メインストリームモデルも「PCI Express 5.0」が当たり前に――SSDの最新動向を探る

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2025年06月04日 12:11  ITmedia PC USER

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SM2324を備えるポータブルSSDのデモ基板。かなりコンパクトであることが分かる

 5月23日(台湾時間)まで開催された「COMPUTEX TAIPEI 2025」では、SSDを始めとするフラッシュストレージ関連の製品やパーツ(コンポーネント)を展示するブースも多数見受けられた。


【その他の画像】


 この記事では、コンシューマー(個人)向けフラッシュストレージ関連製品/パーツの主なメーカーの動向をレポートする。


●SSDコントローラーメーカーの動向


 SSDは、主に「コントローラーチップ」と「NANDフラッシュメモリ」で構成される。どちらもSSDのパフォーマンスを左右する重要な要素で、少数かもしれないがどのメーカーの製品を採用しているのか意識している人もいる。


 今回のCOMPUTEX TAIPEIでは、コントローラーチップのメーカーがいくつかブース出展していたので、その展示の様子を見てみよう。


Phison Electronics


 台湾に本社を構えるPhison Electronicsは「CES 2025」で発表した新型コントローラーチップ「PS5028-E28」を展示の中心に据えていた。


 PS5028-E28はPCI Express 5.0対応のハイエンドSSD向けコントローラーで、最大8チャンネルのNANDを接続できる。従来モデル(PS5026-E26)における発熱問題への根本的な対処を施しつつ、性能のさらなる向上を果たしたことが特徴だ。


 本製品は製造プロセスをTSMCの12nmから同社の6nmと微細化した。これが、発熱の抑制と性能の向上の両立に貢献したという。平均消費電力は8.5Wで、ランダムリード/ライトは最大で3000K IOPSと、競合製品(Silicon Motion SM2508:最大2200K IOPS)を上回る。展示ではSM2508を搭載するSSDとの消費電力比較も行われていた。


Silicon Motion


 米国と台湾を拠点とするSilicon Motion(SMI)は、メインストリームSSD向けの新型コントローラーチップ「SM2504XT」をメインに据えて展示していた。


 本製品はPCI Express 5.0 x4対応で最大4チャンネルのNANDを接続できる。コストパフォーマンスを重視する観点からキャッシュメモリ(DRAM)レス仕様となっており、Phison Electronicsの「PS5031-E31T」が競合商品となる。


 製造プロセスはTSMCの6nmで、CPUコアは上位製品の「SM2508」の4基から3基に削減している。アクティブモードの消費電力は最大2.4Wで、ファンレス運用も可能だ。


 少し変わったところとして、Silicon MotionはUSB4 Gen 3 x2対応のポータブルSSDコントローラー「SM2324」を展示していた。ポータブルSSDは内部にM.2 SSDを搭載している製品も多いが、本製品を使うことで(基板の設計こそ必要となるが)よりコンパクトで高速なSSDを実現しやすくなる。


 TSMCの12nmプロセスで製造されており、最大で4チャンネルのNANDに対応する(容量ベースでは最大32TB)。シーケンシャルリード/ライト速度は最大毎秒4000MBだ。


 本製品はTSMC 12nmプロセスで製造されており、USB Power Delivery 3.1コントローラーも内蔵している。追加のチップを用意することなく、ケーブル1本で高電力供給が可能なポータブルSSDを実現可能なことも魅力だ。


InnoGrit


 米国に本拠を構えるInnoGritは、PCI Express 5.0対応SSDコントローラー「Tacoma PC IG5666」を展示していた。


 本製品を搭載するSSDは、既に台湾のTeam Groupなど、複数のメーカーで採用されている。しかし、新製品の発表/披露がなかったせいか、他のコントローラーチップメーカーと比べると展示は控え目な印象だった。


●ストレージメーカーがプッシュする新製品


 コントローラーチップとNANDを組み合わせた完成品のSSDを販売するメーカーでは、各種ストレージの新製品を展示していた。中には、「Nintendo Switch 2」の発売を見越してかmicroSD Expressメモリーカードの展示に注力しているメーカー(ブース)もあった。


