWマルクス・テュラムもよかったが、平気でポジションを逸脱していくバストーニのスタイルは、チーム戦術とマッチしていて面白かった。
セリエA優勝のナポリからは、リーグ年間MVPのマクトミネイ。ブルーノ・フェルナンデスは不振のチームをヨーロッパリーグ決勝まで引っ張り上げた涙ぐましい奮闘を買った。ヤマルは少し迷ったが、随所にみせる天才性と若さからの期待感に抗しがたいものがあった。
選外になってしまったが、ポルトガルリーグ連覇のスポルティングを牽引したビクトル・ギョケレシュ、シーズン前半だけなら選んでいたコール・パーマー(チェルシー)、プレミア下剋上の象徴としてアレクサンデル・イサク(ニューカッスル)、ブライアン・ムベウモ(ブレントフォード)、マテウス・クーニャ(ウルバーハンプトン)も印象的だった。ウルブスのジャン=リクネル・ベルガルドはクロード・マケレレ的なポテンシャルで目を引いた。
【サッカーの概念を塗り替えるデンベレの活躍】
杉山茂樹(スポーツライター)
欧州サッカー今季活躍した選手トップ10
1位:ウスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン/FW)
2位:モハメド・サラー(リバプール/FW)
3位:ラミン・ヤマル(バルセロナ/FW)
4位:ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード/FW)
5位:キリアン・エムバペ(レアル・マドリード/FW)
6位:フビチャ・クバラツヘリア(ナポリ→パリ・サンジェルマン/FW)
7位:ラフィーニャ(バルセロナ/FW)
8位:マルキーニョス(パリ・サンジェルマン/DF)
9位:アクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン/DF)
10位:ヴィティーニャ(パリ・サンジェルマン/MF)
CLを制したPSGから5人選んだ。デジレ・ドゥエとヌーノ・メンデスも入れたいほどだったが、バランスを重視しして断念した。それほどPSGはよかった。サッカー競技のレベル向上に大貢献する優勝だった。
いちばんはその左右のウイング、あるいはゼロトップ気味の1トップと多機能性を発揮したデンベレを推す。相手ボールに転じれば、セルティックの前田大然を彷彿とさせる猛スピードのプレッシングで相手の混乱を誘った。この超今日的サッカー選手を擁するチームが欧州一に輝いた。サッカーの概念を塗り替えるデンベレの活躍とPSGの優勝だった。
6位のクバラツヘリア、先述のドゥエ、さらにはブラッドリー・バルコラもそうだが、PSGのアタッカーはどのポジションもこなす。これに対し、2位のサラーと3位のヤマルは左利きの右ウイングだ。ポジションは決まっている。4位のヴィニシウスしかり。こちらは右利きの左ウイングになるが、どちらか一方しかできないことは、これまで普通だった。そうした概念が崩れたのが今季だった。7位のラフィーニャは両方いける。今日的だ。近い将来、こうした選手は普通の存在になっているものと推測される。
日本にこの流れはまだ到達していない。三笘薫は左だけ。堂安律、久保建英は右だけだ。両利きの選手を増やせ。筆者が強化技術委員長なら、さっそくそのような通達を各方面に出すだろう。苦手なポジションがない選手がこれからは有利になる。そのほうがサッカーの魅力も増しそうであることを、今季のCLを制したPSGが示唆した格好だ。
三笘が所属するブライトンもPSG的である。ウインガーで左ウイングしかできない選手は三笘だけ。ヤンクバ・ミンテ、シモン・アディングラは左右をこなす。またジャック・ヒンシェルウッドに至っては、サイドバック、中盤、さらにはセンターフォワードでもプレーする。欧州の2024−25は、時代の変わり目を迎えたシーズンだった。
>>「欧州サッカー活躍した日本人選手トップ10」へつづく