
出会いは、ふいに訪れるもの。暮らしがそっと変わる瞬間を、私たちは時に思いがけず迎えます。猫もまた、同じです。2021年、Xユーザー・@redchyangさんは、ひと目見て「運命のふたり」と感じた兄弟猫「剛」くん、「健」ちゃんと出会い、ご縁を結びました。当初は、怖がって触れることも難しかったふたり。その後、少しずつ飼い主さん家族との絆を深めていったのです。
【写真】お迎え直後、ソファの陰から出てこなかった剛くんと健ちゃん
駐車場に身を寄せていた2匹の猫、譲渡会で運命の出会い
「保護猫を迎えようと思い、いくつかの里親募集サイトを2カ月ほど、日々チェックし、時々問い合わせを入れて…を繰り返していました」
子猫にこだわらず、むしろ性格が見えやすい成猫の良さに惹かれていた飼い主さん。実家でも動物と暮らしていましたが、自分の責任で終生お世話するのは初めて。だからこそ、成猫という選択肢を選びました。
「ある日、募集サイトで推定1歳の剛くんと健ちゃんを目にした瞬間、『運命のふたり!』と感じたんです」
|
|
直後の譲渡会にはスケジュールが合わず参加できなかったものの、次の譲渡会に出ると知り、すぐに保護主さんに問い合わせ。家族構成や住環境、仕事などについて事前に情報交換し、面会予約を取りました。
「剛と健は都内のスーパーの駐車場に住み着いていた野良猫でした。同じころから見かけているし、そっくりだから兄弟だろうと。お兄ちゃんがどちらかはわかりませんが…剛がお兄ちゃんで健が弟だと思っています」
譲渡会で初めて会ったとき、ふたりは隣同士のケージで隅っこに固まり、1ミリも動かず、声も出さず、存在感をなくそうとしているように見えたといいます。
「ふたりとも、触れないというより“触らせない”雰囲気が漂っていました。正面から顔を見ることもできず、ほぼ背中しか見ることはできなかった。でも、そんなビビりなふたりに心惹かれて『家でのんびり暮らしていこうね』という気持ちになったんです。他の子に心は動きませんでした」
他にも希望者がいたものの、事前に面会予約をしていたこと、ペット関連の会社に勤務していたこと、飼育環境への安心感などが評価され、譲渡が決定。
|
|
「保護主さんからは『はじめての譲渡会ですぐに決まるのは珍しいです』と言われました」
こうして、2021年4月29日。剛くんと健ちゃんは、ワクチン接種と去勢手術を終え、飼い主さんのもとへやってきました。
10日間、ソファの裏から出てこなかった日々
「ふたりが我が家に初めて来た日は、即座にケージ内のトイレに駆け込んで“猫団子”になっていました。大人の野良猫を引き受けるということはこういうことか!と、最初は日々覚悟を決め直すような感じでした」
ご飯は飼い主さんが寝ている時間にだけ食べ、ケージから出たときにはソファの裏へ逃げ込み、10日間ほどまったく姿を見せなかったふたり。目の前でご飯を食べるようになるまでに、1カ月半かかったそうです。
「ネット上の猫オーナーさん達がシステムトイレを便利そうに使っていたので、私も3基のうち2基をシステムトイレに、1基を鉱物にしたら…システムトイレを絶対使わない派だったり」
|
|
健ちゃんはすぐに瞬膜が出た状態になり病院に相談。2カ月目には自然に完治したとのこと。爪切りがうまくできず、動物看護師の友人に助けを求めたこともありました。
「当時かかりつけだった動物病院に、毎月の簡易健診+爪切り、歯磨きのセットサービスがあって、先生方にいろいろ相談できたのがとても助かりました」
飼い主さんの生活は、ふたりを迎えてから大きく変わったといいます。
「すっきりシンプルに暮らしていた室内は猫グッズで溢れて、親妹弟などには『お洒落だったのにずいぶん趣味が変わった』と言われます(笑)」
気づけば、猫を通じて世界を見る目も変わっていました。
「猫オーナーになると『すべての猫がかわいい』になってしまいます。勿論、剛健と同じ茶トラ猫はとても可愛いですが、毛色が違っても、スタイルが違っても『世界中の猫さんが幸せで愛されてほしい』と心から思うようになりました」
その気持ちは、日々の暮らしの選び方にも現れています。
「猫がついてると洋服でもバッグでも買ってしまう症候群にもなっています」
甘えん坊になったハンサム猫兄弟、変わっていく毎日が愛おしい
剛くんと健ちゃんは、現在推定5歳を迎えました。それぞれに個性があり、見た目も性格も異なります。
「剛くんは、目がグリーン色、どちらかというとたぬきっぽい。よくよく見ると茶トラ模様がよりはっきりしています。健ちゃんは、ちょっとシュッとしてる毛がストレートで長く、目がオレンジ色。どちらかというと狐っぽいハンサムです」
性格も対照的で、健ちゃんは甘えたいときにまっすぐ気持ちを表現します。
「健ちゃんは自分が甘えたい時にマイペースで“俺を構え!”とねだり続けます。そこがかわいいんです」
一方の剛くんは、そっとタイミングを見計らって近づいてくるタイプです。
「剛くんはいつも健ちゃんが寝ている、または近くにいないときを選んで甘えに来ます。おやつでもちょっと譲るところがあって、お兄ちゃんだからなのかなーと感じています」
◇ ◇
お迎えから4年近く。今も来客には隠れてしまうものの、家ではずいぶんと甘え上手になったふたり。
「1年経過したあたりからふたりはとても甘えん坊になりました。3年目に“ふみふみ”しはじめたりと、大人猫でもどんどん甘えてくれるようになるのは嬉しいものです」
譲渡会で出会ったころと比べると、その変化は一目瞭然です。
「譲渡会では体格が良い雄猫で『大きい子だから大きめのケージを用意してください』と言われたり、会場ではふさふさの猫に見えました。でも、我が家に来たばかりのころの写真を見ると『ボロボロガリガリだなー』と思います」
今では体格も毛並みも見違えるほど健康的になりました。
「ふたりとも好き嫌いなく、フードもサプリメントもしっかり食べ、お風呂も鳴きますが暴れることなく入ってくれるし、毎日ブラッシングも、気持ちよさそうに受けてくれます」
「これからもハンサム猫兄弟でい続けてもらうよう、お世話を頑張りたいと思います!」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)