AGI


 AGI(Agile Gear International)は、日本で目にする機会が増えつつある台湾のメモリメーカーだ。


 同社はSilicon Motion SM2508を採用した新型SSD「AI858」を“目玉”として展示していた。Phison ElectronicsのPS5028-E28を搭載する「Project P14」や、同社のPS5031-E31T採用の「Project P10」も展示されていた。


 Switch 2向け製品を中心にmicroSD/microSD Expressメモリーカードも紹介しており、幅広いフラッシュメモリ製品を取りそろえていることが印象に残った。


ADATA


 台湾のメモリメーカーであるADATAも、COMPUTEX TAIPEI 2025に合わせて新製品を複数投入している。


 メインを飾るPCI Express 5.0接続のM.2 SSD「MARS 980シリーズ」では、液冷+空冷のデュアル冷却を採用した「MARS 980 STORM」が特に注目を集めていた。同社によると、2023年のプロトタイプから約3年をかけて製品化したという。


 シリーズには他にも空冷ファンのみ備える「MARS 980 PRO」、ヒートシンク付きの「MARS 980 BLADE」(日本発売済み)が用意されている。全モデル共に、コントローラーチップはSilicon Motion SM2508だ。


 Nintendo Switch 2の発売を見越して、ADATAもmicroSD Expressメモリーカードをアピールしていた。


Biwin Storage Technology


 中国のメモリメーカーであるBiwin Storage Technologyは、日本でもAmazon.co.jpで各種ストレージ製品やメモリを販売している。同社も、COMPUTEX TAIPEI 2025に合わせて新製品を披露した。


 メインを飾るSSDは、Silicon Motion SM2508搭載の「Black Opal X570 PRO SSD」(キャッシュメモリあり)と、Maxio製コントローラー(型番は不明だが「MAP1802」と思われる)を備える「Black Opal X570 SSD」(キャッシュメモリなし)の2製品を展示していた。


 「PRO」のないモデルはキャッシュメモリがないものの、シーケンシャルリードの最高速度はむしろ高いという点が面白い。ヒートシンク付きモデルはPROにのみ用意されるが、ヒートシンクを取り外しても保証は継続することも注目ポイントだ。


キオクシア


 日本のメモリメーカーキオクシア(旧東芝メモリ)も、COMPUTEX TAIPEI 2025に合わせて複数の新製品を披露している。


 新型M.2 SSD「EXCERIA PRO G2」は、メインストリーム向けSSD「EXCERIA PLUS G4」の上位モデルに当たる。現在開発中でSSDコントローラーは非公開だが、ベースモデルのEXCERIA PLUS G4がPhison PS5031-E31Tを採用しているため、順当に行けばPhison PS5028-E28を搭載している可能性が高い。


 同社が得意とするSDメモリーカードも展示されており、中でもmicroSDメモリーカードの最新モデルで開発中の「EXCERIA G3シリーズ」はブース内の“目玉”だった。


 上位モデルの「EXCERIA PLUS G3」はシーケンシャルリードが最大毎秒225MB、シーケンシャルライトが最大毎秒150MBというスペックを備える(64GB/128GB構成のシーケンシャルライトは最大毎秒90MB)。


 ベースモデルの「EXCERIA G3」はシーケンシャルリードが最大毎秒160MB、シーケンシャルライトが最大毎秒50MBと、現行製品(EXCERIA G2)から速度が向上している。アプリケーションパフォーマンスクラスも「A1」から「A2」にアップグレードを果たした。


 EXCERIA PRO G2とEXCERIA G3シリーズは、2025年後半の発売を予定している。


Lexar


 中国Longsys傘下のフラッシュメモリストレージブランド「Lexar」は、M.2 SSDの新製品としてSilicon Motion SM2508搭載の「NM1090 PRO」と、Maxio製コントローラー(MAP1806と思われる)搭載の「NM990」を展示していた。NM1090 PROは日本未発売だが、海外では発売済みとなる。


 また、他のメーカーと同様にNintendo Switch 2向けのmicroSD Expressメモリーカードや、NFC認証でロック解除可能なポータブルSSDも展示していた。microSD Expressメモリーカードについては、1TBモデルを用意していることが強みだという。


MSI(Microstar-International)


 PCメーカーとして知られる台湾MSI(Microstar-International)も、PC向け内蔵SSDを販売している。COMPUTEX TAIPEI 2025では、その新モデルとしてPCI Express 5.0接続の「SPATIUM M571」を参考出展していた。


 本製品はコントローラーとしてPhison ElectronicsのPS5028-E28を採用しているが、説明員によると「恐らく2025年中の発売となる」とのことだ。


Silicon Power


 台湾に本拠を構えるSilicon Powerは、PCI Express 5.0接続のM.2 SSDの新製品を披露した。


 「US85」は、キャッシュメモリレスのメインストリームモデルだ。シーケンシャルリードは最大毎秒1万300MB、シーケンシャルライトは最大毎秒8600MBというスペックとなっている。容量は1TBか2TBから選べる。


 一方、「XPower XS90」は、同社のゲーミングブランド「XPower」を冠するゲーミング/ハイエンドPC向けモデルだ。シーケンシャルリードは最大毎秒1万4000MBという高速なスピードをアピールしている。容量も最大4TBと、「エンスージアスト向け」を自称するだけのハイスペックぶりだ。


 いずれもコントローラーチップは非公表だが、XPower XS90については「6nmコントローラーを採用」としている。


 Silicon Powerブースでは、他のブースと同様にNintendo Switch 2向けのmicroSD Expressメモリーカードも展示されていた。また、産業向け規格に準拠した3D TLC NANDを搭載する産業用SSD「ENDURAシリーズ」のNAS向けモデル「ENDURA SSD NAS Edition」も参考展示されていた。


 「NAS(サーバ)特化型のSSD」というと、Sandiskが積極的に展開していることが知られているが、今後は多くのフラッシュストレージメーカーからも登場する可能性がある。


Team Group


 Team Groupからは、特許取得済みのグラフェンヒートシンクを搭載したPCI Express 5.0接続のSSDをシチュエーション別に展示されていた。


 Team Groupは、以前から複数メーカーのSSDコントローラーを採用していることが特徴だ。PCI Express 5.0接続の新モデル「T-FORCE ME PRO」は、Silicon Motion SM2508を搭載しており、最大消費電力は8W以下となる。同社では「省エネモデル」と位置づけているようで、ノートPCに搭載することを想定した展示を行っていた。


 一方、デスクトップPCなどを想定したパフォーマンスモデル「T-FORCE Z54E」は、コントローラーとしてPhison ElectronicsのPS5028-E28を搭載している。パッと見では現行の「T-FORCE Z540」と変わりないが、れっきとした新モデルだ。


Transcend Information


 台湾のストレージメーカーであるTranscend Informationでは、InnoGrid製コントローラーを搭載するキャッシュメモリ付きモデルと、Phison ElectronicsのPS5031-E31Tを搭載するキャッシュメモリなしモデルと、2種類のPCI Express 5.0接続のSSDを参考展示していた。


 両製品共に今後販売する前提で展示されているが、現時点では具体的な予定は開示されていない。日本を含む世界各国で一般販売されることを期待したい。


●まとめ


 COMPUTEX TAIPEI 2025では、6nmプロセスのSSDコントローラーを搭載したハイエンド/メインストリーム向け製品が多数展示されていた。PCI Express 5.0接続のSSDにありがちな“熱い”というイメージは、発熱抑制が進んでその懸念は払拭(ふっしょく)されつつある。価格はさすがにPCI Express 4.0接続のSSDよりも高いが、今後ラインアップが充実していく中で、手頃になることを期待したい。


 また、今回はNintendo Switch 2を意識したmicroSD Expressメモリーカードの展示も目立った。新しいコンソールゲーム機の登場は、周辺機器メーカーにとって大きなチャンスだろう。



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